第20話 待った
「ちょっと待った!」
待ったをかけたのは侑李ではない。百合先輩だ。
「百合先輩。何で止めるんだ。ここまで味方してくれて手のひらを返そうって言うのか?」
「別に手のひらを返そうってわけじゃないよ。佐伯くん。あなた、生でしようとしている?」
「だって生の方が気持ちいいし」
「生でヤるって言うなら私は全力で止めるよ」
「生の何がいけないんだ」
「はぁ。これだから男は。欲望丸出しね」
「な、何だよ。言いたいことがあるならハッキリ言って下さいよ」
「その時の感情に任せるのは簡単だけど、その先のリスクを考えられないようでは例え練習だとしても認めるわけにはいかないよ」
「リスクって妊娠のことだろ? 大丈夫だよ。外に出せばいいし、そんな滅多に出来るものじゃない」
「言うのは簡単だけど、絶対なんてない。もし出来たら責任取れる?」
「そ、それは……」
「出来るわけないよね。私たちはまだ高校生だもん。その辺をよく考えて練習することね」
百合先輩の発言は最もだ。もし、百合先輩がいなければそのまま行為に及んでいたかもしれない。
このやりとりでさっきまで元気だった俺の息子は萎えてしまう。
「どうしてもヤりたいならゴム使いなさい」
「……持っていない」
「はい?」
「俺、ゴムなんて持っていないし」
「あなた、それでよくヤろうとしていたわね。信じられない」
百合先輩は呆れながら自分の財布を取り出す。
「ホラ! これ、使いなさい」
「これってまさかゴムですか?」
「たまたまあった予備品よ。雰囲気的にも仕切り直しだと気まずいでしょ」
「あ、ありがとうございます。百合先輩もこれを使う機会あるんですか?」
「な、何を言っているの。早くそれ使いなさいよ。全く」
「あ、あの、百合先輩」
「何よ。お礼ならもういいって」
「あの、これどうやって付けるんですか」
「は、はい?」
「俺、付けたことないんですよね。ゴムって」
「それ、女の私に聞く?」
「はい。すみません」
侑李との性行為は一時中断となり、○ンドームの付け方指導が始まる。
「あの、私もよくわからないのでお願い出来ますか。彩葉さん」
「私も経験があるとは言えないけど、最低限だけだよ」
百合先輩は財布からもう一つの○ンドームを取り出した。
「百合先輩。それ、何個あるんですか」
「これが最後の一個よ。練習用として使わせてあげる」
「ありがとうございます。それで練習ってどうやってやるんですか?」
「これを使います」
百合先輩は男性器そっくりの玩具を取り出した。
出た。例の生々しいやつだ。
確かに練習としてはもってこいの代物だろう。
「ちなみにゴムは使い捨てだから失敗は許されないので注意して下さい。特に裏表は間違えやすいから使う前に確認してね」
「「は、はい」」
袋を破いて中身を取り出す。男性器の玩具を本物に見立てて百合先輩はスルリとゴムを付ける。あまりにも簡単に付けてしまうのでよく分からなかった。
「はい。こんな感じ。ちなみにちゃんと固い状態じゃないと付けにくいから女性が立ててあげるのも一つの手かも。それと濡れていないとうまく根元まで入らない時があるからローションなんかを塗るとやりやすくなるよ。無いときは女性の口で整えてあげれば奥まで入ると思うからパートナーの協力は大事。自分で付ける場合はそれらを踏まえて自力でやるしかないから注意すること。後、奥まで入っていないと行為の途中で抜けちゃう場合があるから入れる前に確認することが大事ね。付けた後なんだけど、ゴムの摩擦が反れて女性側に負担をかけるかもしれないからローションか女性の口でよく濡らすことがコツだよ。ここまでで何か質問はある?」
ペラペラと百合先輩は○ンドームの付け方について語る。
「ないですけど。気になることが」
「はい。佐伯くん。気になることって?」
「百合先輩。実は男好きだったりします?」
「私は女の子が好きって言っているでしょ。私のことはいいからゴムについての質問をしなさい」
「いや、特にないです」
「そう。じゃ、貴重な最後の一つを使ってみて。出来れば侑李ちゃんと協力するといいかな。侑李ちゃん。出来る?」
「……うーん。ちょっと不安かもです」
「私が間違っていたら教えてあげるから安心してやってみて」
「……じゃ、やってみます」
やる気になっていた俺の息子はすっかり萎えていた。
また一から仕切り直しになってしまい、俺は先に進みたい気持ちが出ていた。
うーん。いつになったら俺は出来るのだろう。
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★★★を押してくれるあなたが好きです。
by彩葉
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