第22話 結界
「はぁ…」
「どうしよっか」
「何も手がかりが無いのぅ」
ポヨンッ…。
楓、有咲、ソフィア、レイナ一行は、幽霊騒動の渦中にあるヴェレヌの調査をするも、何も手がかりが得られていなかった。
「もう幽霊は見慣れて来たな」
「そうだね」
「ようやくなのじゃな」
「ああ」
「うん」
「それでどうしたものかのう」
「ダンジョンもどこにあるか分かんないしなぁ」
「うーん」
「そうじゃなぁ」
ポヨンッ…。
3人と1匹は、考える。
ダンジョンがどこにあるのか。
何がこの町に起きているのか。
未だに、解決の糸口が見えてこない。
「いっそこの町ごと吹き飛ばしてみるのはどうじゃ?」
「駄目に決まってるだろ」
「そうだよ!!」
「ふむ、じゃとしたらどうするかのぅ」
「人もいないしなぁ」
「夜はまだまだ長そうだよね」
「そうじゃな」
「そもそも幽霊ってのはダンジョンに生息してんだよな?」
「そうじゃ」
「そのダンジョンに幽霊が住めなくなっているとかはないか?」
「なるほど」
「困った話じゃのう」
「分からんなぁ」
「「「…」」」
一同は、考えるも何も出てこない。
ヴェレヌ内は、歩き回り調べ終えても手がかり一つ掴めていない。
そんな中、有咲が何かを思いついたように、楓の顔を見る。
「ねぇ、ダンジョンがこの地下にあったりしない!?」
「は?」
「ふむっ、穴でもあけるか」
「は?」
ズドンッ!!
楓は、何を言っているのか分からないようだった。
そんな事をソフィアは、気にすることなく、手を地面に向けかざし、魔法を放つ。
すると、魔法が放たれた先の地面には大きな穴が空いた。
「開いたぞい」
「はぁぁぁぁ!?」
「流石、ソフィアさん~」
「見た感じ、深いのぅ」
「はぁ…確かに深いな」
「うん。下水道かな…?」
「この世界って上下水道の設備って完備されているのか?」
「この空気…。ダンジョンのようじゃ」
「は?」
「え?」
「「はぁぁぁぁ!?」」
ソフィアが地面に穴をあけた先はダンジョンでした。
「まあ見つからなくて当然な気もするが…」
「正規のルートがどこかにあるんじゃないの?」
「そうじゃのう。だが、ここから入る方が早くは無いのではないか?」
「いや、どうやって入るんだよ」
「底が見えないよ?」
「妾に任せておれ」
「というと?」
「ん?」
ソフィアの身体が白き光に包まれる。
「ほれ、乗るがよい」
「ああ、そういうこと…」
「竜の姿になれば、私たちを乗せて飛ぶことができるってことね」
「その通りじゃ。ほれ、行くぞい」
有咲がレイナを抱え、楓と共に竜となったソフィアの背中に乗る。
「舌は噛まぬように」
「ああ」
「うん」
楓たちを乗せたソフィアは、ダンジョンへの穴に突入する。
「それにしても、深いなぁ」
「そうだね」
「うむ」
地下を進むも、まだ底が見えない。
「これがあの幽霊騒動の真相に近づくダンジョンだとしたら、大変そうだなぁ」
「でも、幽霊が住めなくなるってどういう事だろうね」
「分からぬが、ほれ、もうすぐ着くぞい」
穴に入り、しばらくすると底が見えてきた。
「っと」
「きゃっ」
「ふむ」
ソフィアは地面に着地する。
「有咲、降りれるか?」
「う、うん」
「ほれ、俺に掴まってろ」
「ありがとう…」
「おう」
楓は、有咲を抱えソフィアの背中から降りる。
「さてと…ここはどこだ?」
「ダンジョンでしょ」
「ダンジョンじゃな」
「いや、俺はそんな事を言ってるわけじゃないんだけど…」
「ふふっ、分かってるよ」
「じゃな」
「分かってるなら良いけど、かなり深くまで来てるよな」
「そうだね」
「ふむ…」
ソフィアは何かを考える。
「ん?ソフィア?」
「どうかしたの?」
「いや、ここはダンジョンのはずじゃ。じゃが、魔物が居る気配がない」
「まあ居なさそうではあるな」
「確かにね」
「じゃが、どうしてここに住めなくなっておるのじゃろうなぁ」
「とりあえず、このダンジョンを散策してみようよ」
「有咲の言う通りだな」
楓たちは、ダンジョンの奥へと歩みを進める。
「よく見ると色々あるな」
「そうだね」
「じゃな」
「これって墓だよな」
「多分」
「そうじゃろ」
「たくさんあるなぁ」
「どのくらいの数がここに眠ってるんだろう…」
「分からぬ」
ダンジョンの中は、無数の墓石が立っていた。
「墓地なのかな…」
「多分な」
「お主らあそこを見てみるがよい」
ソフィアは、目の前にある扉に向かい指を指す。
「あの扉は…」
「ダンジョンの主がいる部屋だよね」
「多分そうじゃ」
「気配察知」
楓は、扉の向こうに何がいるかを調べるため、気配察知を使う。
「…何もいない?」
「そうなの?」
「妾も何も感じないのぅ」
扉の先には、何の気配も感じなかった。
「まあ行ってみるか」
「そうだね」
「うむ」
ポヨンッ…。
楓たちは、扉の下まで歩みを進める。
「というか、ダンジョンの主が居る部屋には、どこもこんな扉があるものなのか?」
「確かに」
「そうじゃな。妾のダンジョンにも扉があったのじゃが…」
「「その節は本当にすみません!!」」
「気にするではない。あの時、お主らが壁を破壊しなければ、妾は呪いで死んでおったじゃろう」
以前、楓と有咲はソフィアのダンジョンにて、壁を破壊しダンジョンの主が居る部屋を見つけ出したのだ。
「そう言ってもらえるとありがたい」
「レイナさんも頑張ってたもんね」
「うむ」
ポヨンッ…!!
