第28話 マスケット銃

「はぁはぁ」

「疲れたね…」

「お主ら怪我は無いのかの?」

「俺は無傷だ。有咲は?」

「私も無傷だよ」

「レイナも無事そうじゃな」

ポヨンッ…


ここのダンジョンの主であるグリムリーパーとの激闘を終え、ひとまずの休息。


「あぁ~。動くのキツイなぁ」

「体力不足よねぇ」

「まあ無事なら良いのじゃが」

ポヨンッ…

「ここには、トロールの時みたいに宝箱はあったりするのか?」

「んー。あっ!あれ!!」


有咲が指さす方向には、グリムリーパーが居た場所を指していた。

そこには宝箱が出現していた。


「宝箱じゃな」

「ダンジョンの主を倒したら出てくるのか?」

「そうかもしれないね」

「妾もその辺は分からぬが、多分そうなのじゃろう」

ポヨンッ…。


3人と1匹は、宝箱に近づく。


「じゃあ開けるか」

「うん」

「うむ」

ポヨンッ…。


楓は、宝箱の蓋を開ける。

箱の中には…。


「銃…?」

「みたいだね」

「お主らが持っているものとは違うようじゃな」


宝箱の中には、銀色のマスケット銃が一丁だけ入っていた。


「マスケット銃なんて初めて見たぞ」

「私も」

「妾もじゃ」

「何故にマスケット銃なんだ?」

「分かんない」

「ふむ…」

「どうしたんだ?ソフィア」


ソフィアは銃を見つめ何かを考える。


「妾は、銃とやらはお主らでしか見た事がない。つまりじゃな、この宝箱の中は、お主ら専用という可能性がないかの?」

「「俺(私)たち専用???」」

「うむ。この世界で銃を見た事が無いというのもあるのじゃが…。弾とかはどうなっておるのじゃ?」

「待って、マスケット銃ってどういう仕組みなんだ…?」

「本来だったら、一発ずつ直接、弾を筒に入れるんじゃなかったっけ?」

「そうなのか?」

「多分」


楓と有咲は、マスケット銃の銃口をのぞき込む。


「「分からん…」」


のぞき込んだところで分からない2人だった。


「魔法を直接撃つのかもしれぬのう」

「うーん」

「実感が湧かないよね」

「どこかで試し打ちをしてみればよいのではあらぬか?」

「やってみるか」

「そうだね」


楓は、マスケット銃を誰もいない壁の方へ向ける。


「えいっ」


ドゥシューン!!


「「「…」」」


マスケット銃から放たれたのはビームでした。


「「「えぇぇぇ!!!」」」

「こわっ!!」

「これ魔法なの!?」

「巨大アンドロイドの時とは違ってコンパクトじゃな」

「いや、そこじゃねぇよ!!」

「そうだよソフィアさん!!」

「うむ、確かに変わった魔法じゃが、似たようなものを放ったアンドロイドと戦ったじゃろ」

「「そうだけど!!」」

「違うじゃん!!ただでさえ、銃がこの世界にあんまりあってないのにビームって!!」

「そうだよ!!ロケットランチャー撃ってた私が言うのもあれだけど、ビームは私たちの世界にはなかったよ!!」

「ふむ、そうなのじゃな」

「「そうだよ!!」」


ビームが撃てるマスケット銃を手にして、正気を保てない楓と有咲だった。


「はぁ…。それでこれって連射は出来るのか…?」

「やってみたら…」

「お主らはどうして疲れておるのじゃ…」


楓は、マスケット銃をもう一度構え、引き金を引く。


ドゥシューン!!ドゥシューン!!ドゥシューン!!


