第21話 ゴーストタウン
「あ~確かに最近、話題になってますね」
「やっぱり話題なんだ」
「メリッサは何か知ってるの?」
今、楓と有咲は冒険者ギルドに来ている。
理由は、最近噂になっている幽霊騒動の真相を聞くためだ。
「うーん。私も噂程度しか知らないんですよね。冒険者から少し聞く程度の話で良いなら…」
「じゃあそれを聞かせてもらえるか?」
「お願い」
「分かりました。そうですね。ある冒険者によると、幽霊騒動が起きている町の名前は、ヴェレヌ。その町は、湖がが綺麗で有名で、観光地なのですが、その幽霊の噂のせいで最近は客足がぱったりと無くなったそうです」
「なるほど」
「それで、実際に出たの?」
「その冒険者が言うには、出るそうです。幽霊」
「あっ、そんなあっさり言うんだ…」
受付嬢のメリッサは、笑顔で幽霊が出ることを楓たちに伝えた。
「でも、実際に実害は客足が減った以外にはないみたいです」
「まあその町からしたら、大変なんだろうけどな」
「そうだね」
「だから依頼というわけでは無いのですが、どなたか調査に行ってくれるとありがたいんですけどね。でも、冒険者の方たちはお金が出ない仕事はあまりやりたがらないんですよ」
冒険者とは、依頼を受けてそれを完遂することで報酬を貰える。
その報酬が貰えないのに、面倒事を引き受けるようなことをする人は居ないようだ。
「はぁ…」
「楓?」
「有咲はどうしたい?」
「え?」
「俺は別にやっても良いかと思ってる。だけど、あくまで俺はだ」
楓は、有咲に尋ねる。
「良いよ。楓が行くところには、私も必ず行くよ」
「そっか。ありがとう」
「うん!!」
「って事で、その調査は俺たちが行ってくる」
「ありがとうございます!!」
楓と有咲は、幽霊騒動の真相の調査を行いに向かう。
「って事で、行くことになりました」
「という事です」
「なるほどのう」
ポヨンッ…。
楓と有咲、ソフィア、レイナの一行は、目的の町ヴェレヌへと向かっていた。
「幽霊ねぇ」
「夏の風物詩だよね」
「お主らの世界じゃとそうなのか?」
「俺たちの居た世界では、よく夏には話題に上がっていたよな」
「うんうん。2人でよく心霊番組の特番見てたよね」
「ふむ。そうなのじゃな」
「まあ幽霊そのものを見るのは初めてだな」
「楓は霊感みたいなのは無いんだっけ?」
「俺も無いし、有咲も無いだろ」
「へへへ」
「へへへじゃないわ」
「ふむ。お主らの世界では、その霊感とやらが無いと見えないのか?」
「多分」
「そもそも霊感がどんなものかも分からないから、いるかどうかもはっきりしてないよね」
「お主らの世界では、そういうものなのじゃな」
転生前の世界と現在いる世界では、幽霊の存在の違いがあるようだった。
「んー」
「楓?」
「どうかしたのか?」
楓は、どこか引っかかっていた。
「いや、ちょっとな」
「何よ。教えてよ」
「そうじゃぞ」
「まあ、偶然かもしれないし」
「え?」
「どういうことじゃ?」
楓は、腑に落ちないところがあった。
「いやな、最近おかしなことが続くなぁって」
「おかしなこと?」
「ふむ、そういうことか」
「え?ソフィアさんは分かったの?ねぇ楓教えてよ!!」
「分かったから、慌てるな」
有咲は、何が何だか分からず、楓を問いただす。
「いやだからな、この前のロックスでの出来事と今回の幽霊騒動は関係あるのかなぁって」
「ロックスの出来事ってあの魔物が襲いに来たこと?」
「そうだ」
「楓殿は、今回の幽霊はダンジョンが関係していると考えておるのじゃな?」
「ああ」
「だとしたら、またこの前みたいな戦闘が起きるかもしれないのね」
「多分だけどな」
「でも話では、被害は客足が減っただけじゃったな」
「それも含め、俺たちは調査に向かうってわけだ」
「なるほどのぅ」
「じゃあそれ次第でダンジョン攻略をするかもしれないのね」
「そういうことだ」
