第32話 家に誘う出すために
「佐伯さん。あなた、何を言っているの?」
甘栗さんは完全に見下すような口調で言い放つ。
「そのままの意味です。俺は甘栗さんの耳を弄り倒したい。ただそれだけです」
「私の耳は誰にも見せることは出来ない。例え秘密を知られた佐伯さん。あなたにも晒すことはない」
「俺は甘栗さんを滅茶苦茶にしたい。ただ、それだけなんです」
「あなた、よくそんなことを堂々と言えるわね。ちょっと引くんだけど」
「別に引かれても構いません。俺にその耳を貸して下さい」
「バカバカしい。あなたには付き合っていられないわ」
甘栗さんは嫌気をさして後ろを振り向く。
正面から言ってもダメか。
「甘栗さん。俺に耳掃除をさせて下さい!」
「耳掃除?」
「普段、耳掃除をしないんじゃないですか?」
「ど、どうしてそれを?」
「耳が敏感ということはつまり、まともに掃除はできないはずです。自分でも出来ないということは甘栗さんの耳は耳垢まみれってことに……」
「やめて! それ以上言わないで」
甘栗さんは耳を押さえた。
「甘栗さん。聴力悪いでしょ?」
「まぁ、よく聞き返すこともしばしばあるけど」
「それはつまり耳垢が溜まりに溜まって聞こえにくくなっているってことです。前、無理やり耳掃除をした時、凄い耳垢でしたよ」
「きゃー! お願い! それ以上言わないで。恥ずかしいから」
耳が敏感なあまり不便なこともあるようだ。
それを利用すれば押し切れる。そう考えた。
「俺に甘栗さんの耳を掃除させて下さい」
「別にそれくらい自分でやるし」
「出来るんですか? 自分で耳掃除」
「そ、それは……」
「出来ませんよね? ならその役目を俺にさせて下さい。絶対に後悔させませんから」
「ほ、本当に任せていいの?」
「勿論です」
「じゃ、お願いしようかな」
「ありがとうございます。なら、今日俺の家に来てもらえますか?」
「家? どうして耳掃除くらいで家に行かなきゃならないのよ」
「いいんですか。コンプレックスの耳をその辺で晒しても」
「それは困る」
「なら家に来て下さい」
「変なことしないでしょうね?」
「どんなことですか?」
「まぁ、いいわ。行くわよ。行ってあげようじゃない」
こうして甘栗さんは俺の家に行くことを承諾する。
連れ込んでしまえば後は流れ作業になるだろと鷹を括る。
そして。甘栗さんは俺の部屋へ。
「甘栗さん横になって下さい。早速、耳掃除始めましょう」
「ゆっくりね?」
「分かっています」
俺は綿棒を甘栗さんの耳に突っ込む。
「っっっっっっっっっっん!」
早速、甘栗さんは身体をくねらせる。
他人に耳掃除をする機会はあまりないが、ここまでやりがいのある相手は他にいない。
「ひゃっ! あ、気持ちいい」
甘栗さんは真面目な印象が一気に崩壊する瞬間だ。
女の顔をする。
「フゥ。片側は終わりました。反対を向いて下さい」
「うん」
同じ流れで耳掃除をする。変な声と変な動きはどうしても止められないらしい。
「はい。終わりました」
「ありがとう。凄くよかったわ。じゃ、私はこの辺で失礼するわ」
立ち上がろうとしたその時だった。
俺は甘栗さんの耳に息を吹きかけた。
「フゥ」
「ちょ! どういうつもり? 力が抜ける……」
「甘栗さん。耳掃除は終わりましたが、まだ仕上げが残っています」
「仕上げ?」
「大人しくして下さい。これが最も重要な作業ですので」
「な、何をするつもり?」
「すぐに分かります」
俺は甘栗さんの耳に舌を突き出した。
レロッと舐めたことを合図に俺のテクを甘栗さんに披露した。
「こ、これは……」
「甘栗さん。俺の中で溺れて下さい」
「ひゃっ! あ! ダメ! んんんんんんんん」
俺は甘栗さんの耳を舐めた。文字通りに。
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