第31話 テクを身に付けろ


「クチャ……。レロッ! んんんん」


「うーん」と俺は悩んでいた。


「佐伯さん? どうしました? もしかして気持ちよくなかったですか?」


 瑞穂みずほちゃんは耳舐めを中断して不安になりながら聞く。


「いや、気持ちいいよ。ごめん。ちょっと考え事をしていて」


「へぇ。私の舌テクを受けながら考え事をする余裕があるってことですか。私も舐められたものですね。舐めているんですけど」


 ことわざ的な意味と実際の意味がゴチャ混ぜになっていた。


「ごめん。割り切った関係に感情を持ち込むのは違うよね。舐められることに集中するからもう一度お願いします」


「いや、気になるので話して下さいよ。それに誰かに言うだけでスッキリすることもありますし、私のような割り切った相手なら言いやすいと思いますよ」


「瑞穂ちゃん。ありがとう。実は気になる相手が居てその子とどうやればヤレるかって思って」


「ゲスみたいな悩みですね。好きと言うよりその子とただヤりたいだけってことですよね?」


「うん。パッと見てそんなに可愛くないけど、それっぽい空気になったら可愛く見えちゃって」


「どんな子なんですか。その人」


 俺は甘栗朱音について喋った。


「なるほど。耳が弱いんですか。それは興味深いですね」


「瑞穂ちゃんって百合に興味あったりする?」


「百合? 女の子同士の行為って意味ですよね?」


「うん。それが好きな知り合いも居て一応興味あるか聞いてくれって頼まれちゃって」


「正直、経験がないので分からないですね。今は彼氏を大事にしたいと思うのでそう言うのは遠慮しておきます。ただ、その耳が弱い甘栗って人には興味がありますね。私のテクでどんな反応をするのかって」


「じゃ、引き合わせたりするのは……」


「興味があるだけで会うのはちょっと。ただ、私のテクをマスターすればその子は完全に落ちると思うますよ」


「本当?」


「これを受けたらどんな人もイチコロ。私との練習で本番に備えて下さい」


「瑞穂ちゃん。指導をお願いします」


「じゃ、いくよ」


 瑞穂ちゃんの舌テクに俺は溺れた。

 気持ち良すぎて失神寸前までいったのは初めてのことだ。中学生ながらそのテクは反則級だ。

 俺はそのテクを自分のものにすべく、今度は逆に瑞穂ちゃんを溺れさせた。


「……アハッ! 逆に私をイかせるなんて佐伯さんもやりますね。見て下さい。パンツがこんなに濡れちゃいました」


 瑞穂ちゃんのスカートから溢れる汁が滴り落ちていた。

エロい。思わず俺は瑞穂ちゃんに性的なものをぶつけそうになるが、グッと堪えた。


「今日はこの辺にしておきましょう。今のテクを甘栗さんにぶつければ思い通りになると思いますよ」


「うん。使わせてもらうよ。ありがとう」


「いえ。それではまた」


 瑞穂ちゃんとこの日の練習を終えた。

 自分のテクに磨きが掛かり、可能性が広がるが俺はあることに気が付く。


「このテクをぶつければ間違いなくイかせられるけど、ぶつける前段階はどうすればいいんだ?」


 甘栗さんは真面目で警戒心が強い。簡単に家には来てくれないだろう。

 家じゃなくても個室に誘い出すのは至難の技だ。

 正面から頼んでみるか。いや、そんなことを言ったら逃げられる。


「……詰んだ」


 俺のテクは披露されることがないまま終わってしまうのだろうか。

 こんな勿体無いことはない。それでも俺は諦めきれなかった。

 ヤるのは簡単なのに誘い出すまでが難しいってなんか矛盾しているような気がする。

 何かいい方法はないか。

 翌日、俺は考えが特にまとまらないまま甘栗さんに接触を試みた。




「甘栗さん」


 朝の登校時、俺は待ちぶせという形で声を掛けていた。


「佐伯さん。朝から何か用ですか?」


「甘栗さん。好きです」


「はい?」


「俺は甘栗さんの……」


 俺は甘栗さんに手を引かれて校庭の裏に連れていかれる。


「ちょっと! どういうつもり? あんな人前で何、口走っているのよ」


「甘栗さん! 俺! 言いたいことがあって。その……」


「ちょ、何を言うつもり? ダメだってば!」


「俺は甘栗さんの……」


「だからダメだってば」


「耳が好きなんです!」


「………………はい??」


 キョトンと甘栗さんは首を傾げた。


「俺は甘栗さんの耳が好きなんです。その耳を弄らせてもらえないでしょうか?」


 馬鹿げた告白に自分でも何を言っているか分からなかった。

 本当はその先にある行為がちらついているだけと言うのは自分の中で留めた。

 だが、甘栗さんの顔はずっと固いままだった。これは完全にやらかしてしまったか。

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