第30話 メタモルフォーゼ
「ダンジョンの主が居る部屋だな」
「そうだね」
「ふぁぁ~。眠いのじゃ」
ポヨンッ…。
楓たちは、ダンジョンの主が居る部屋の前まで来ていた。
道中の魔物は、楓と有咲がほとんど倒してしまった。
もちろんマスケット銃は、使わずにだ。
そのため、ソフィアとレイナは戦いには参加せず、眠そうにしていた。
「ほら、ソフィア。扉開けるから、しっかり起きて」
「そうだよ。レイナさんも起きてよ」
「むにゃ~なのじゃ」
ポヨンッ…。
「はいはい。分かったから。というか、まだ2か所目だぞ?残り8か所もあるんだから」
「気が遠くなるね」
「ふむ。では、さっさと終わらせるのじゃ」
「お前も働け!」
「もちろんレイナさんもよろしくね」
「わ、分かったのじゃ」
ポヨンッ…。
楓と有咲は、ダンジョンの主が居る部屋の扉を開ける。
扉を開けた先には、広い部屋の中心に足場があり、その周囲は水に囲まれていた。
『ガァァァァァ!!』
「今回のボスは、リヴァイアサンか」
「海に棲む魔物だよね」
「ちょっと厄介かもしれぬのう」
ポヨンッ…。
ダンジョンの主は、リヴァイアサン。
海蛇のような姿をした魔物だった。
「ちょっと今回のボスは手強そうだな」
「そうだね」
「困ったものじゃな」
ポヨンッ…。
「さてさて、さっさと終わらせるぞ」
「うん!!」
「じゃな」
ポヨンッ!!
楓と有咲は、銃を構え、ソフィアは刀を抜く。
「じゃあ動きはいつも通りだ。良いな?」
「もちろん!!」
「任せるのじゃ!」
ポヨンッ!!
3人と1匹は、散開しリヴァイアサンに捉えられないように走り続ける。
「ヘイトを取ろうじゃないか…」
楓は、立ち止まり引き金を引く。
バンッ!!
赤い弾道がリヴァイアサンに目掛け突き進む。
『ガァァァァァ!!』
「こっち見たな」
リヴァイアサンの瞳は、楓を捉えていた。
『ガァァ!!』
リヴァイアサンは、口を大きく開く。
「これは危なそうだな…」
『ガァ!!』
リヴァイアサンの口から、ウォータージェットような水魔法が噴出された。
「ちっ!!」
楓は間一髪避け、攻撃されたところを見ると、地面が切断されていた。
「怖っ!!」
「楓!!」
「楓殿!!」
「こっちは大丈夫だ!!」
楓の心配をする有咲とソフィアは、リヴァイアサンに向け、攻撃を始める。
「こっちだよー」
「こっちじゃー」
有咲とソフィアは、楓から注意を引く。
『ガァァ!!』
リヴァイアサンは、有咲に狙いを定める。
「こっち向いちゃうんだ…」
「妾の方がガラ空きじゃ」
スパッ!!
ソフィアは、リヴァイアサンの首元を攻撃する。
「浅かったようじゃな」
『ガァァァァァ!!』
「うるさいのぅ」
「そうだね」
「2人は大丈夫か!?」
「こっちは大丈夫だよ!」
「大丈夫なのじゃ」
「それなら良かった」
『ガァァァ!!』
リヴァイアサンは、再びウォータージェットのようなものを口から噴出し、攻撃してくる。
「あんまり戦闘を長引かせてもな…」
「そうだね」
「うむ」
「仕方ないからやるぞ」
「分かった」
「了解なのじゃ」
「レイナ!いつものを頼む!!」
ポヨンッ!!
3人は、再び散開する。
それと同時に、レイナが3人の幻術を生み出す。
「こっちだよー!!」
「こっちなのじゃ!!」
ズドンッ!!
ザシュ!!
有咲とソフィアは、レイナの幻術に紛れ、リヴァイアサンにダメージを与える。
『グァァァァ!!』
「きゃ!!」
「おっとなのじゃ」
有咲とソフィアに目掛けて、リヴァイアサンの水魔法が飛んでくる。
「隙ありだ」
楓は、マスケット銃をリヴァイアサンに向けていた。
このマスケット銃は、魔法のビームが出る。
しかし、引き金を引いてから射出まですこし隙が出来てしまうため、陽動を有咲とスフィアにしてもらう必要があったのだ。
「じゃあな」
ドゥシューン!!
マスケット銃から放たれた虹色の光線は、リヴァイアサンに当たる。
『ガァ…』
ビームが当たったリヴァイアサンには、まだ息があり、楓を食らおうとしていた。
しかし、そうはならなかった。
ドンッ!!
レイナの雷魔法がリヴァイアサンを貫いた。
「…レイナありがとう」
「…そうだね」
「…じゃな」
ポヨンッ!!
