第28話 侑李の好きな人
「はー極楽、極楽。良い気持ちだ。最高だな」
「何、風呂みたいなこと言っているのよ。てか、あんた何様のつもり?」
侑李は俺の息子を舐めながら不満の声を漏らす。
「あまりにも気持ちいいからつい」
「なんか偉そうだからもうおしまい」
「待ってよ。ここまでしたなら……いいだろ?」
「よくないわよ。言ったでしょ。今日は生理だから無理だって。あんたのベッド血の海に染めるわよ?」
「それは困る。ならもう少しだけさっきのやつを」
「もう口が疲れちゃった。今日は何を言われようとしないから」
「ケチ」
「大体、なんで私があんたのそれを舐めなきゃいけないのよ」
「これも将来の彼氏が喜ぶための練習だよ。それにおあいこだよ。最近、ブラがきつくなってきたって喜んでいたじゃないか」
「そ、それでしょ。確かにちょっと大きくなった気はするけど」
大きくなったとしてもそれは微々たるものだが、侑李としては喜ばしいことなのかもしれない。
「ところで侑李」
「な、何よ」
「彼氏を作るつもりは分かるんだけど、そもそも好きな人っているの?」
「はぁ? いるけど?」
「作らないの? てか、誰?」
「……あんたには関係ないでしょ」
「ある。だって俺は侑李の練習相手だから!」
「そこは幼馴染って言えよ。何よ、練習相手って。聞こえが悪いわ」
「どっちでもいいよ。それで好きな人って誰?」
「どうしても言わなきゃダメ?」
「うん。ダメ」
そう言うと侑李は思い悩む顔をする。そんなに言いにくい相手なのか。
今まで関わりが持てないことを考えると俺のように高望みしている相手なのか。
練習でどうにかなる相手ではない?
「……私の好きな人はお兄ちゃん」
ボソッと侑李は照れ臭そうに言った。
「お兄ちゃんってお前、兄貴いたっけ?」
「そういう意味のお兄ちゃんじゃなくて従兄弟のお兄ちゃんだよ。ちょっとややこしいんだけど、私のお母さんの妹の旦那さんのお兄さんなんだけど、家族ぐるみで会った時にいいなって」
「確かに聞いていてちょっと頭が混乱してきた。お母さんの妹の旦那さんの兄ってことはその人いくつだ?」
「四十歳だったかな?」
「四十歳っておっさんじゃん。お前、おじさん趣味だったのか?」
「年齢はおじさんかもしれないけど、見た目は若々しくてハンサムな人だよ。優しいし、よくしてくれるし凄く人だもん」
「とは言ってもお前は高校生だろ。二十以上離れた人を好きになるのは無理があるぞ」
「でも最近では芸能人で四十五歳差の結婚って聞くし」
「それはレアケースだ。一般人ではしないよ」
「そうかな?」
「考えてみろ。結婚はともかく付き合ったとしても二十も離れていたら全く話は合わないぞ。付き合うと言うよりそれは介護みたいになってしまう。その場が良くても最後は絶対に苦労する。それを分かって好きって言っているのか?」
「でも高嗣との練習を披露すればずっと仲良くできるでしょ?」
「絶対にやめてくれ。四十相手じゃそもそも立つものも立たない! それにお前、未成年だろ。付き合うイコール犯罪だ」
「じゃ、私が二十になってからなら希望ある?」
「ない。その恋は今日限りで忘れろ」
「そんなに? でも、一度ついた火はなかなか消えないし……」
落ち込む侑李を他所に俺はスマホを取り出して通話をする。
「ちょ、誰に電話をしているの?」
「……あ、もしもし。百合先輩。今、大丈夫? 実はお願いがあって。うん。滅茶滅茶にしていいから。あ、今から来られる? 分かった。それまで足止めするからよろしくお願いします。はい。じゃ、待っていますので」
用件だけ伝えて俺は通話を切った。相手も用件だけで察してくれた。
「…………え?」
「百合先輩。今から来るって。お前のその恋を叩き直してやるって」
「は? 何を言っているの? 叩き直す?」
三十分後、百合先輩は俺の家に来た。
「侑李ちゃん! 私が心の中まで滅茶苦茶にしてあげるね。その恋心を奪ってあげる」
「え? ちょ、何をするんですか。ひゃ!」
侑李は百合先輩に押し倒された。
「侑李ちゃん。好き!」
「わ、私も好きです……」
俺の部屋に来て十秒と言う最短記録で百合行為が始まった。
激しい行為の結果、侑李は四十歳のお兄ちゃんを忘れることができた。
好きな人といえば百合先輩であり、しばらく男の好きな人は時間が掛かりそうだ。
「この光景、見ていて飽きないな」
イチャイチャする侑李と百合先輩の行為をおかずにしながら俺は部屋の片隅でシコシコする。
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