「「うん。怖い」」


結果的には、連射できた。

そして、ビームが当たった壁には穴がしっかりと開いていた。


「その銃は凄いものなのじゃな」

「チートアイテムもいい所だろ…」

「あくまで最終兵器って事にしない…?」

「有咲の意見に賛成だ」

「良かった」


今回、手に入れたビームが撃てるマスケット銃は、普段は使わず、ダンジョンの主を倒したり、強敵と戦う時のみに使う事に決めた。


「じゃあダンジョンから出るか」

「そうだね」

「じゃな」

ポヨンッ…。


こうして、スケルトンが住むダンジョンの一か所目を攻略した。









「疲れたなぁ」

「そうだね…」

「じゃな」

「ってか、キャンピングカー買って、そのままダンジョン攻略しに来たから、食料とか調理器具とか何にも無いな」

「着替えも無いね」

「一度戻って、準備し直すのもありなのではないかのう」

「ソフィアの意見に賛成だ」

「そうだね」

「うむ」

「じゃあまずは、一回寝るか」

「うん」

「じゃな」

ポヨンッ…。


こうして初のキャンピングカーでのお泊りとなった。










翌日、楓たちは目を覚ました後、アルヴァンに向けて出発していた。


「ふぁぁぁ」

「楓、事故はやめてよね」

「保険って入ってないから気をつけないとな」

「この世界って保険会社ってあるの?」

「ないだろ」

「そうだよね」

「有咲は、この車に積むものでも考えておいて」

「はーい」


このキャンピングカーは納車したばかりなので初期の状態となっている。

そのため、冷蔵庫が搭載されていても中身は空っぽなのだ。


「武器と服と調理器具と…。あとは何かなぁ」

「そうだなぁ。何だろう」

「食料とかも買い貯めておく?」

「そうするか」

「うん」


楓と有咲が、キャンピングカーに積むものを考えている間、ソフィアとレイナはまだ寝ているようだった。










「よしっ、着いたな」

「そうだね」

「ん~。よく寝たわい」

ポヨンッ…。

「じゃあさっさと家に行って荷物を積み込むぞー」

「はーい」

「はいなのじゃー」

ポヨンッ!


3人と1匹は、家に帰ると、キャンピングカーを草原に出し、荷物を積み込む。


「着替えは忘れるなよー」

「分かってるよー」


楓と有咲は、ベッドで寝る時は、寝間着じゃないと眠れない主義なのだ。

有咲は、クローゼットにある服を何種類か取り、近くにあった鞄に入れる。

楓は、武器の積み込み、ソフィアとレイナは、調理器具をキャンピングカーに載せていた。


「こんなもんか」

「そうだね」

「こっちも積み終わったぞい」

ポヨンッ!

「じゃあ出発するか」

「そうだね」

「うむ」

ポヨンッ。


再び、ダンジョンを目指してキャンピングカーを走らせる。







「次のダンジョンまで、かなり距離があるな」

「3日といったところかな」

「そこそこ距離があるのう」

「まあ冒険者なんだ。そのくらいの冒険くらいしようぜ」

「それもそうだね」

「ふむ、それも良いかも知れぬのう」

「でもまぁキャンピングカーに乗った冒険者なんて初めてかもなぁ」

「ふふっ、確かにね」

「そうじゃな」

ポヨンッ…。


3人と1匹は、ゆっくりと次なるダンジョンへ向かうのであった。


「そもそも…」

「ん?」

「いや、そもそもダンジョンって何のために存在しているんだ?」

「単純に、魔物の住処じゃないの?」

「ソフィアにとってダンジョンっていうのは何なんだ?」

「妾にとってダンジョンは、家じゃな。妾が、生まれ育った場所じゃからのう」

「まあソフィアからするとそうだよな」

「でも楓、それがどうしたの?」


楓は、どこか疑問を抱いていた。


「宝箱の中、やっぱりおかしいと思うんだよ」

「指輪だったり、マスケット銃だったり?」

「ああ。そんなの俺たち以外の冒険者にとってはどんなものだと思う?」

「えっと…。指輪は特にステータスが上がるみたいなのは無いし、マスケット銃はビームが出るから、凄い武器なんじゃないの?」

「ああ。他の冒険者にとっては、そうかもしれないが、俺たちにとってはどうだ?」

「私たちにとっては…。指輪は、結婚指輪かな。マスケット銃は、ちょっと威力高すぎて怖いビームライフルかな…?。でもそれがどうしたの?」

「次のダンジョン次第で俺の予想が決まるんだけど、ダンジョンの主を倒した者に必要なものがドロップされるんじゃないかなって俺は思ってる」

「私たちに必要なもの…」


トロールを倒した際にドロップした宝箱には、楓と有咲が転生して着けていなかったペアリングが入っていた。

グリムリーパーの時には、苦戦して倒したため高火力の武器であるマスケット銃が、宝箱に入っていた。


「でも2つだけじゃ何とも言えないからな。これから行くダンジョン次第だな」

「そうだね…。じゃあヴェレヌのダンジョンには、すでに誰かが取った後だったって事だよね。その中には何が入ってたんだろう…」


幽霊騒動があった町ヴェレヌのダンジョンは、すでに攻略済みだった。

そのため、宝箱はもう無かったのだ。


「じゃ、じゃあダンジョンを攻略した者にとって必要なものが手に入ってしまうなら、かなりまずいんじゃないの?。だって、私たちのように、街を襲おうとしたスケルトンの調査のためにダンジョン攻略してる人だったらまだ良いけど、この仕組みを理解した人がダンジョン攻略するとなると、とんでもない力が手に入って私利私欲に使うものが現れてしまうよね」

「かもな」

「私たちが先に攻略しないと何が起きるか分からないよ」

「まあ俺たちと同じ境遇の奴もいるかもだろ。俺たちのように偶然、この仕組みに気づいたものだったりな」

「そっか…」

「とりあえず、全ては次のダンジョン次第だ」

「うん」

「お主ら、妾はお腹が空いたのじゃ~」

「はいはい」

「そろそろご飯にしよっか」


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