リヴァイアサンの身体は、倒れた後消滅した。
「あっ宝箱」
「これを開けると楓の仮説が当たっているか分かるんだよね」
「そうじゃったな」
ポヨンッ…。
「じゃあ開けるぞ」
「うん」
「うむ」
ポヨンッ…。
リヴァイアサンの消滅後、現れた宝箱を開ける。
「…これって」
「ティアラ…?」
「誰がつけるのじゃ?」
「さぁ…」
「誰だろうね」
「ふむ…」
宝箱の中には、ティアラが入っていた。
楓の仮説だと、自分達に必要なものが宝箱に入っているはずだった。
だが、用途が分からないティアラが入っていて困惑する3人だった。
「俺がつけてもどうにかなる様子は無いな」
「じゃあ私?」
「妾なのかもしれぬぞ」
そうして、3人は、ティアラを頭につけるが何も変化が無いように見えた。
「これは予想が外れたか…?」
「かもしれないね」
「ほれ、レイナ。お主もつけてみるがよい」
仮説が外れたと思う楓と有咲の横で、ソフィアはレイナに手に入れたティアラをつけてあげていた。
「の、のう。お主ら…」
「ん?」
「どうかしたのソフィアさん」
「れ、レイナの様子が変なのじゃ」
「「変?」」
楓と有咲は、レイナの方を見る。
すると、レイナの様子が確かに変だった。
「「いや、何か大きくなってない!?」」
レイナがティアラをつけた瞬間、徐々に大きくなってきた。
形から大きさまで…。
「お、おい…」
「な、何が起きてるの…」
「れ、レイナ…?」
レイナの変化は徐々に、人の形になって来た。
『ン…ん…んぅ」
「「「はぁぁぁぁ(なのじゃ)!!」」」
「ソフィア様…?」
レイナは完全に人間と同じ見た目をしていた。
「い、いやお前…!!」
「楓は見ちゃ駄目!!」
「お、お主はレイナなのじゃな…?」
「はい?そうですけど…」
さっきまでスライムだったレイナは、一糸纏わぬ人間の姿となっていた。
見た目は、12、3歳くらいで、青い髪と青い瞳をした女の子だった。
「レ、レイナ…。俺たちの言葉は分かるのか?」
恐る恐る楓は、レイナに質問をする。
「何を言っておられるのか分からないですけど、楓殿の言葉は分かりますよ」
「そ、そうなんだ…」
「レイナさん」
「有咲殿?」
「あなたはレイナさんで本当に良いんだよね?」
「はい、そうですよ」
「そ、そっか」
「じゃあ妾からも質問するが、お主の身体の変化はお主が望んだことなのじゃな?」
「はい。ソフィア様の言う通りです」
「ってことは…」
「楓の仮説は合ってたってことだよね…?」
「ふむ。どうやらそのようじゃな」
「ま、まあとりあえず今は、レイナの服をどうにかしないとだな。さしより、俺のジャケットで良いか」
「楓殿、ありがとうございます」
楓は、来ていたジャケットをレイナに渡す。
「ねぇ楓」
「なんだ」
「逆にエロいんですけど」
「おい」
「だって、裸だよ!?その上に、ライダースジャケットって訳分かんないじゃん!!」
「じゃあ有咲ので…」
「サイズを小さくしたら猶更エロくなるでしょ!!」
「じゃあ口にしない!!」
「だって!!」
「有咲殿。私は大丈夫ですので…」
「うっ、大丈夫なら良いけど」
「お主ら、もうこのダンジョンに用は無いのじゃ。外に出るぞい」
こうして4人?は、ダンジョンを脱出するのであった。
場所は変わり、キャンピングカーに戻った4人は、ご飯を食べながら今後について話し合っていた。
「それで、どうする」
「どうしよっか」
「ふむ、そうじゃな」
「なんか味覚があるって良いですね」
レイナは、楓と有咲が作った食事を堪能していた。
「楓殿と有咲殿のご飯は美味しいです。ありがとうございます」
「き、気にするな。好きで作ってるから」
「う、うん。そうだよ」
「そうじゃぞ。でも、作ってもらった事への感謝は忘れるでは無いぞ」
「はいです!!」
楓と有咲が見ている光景は、まさに親子のようなやり取りだった。
「あと、服もありがとうございます。ソフィア様とお揃いのものをありがとうございます」
「まあ、サイズ感の問題だったし」
「せっかくならね」
「妾からも感謝なのじゃ」
ソフィアとレイナから感謝される楓と有咲だった。
「それで、ダンジョンの宝箱の事だが…」
「うん。楓の仮説は合ってるのかもしれないね」
「そのようじゃな」
「私も皆さんと同じようにお話してみたいとは思ってましたが、まさかこのような形で叶うとは思っていませんでした」
「そうか」
「うん…」
「妾は、話せておったのじゃが、2人とも話せるのは良いのかもしれぬのう」
「はい」
「ダンジョンを攻略するにつれて確信に近づいていくかもしれないな」
「そうだね」
「うむ」
「ですね」
「もし、この仮説が本当だったら、俺と有咲、それにレイナはソフィアを守らなければならないっていうのは分かるな?」
「うん」
「はい」
「そういう事じゃな…」
楓の仮説だと、ダンジョンのボスを倒した者の必要なものが宝箱に入っている。
つまり、悪用も可能だという事だ。
ソフィアにそんな目を合わせないと、楓、有咲、レイナは守ると決めた。
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