第50話 平和策
「そうですか。私の暴力を受けても約束の撤回は絶対にしないと」
「はい。だから無駄に北条さんの拳を痛めることはオススメしません」
「本当にそうかしら?」
「え?」
北条さんは一気に俺との距離を詰めた。
ぐぐぐ、ドン!
気付いた時には既に腹部の急所に拳を叩き込まれていたのだ。
「ぐふぁ!」
強烈な威力に俺は思わず後方へ吹き飛んでいた。
ガレージの壁に俺の身体は打ち付けられた。
「ぐっ! いて、いてててて」
「どうですか? 今のは六割程度の力を使いましたが、それ以上の力を後、何十発もあなたに打ち込むことになります。それでもあなたは約束の撤回をしないと言うんですか?」
「へ! 軽いね。確かにこれ以上の力を何度も喰らえば苦しい。だが、それでも西蓮寺さんとの約束に対しては程遠い。約束の撤回をしない。だから暴力に任せるのは辞めておいた方がいいですよ」
「確かにあなたのその変態覚悟は並のものではない。その口を割らせるのは暴力では難しそうですね。ならどうするべきか……」
「そこで平和策を考えましょう。二つの選択肢があります」
「そういえばそんなことを言っていたわね。一応聞きましょうか。乗るか乗らないかは別として」
「ありがとうございます。一つ目は約束を撤回させようとすることを諦める。元々はそう言う話で進んでいたわけですし、現状維持ということで北条さんが諦める選択肢です」
「諦めるつもりはないです。はい。その選択肢はボツです」
「じゃ、二つ目の選択肢です。撤回するならそれと同等の条件を俺に提供して下さい」
「同等の条件?」
「西蓮寺さんとの約束は西蓮寺さんを奴隷プレイすることです。俺の思いのままに何をしてもいいという特権です。つまり、それと同等の価値があるものを俺に提供できるのであれば約束の撤回は考えます」
「なるほど。なら、お金を出します。あなたの言い値でいいです」
「おっと。お金で俺は約束の撤回はしませんよ。西蓮寺さんもお金で解決しようとしてきましたが、俺はそれを断りました。よってお金以外で提供できる同等の条件を出して下さい」
「そんなことを急に言われても何を提供すればいいか……」
「西蓮寺さんとの約束を決行する前までなら待ちますよ。まぁ、それと同等の条件なんて俺も思いつかないですけどね」
「一つだけこれと思えるものを今、思い付きました」と、北条さんは顔を真っ赤にしながら言う。
「何ですか。それは」
「……わ、私を好きにしていいです」
「好きに?」
「私の身体を好きにしていいです。エッチなことでも恥ずかしいことでも何でも構いません。それで琴吹様のプライドを守れるのであれば安いものです」
「なるほど。確かに魅力的な条件だが、それだとちょっと弱い」
「何が足りないと言うんですか。この胸も足もお尻も好きにしていいと言っているのですよ?」
「確かに本来であればそれ以上の条件はない。でも北条さんと西蓮寺さんでは価値がまるで違う。北条さんの身体は魅力的ではあるが、西蓮寺さんには負ける。よって同等と言う条件には当てはまらない」
「た、確かに琴吹様と比べたら違いはあると思いますけど、それでも私はプライドを捨てているんです。そこを考慮したら私でも匹敵する条件にはなるはずです」
「なら数が足りない。西蓮寺さんと同等になりたいのであれば俺好みの女性を三人以上提供しないと同等とは言えない。それが大きな違いだ」
「あなた、どこまでゲスいの」
「何とでも言ってください。西蓮寺さんと割に合う条件を持ってくるのであれば少なくともさっき言った条件ではないと俺は約束を撤回しません」
「三人。それを提供したらあなたは約束を撤回するんですか?」
「はい。それなら考えてもいいです」
「くっ。後、二人を用意しないと琴吹様のプライドをズタズタにされてしまう。それはあってはならない事態です」
「いえ。三人です」
「何を言っているんですか。私を入れて後二人用意すればいい話ですよね?」
「いいえ。三人です。残念ですが、俺は北条さんで遊びたくない」
「どういう意味ですか。私の身体に魅力がないと言うんですか?」
「いえ。魅力的です。ですが、さっきの暴力で気持ちが冷めてしまいました。楽しんでいる最中に暴力を受けたらと思うと集中できないので今回は条件の中に北条さんは入れてほしくないってだけです」
「あなた、どこまで贅沢なんですか」
「いいんですよ。条件に合うものを用意できなければ西蓮寺さんと楽しむだけですから」
「そ、それだけは絶対にダメです。何が何でも許されません」
「だったら頑張ってみて下さい。約束が決行される前に」
北条さんは苦い顔をしながら拳を強く握り込んだ。
無理な条件を出したのはあくまで俺の目的は西蓮寺さんだけにしかない。
出来れば北条さんは条件未達を俺は強く望んでいた。
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