楓と有咲は、大きな扉の前に着くと扉に手を掛ける。
「じゃあ開けるぞ」
「大丈夫だよ」
「妾もじゃ」
ポヨンッ…
全員の戦闘の準備ができ、楓と有咲は扉を押す。
開かれた扉の先には…。
「本当に何も無い…?」
「みたいね」
「宝箱すらないみたいじゃな」
確かに、ダンジョンの主が居るような空間だったが、そこには何もなかった。
「マジで、もぬけの殻だな」
「本当に何にもないみたいだね」
「のう、お主らこっち見てみるのじゃ」
ソフィアが何かを見つけ、2人を呼ぶ。
「なんだこれ?」
「何かの記号?」
ソフィアが見つけたのは、何かの記号ようなものだった。
「ふむ。そういうことじゃったか…」
「何か分かったのか?」
「ソフィアさんは、これを知ってるの?」
ソフィアは、この記号が何なのか理解していた。
「うむ。これは、一種の結界のようなものじゃ」
「「結界?」」
「そうじゃ。おおかた、このダンジョンに幽霊をとどまらせないための結界じゃ」
「じゃあ町に幽霊が居るのは、この結界のせいって事か?」
「うむ」
「でも、誰がどんな目的で…」
「目的は分からぬが、この手の魔法を使える奴は、妾は一人だけ知っておる」
「そうなのか?」
「誰なの?」
ソフィアは、このダンジョンに結界を張った正体に気づいていた。
「おそらく、いや確実にこの魔法は、妾に呪いをかけたものと同じ奴じゃ」
「それって…」
「勇者か?」
「じゃな」
このダンジョンに結界を施したのは、勇者だった。
「だけど、どうしてその勇者さんはこんなものを…?」
「流石にそれは、妾にも分からぬ」
「うーん」
「どうかしたの?」
楓は、ダンジョンを見渡し何かを考える。
「いや、ちょっとな」
「ん?」
「楓殿?」
「…勇者って奴が俺にはどんな奴かは知らないけど、わざとこんな状況を起こしているんだったら一発殴るなりなんなりした方が良いかもしれないな」
「わざと…?」
「妾の呪いは故意的じゃろ」
「まあそうだけども。言いたい事はそういう事じゃなくてな」
「どういう事?」
「何が言いたいのじゃ?」
「もしもの話だ。もしその勇者が善意でやったのならどうする?。このダンジョンに魔物を寄り付かせないために、こんな結界を張ったとしたら?」
「それは…」
「その善意が裏目に出ていると言いたいのじゃな?」
「ああ」
「でも、それがこんな状況を生み出してるなら意味がないよね」
「妾は、勇者に関して良いイメージを持たぬからな」
「まあ、あくまで、もしもの話だ。それに、ソフィアの言いたい事は分かる。何せレイナの突進を受けていたのは俺だからな」
「…そうだね」
「そうじゃな…。こればっかりは、お主らに言っても仕方のない事じゃな」
この結界が勇者の仕業だという事は、確定した。
しかし、どういう真意でこんなものが貼られていたのかは分からぬままだ。
「とりあえず、この結界を破壊するか」
「えっ?」
「楓殿が良いのであれば、破壊するとするかのぅ」
「ああ。派手にやっちゃえ」
「壊しても良いのかな…?」
「有咲殿も上の町の様子を見たじゃろ」
「そうだけど…。人のものを壊しても罪に問われない?」
「今更、器物損壊罪の心配!?」
「ふむ、まあ大丈夫じゃろ」
「じゃあいっか」
「良いんかい」
「じゃあやるぞ」
ドンッ!!
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