3人と1匹は、ヴェレヌに向かい車を走らせる。
「暗くなってきたなぁ」
「そうね」
「眠いのじゃぁ」
「いや、ソフィアさっきまで寝てたじゃん」
「ふふっ」
車を走らせること数時間。
辺りはすっかり暗くなっていた。
「ほれ、町が見えて来たぞ」
「本当だ」
「あれがヴェレヌなのじゃな?」
「だな」
「地図を見るとそのはずだよ」
有咲は、メリッサからアルヴァン付近の地図を貰っていた。
「これ地図です」
「あっどうも」
「ありがとう」
メリッサから地図を受け取り、2人は目を通す。
「「これは!!」」
2人が受け取った地図は…。
「「まさかの雑誌タイプ!?」」
転生前の世界にてよくコンビニに置いてあるような旅行雑誌のようなものだった。
「この地図は、定期的に更新されるのですが、今お渡ししたのが最新です」
「なるほどなぁ」
「す、すごいね」
「まあ便利ではあるのかなぁ」
「無いよりはマシだよ」
「ふむ、確かに便利じゃのう」
地図通りに進み、ヴェレヌに着いた。
「この辺りで車から降りるか」
「はーい」
「うむ」
ポヨンッ…。
3人と1匹は、車から降り、ヴェレヌに足を踏み入れる。
「…またか」
「…まただね」
「…またじゃの」
ポヨンッ…。
「また人が居ねぇじゃねぇか!!」
「そうだね」
「うむ」
町の様子は、今回も明らかにおかしかった。
「寝るのがみんな早いの!?」
「時間で言うと、午後8時くらいかな」
「星の位置を見るとそのくらいじゃな」
町を見渡しても、人が居らず、町を歩いているのは楓たちのみだった。
「ね、ねぇ楓…」
「何だ有咲?」
「あ、あれ…」
有咲が指を指す先には…。
「幽霊…か?」
「や、やっぱり…?」
町を歩いているのは、楓たちのみだ。
しかし、町を浮いて徘徊している存在がそこにいた。
「ふむ。確かに幽霊じゃな」
「そんなあっさり確定しちゃうんだな…」
「こ、これがアレよね!!ゴーストタウンって奴よね!!」
「有咲、それはなんか違う気がする」
町を散策するも、人は一人もいなかったが、幽霊は複数確認された。
「いや、怖いわ!!」
「そ、そうよね!!」
「お主らは、もっと怖いものと遭遇しておるじゃろ」
「「…?」」
「いや!!魔物の方が怖いじゃろ!!」
「そ、そうか?」
「だってねぇ…。魔物とは言っても、話が通じる人は通じるし」
「それに関しては、妾とレイナが特殊だと思った方が良いぞ」
「あっ、そうなんだ」
「確かに、話の通じる魔物ってソフィアさんとレイナさんだけだよね」
「そうじゃぞ」
今更、幽霊にビビる楓と有咲を宥めるソフィア。
「それにお主ら、この状況になってる原因を探るのじゃろ?」
「帰りたい」
「うん」
「まだ言っておるのか」
「だって本当に居るとは思わないじゃん!!」
「そうよ!!あんな半透明な生き物なんて!!」
「はぁ…。お主らの世界では、幽霊はそんなに恐ろしいものなのか?」
「当たり前だ!!」
「うんうん!!。呪いなんて使って人を殺しにかかるんだから!!」
「確かに呪いは良くないのぅ」
「だろ!!」
「でしょ!!」
「じゃがのぅ…」
「「プルプル…」」
「そこまで怖がることじゃなかろう…」
怖がる2人を見て、思わず呆れるソフィア。
「でもどういう訳じゃろうなぁ」
「ん?ああ、この幽霊の話か…?」
「そうじゃ」
「そういえば、この状況っておかしいんだよね?」
「うむ、幽霊はダンジョンにしか居ないはずじゃからな」
「ここがダンジョンだったりして」
「怖い事言わないでよ!!」
「ふむ、なるほどのぅ」
「えっ、本当なのか!?」
「楓が言ったんでしょ…」
「でものぅ。だとしたら、元から幽霊が居ないといけないからのぅ」
「そうだな」
「確かに、元は観光地なんだよね」
「じゃな」
「だとしたら、マジで何か起きてるんだな」
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