第51話 監禁
「それであなたの好みの女性というのはどんな人なんですか?」
「それは当然、西蓮寺さんのような人に決まっています」
「琴吹様は一人しかいません。そんな人、他にはいませんよ」
「それもそうか。じゃ、可愛い子で」
「具体的にお願いします。可愛いの基準が分かりません。顔ですか。性格ですか。身体ですか」
「えっと、俺の場合は身体かな。北条さんよりやや小さめの胸が希望です。顔は世間的に美少女と言える人がいいです。性格は特に決まりはないです」
俺はざっくりとした好みを伝えた。それに対して北条さんは難しい顔をする。
「そのような女性を三人用意するってことですか。簡単ではないですが、探すように努力します」
「はい。まぁ、俺は西蓮寺さんが目的なので無理をしなくていいですよ」
「そういう訳にはいきません。必ず見つけてきます」
話はまとまった。
北条さんが俺好みの女性を見つけてくるのが先か、俺が西蓮寺さんと楽しむのが先か。
西蓮寺さんとの約束は思わぬ方向へ進もうとしていた。
「じゃ、そういうことで」
「どこに行くんですか?」
「パーティーの間は目立ちたくないんだ。でもパーティー会場にはいるから」
「そうですか。時間を潰したいようであればいい場所を提供しましょうか?」
「いい場所?」
「こちらへ来て下さい」
俺は北条さんに案内されて家の中へ誘導される。
「こっちです」
秘密の部屋とも取れる地下へ続く階段が俺の前に現れた。
「ここは?」
「琴吹様のプライベート空間です。琴吹様のことを知りたいのなら素晴らしい場所だと思いますよ」
「へぇ、西蓮寺さんのプライベート空間か。それは気になる」
「どうぞ。ごゆっくりご堪能下さい」
俺が地下へ続く階段を降りた直後である。
北条さんは階段を降りようとしない。
「北条さん?」
「では、ごゆっくりご堪能下さい」
入り口はスライドゲートが閉じて俺は地下へ閉じ込められてしまう。
「ちょ! 北条さん」
北条さんは不敵な笑みを浮かべながら姿が見えなくなってしまった。
暗闇の空間に俺はまんまとやられてしまったようだ。
入り口が閉ざされたことにより、俺は奥へ進む以外に選択肢はなかった。
階段を降りた先には一つの扉があった。それを開けると扉の奥には寛ぐ家具や空調が効いた空間が広がっていた。
「ここが西蓮寺さんのプライベート空間?」
「いいえ。違います」
部屋の中央にあったモニターから北条さんが映し出された。
「そこは監禁部屋です。あなたの動きは拘束されました」
部屋の隅には監視カメラがあり、扉を閉めた途端、内側からは開かない構造になっていた。完全に俺は閉じ込められたと言える。
「俺をどうするつもりですか」
「そこから出たいのであればあなたの持つスマホを提供することです。そこに琴吹様の盗聴データがあるんでしょ?」
「なるほど。あくまでも俺に約束の撤回をさせようってことか。だけど、ただデータを渡すのであれば割に合わない。俺は意地でも渡さないぞ」
「だったら一生、そこから出られないだけです。それでもよろしくて?」
「例え出られなくなったとしても俺は絶対に西蓮寺さんとの約束を果たす。それだけだ」
「ふふ。その強がりはいつまで続くのか楽しみですね。ギブアップするときは遠慮なく申して下さい。すぐに解放しますから」
「誰がするか」
そこから北条さんとの通話は途切れてしまう。
監禁と言っても部屋の中は自由に動き回れる。
寝ようと思えばベッドもあるし、トイレや風呂も部屋の中に完備されている。
おまけに冷蔵庫もあり、飲み物やちょっとした食べ物も用意されているので監禁とは思えない設備になっている。
これなら長居する分には困らないだろう。
あとは我慢比べということか。
「はぁ、何で俺はこんな面倒なことに巻き込まれなくちゃならないんだ。ただ、西蓮寺さんと楽しみたいだけなのに」
「琴吹さんと楽しむなんて言語道断です。立場をわきまえなさい」
「ちっ。聞こえているのか。ここではプライバシーなんてないみたいだな」
「えぇ、その通りです」
いちいち返事をしてくるところを見れば律儀なメイドだ。
会話する相手も困らないと見ればキツイ監禁とは程遠いかもしれない。
退屈な時間がゆっくりと流れようとしていた。
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