第4話 闇側に身を置く自分の使命

「ジャン様!上からまた一人落ちてきました!」


私の部下が何回この報告をしに来ただろう。


私は、闇と光、双方見届ける者であり、闇との境目に、つまり、暗黒の世界よりは手前で落ちてくる者を捉え、牢に閉じ込めている。


落ちてきて、我々に捕まった者は、このまま暗黒の世界へ送るのか、はたまた、自力で帰るかを見極めるとも言えよう。


少し前から、そろそろ私の元に落ちてくる事は容易に知れていた。


部下にも知らせておき、捕まえるよう、指示を出していたのだ。


牢に部下と共に行くと、そこには、気を失い横たわっている女性が。


そう、何を隠そう私の妹だ。


もう、何回落ちてきただろうか。きりがない。。。


私はいつものように、自室へと妹を抱きかかえ連れて行き、寝かせた。


「ジャン様!暗黒界からの使者が来られております。」


部下からの知らせを受け、私は彼らに会わねばならない。


応接間にて、彼らは待ち構えていた。


「ジャン殿。またもや、あの娘がこちらに落ちてきていると聞きましてな。私共が連れに参りましたのだ。」


この者達のこのセリフ、何度聞いた事か。。


完全に闇に捕らわれてもいない娘を「よこせ!」と言う事である。


これは、娘に限らず彼らは落ちてきた者を自分達に「よこせ!」と言うものなのである。


彼らは、自ら自分達の元にやってきた者は勿論、こうやってまだ、未完全な者ですら、欲しがるのだ。


その目的は、ただ1つ。自分達が自由に使える駒にしたいからだと。


彼らからみて、優秀な人材であれば、世界的な政治的な中枢に送り込まれたり、または、魔王の子として転生させられ、目的の元、手となり足となり使われるのである。


ただ、妹のように光を使命とする者達が落ちてくる事は多々ある事。人に転生中に闇側からの罠にはまり、闇側に傾き、落ちてきたり。


転生せずとも、霊界から落ちてくる場合も少なくない。


彼らの罠に引っかかる時、必ずそこに使われる物質がある。


それが「金銭」である。


現金だろうが、仮想なものであろうが、代わりになるものであろうが。


彼ら、暗黒の世界にいる闇の勢力者は、転生している人々とこの金銭の関係性に注目した事がきっかけとなっている。


初めから、人に当てがろうと金銭を創り上げたのは恐らくは闇側の者達ではない。


光とし、正しく使い、精神の成長を促すアイテムとして始められた事ではないかと考えられる。


しかし、頭の良い彼らは、この金銭と人々との関係性に注目し、逆手にとり、使ってきたのだ。


何かにつけて、必ずついて回る物を彼らが見逃すはずも無く。


宗教や、信仰など聖者とされる者でさえ、この金銭には抗えない。


争いを引き起こさせる事も、つまりは身内の争いなどではなく、国を巻き込んでの争い等、全てこの背後には、彼らが用意したシナリオがあり、そこに使われているのが金銭なのだ。


この金銭と人の心の関係性に付いては、次回に詳しく話してみたいと思う。


さて、我が妹を「よこせ!」と言う彼らを引き上げさせるにあたり、如何にするか。。。毎回頭が痛い。


そこへ、いつもの助け舟がやって来る。


そう、闇側に君臨していた一神教の神である。彼とは、なぜか馬が合うのかわからないが、ちょくちょく、話をする仲だった。


この神のおかげで、暗黒の使者は引き上げる事に。


「毎回、ご苦労な事だな。」


そう、私に彼は言う。


全くだ。。。なぜ、光でいようとはしないのか?努力が足りないからなのか?はたまた、未熟者だからなのか。。。


私の弟である、シリウスは光側にいる。私は彼を羨ましいと思った事は一度もない。普通なら、光側に居たいと、シリウスに対して羨ましいと思うのかもしれない。


しかし、光だけ見ていても、解決しない事も沢山ある事を私は知っている。


闇を知り、光を知る。


父は知っているのだろうか。。。


もしかしたら、それらを知るために我々が存在するのかもしれない。

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