第3話『新しい街の見慣れた景色』
予定を済ませるため区役所やホームセンターへ出向く。
必要な買い物を済ませアパートへ帰宅したころには夕方だった。
朝が多かったので昼を抜いた、帰宅と同時に腹の虫がなく。
「腹減ったな」
朝見かけた肉屋さんのメンチとコロッケを買いに行ってみようと思い立つ。
幸い昨日の夜に買ったビールが冷蔵庫で冷やされている。
財布を持って肉屋さんに向かう、朝とは逆方向に歩き、通りにでる。すると程なくして朝の喫茶店が見えてくる。
一度行っただけのお店だけど、知っている場所がある、それだけで新しい街が自分の街に変わった気分になった。
さらに数分、歩いていると肉屋さんが見えてきた、店の前には主婦らしきご婦人が二人、一人は小学生ほどの子供を連れていた。
「合挽を200gと牛の細切れを200g下さい。」
「あいよ!」
威勢のいいやり取りが聞こえてくる。
「ママ!あたしつくね食べたい!」
子供が夕飯のメニューに口を挟む、きっと父親や、他の兄弟達からもリクエストはあるのだろう。
悩んだ末につくねを三本、購入して店を後にした。
「すいません、メンチとコロッケを一つづつお願いします。」
「あいよ!お兄さん、見ない顔だね」
「昨日、この街に引っ越してきました。」
「そりゃあいい!うちのメンチとコロッケは飛び切りうまいよ!ぜひまた来てくれな」
「はい、また来ます。」
「おまちどうさま、コロッケとメンチで210円になります、おまけでひとつ、から揚げ入れといたから食ってくれな!うちの娘の試作品なんだよ、良かったら次ぎ来た時に感想聞かせてくれ!」
「ありがとうございます、ありがたく頂きます。ではまた。」
少しほっこりさせてくれた店主に感謝しながら家路を急ぐ。
あつあつの揚げ物の匂いが早く早くと腹の虫を鳴かせる。
アパートに入り、電気をつける。
誰もいない部屋にただいまは言わない。
まだ無いテーブルの代わりに、段ボールの上に購入品を置く、ソースが無いことに気付いたが、肉屋のコロッケとメンチは何もつけなくても間違いなく旨いハズだ。
冷蔵庫からビールを取っり「いただきます。」
ただいまは言わないけど、いただきますは言うのか、と心の中で自分にツッコミをいれ、コロッケを一口かじる。
「うまい!」
さらにビールを流し込む。お世辞抜きで本当にうまい、今まで食べてきたコロッケの中でも一番うまいと思う。
メンチも頂く、これもうまい、さながら某サラリーマンになった気分で一人飯を楽しむ。
「これが試作品のから揚げか」
大ぶりなから揚げが串に三本刺さっている。サービスと言われたが、これだと一本150~200円くらいするのではないか。なんだか得したような、申し訳ないような気分で口に運ぶ。
「え・・・旨い。」
これまた今まで散々食べてきたはずのから揚げが、まるで始めた食べたもののように旨い。
「次からはこのから揚げともう一品、もしくはから揚げ二つでもいいな。」
僕は夜の定番を見つけた。
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