第16話 殲滅と約束
「ソフィアは良いんだな」
「構わぬ。妾は別に魔物の味方というわけではない。妾の住むダンジョンの魔物であれば、守る理由はあるのじゃが」
「そっか」
「じゃあ殲滅して良いよね」
「構わぬ」
「それじゃあ、開戦だ!!」
「うん!!」
「うむ!!」
楓の掛け声を聞き、有咲とソフィアは散らばる。
魔物の種類は、多岐にわたる。
オークやゴブリン、ゴーレムなどが居た。
ズドドドドドッ!!
楓のアサルトライフルが周囲の魔物を打ち抜く。
ズドンッ!!ドンッ!!
有咲のグレネードランチャーが魔物をまとめて吹き飛ばす。
スパッ!!ザシュッ!!
ソフィアの刀が魔物を切り伏せる。
ボンッ!!ズドーンッ!!
レイナの魔法が広範囲に魔物を爆殺する。
「次はこれだ!!」
楓は、アサルトライフルのマガジンを赤色から緑色の物に替える。
ズドドドドドッ!!
ドンッ!!ドンッ!!ドンッ!!
連射し、魔物に着弾後、次々に爆発する。
「私はこれね!!」
有咲は、青色の弾に替える。
ズドンッ!!ドンッ!!
青色の弾道は、魔物を貫通し、後ろにいる魔物にまで当たる。
「妾も負けてはおらぬか」
ソフィアは、刀を仕舞い、白い光が全身を覆う。
白い光を覆っていたソフィアの姿は、変化しドラゴンの姿となる。
『ガァァァァァ!!』
ドラゴンとなったソフィアは、白い炎のブレスを魔物に向かって吐く。
ポヨンッ。
レイナは、ソフィアの周りに群がる魔物を魔法で凍らせる。
そして、凍らせた魔物を雷の魔法で貫く。
「キリが無いな…」
楓は、緑のマガジンを取り外し、橙色に入れ替え、引き金を引く。
橙色の弾が当たった魔物は、全身を炎が覆い燃え尽きる。
その後は、黄色のマガジンに入れ替える。
「楓、そっちは大丈夫!?」
「こっちは大丈夫だぞー!!」
「そっか!!」
有咲も楓と同様、グレネードランチャーの弾を入れ替えながら戦う。
「次は紫…」
有咲の放つ弾は、分裂し複数の魔物に着弾した。
撃った後は、すかさず次なる弾の藍色に替える。
「ソフィアとレイナも大丈夫!?」
「妾の方も大丈夫じゃ!!」
「分かった!!」
ソフィアとレイナは、お互いを守りながら戦っている。
ソフィアのブレスは正面を扇範囲に攻撃し、背後はレイナが魔法で殲滅していた。
「もうこのリロードも何週目だよ…」
「分かんない!!」
「お主らは大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃないかもしれん!!」
「私も疲れた!!」
「妾もブレス吐き過ぎて、喉が渇いたわい」
「「喉乾くんだ!?」」
「当たり前じゃぁ~」
その後も魔物を狩り続けた…。
「はぁはぁ…終わったか…?」
「はぁ…はぁ…そうね…」
「みたいじゃな…」
ポヨン…。
魔物を殲滅し終えたのは、もう朝だった。
バタンッ
楓は、疲労のあまり地面に横たわる。
「疲れたぁ」
「楓、寝るなら宿で寝なさい」
「妾もここで寝て良いかのぅ」
ポヨン…。
皆、魔物を一晩中倒し続けたことで疲労困憊となっていた。
その為、もう宿に戻る体力すらも残っていなかった。
「私も横になろ」
有咲も地面に横たわり、全員歩いて宿のベッドに寝るという考えを持つものは居なくなった。
「あの魔物の群れをお前らだけで倒したのか!?」
「ん?」
「何じゃ~?」
「あっ店主さん!!」
宿の店主は、目の前で起きた光景が信じられないといった感じだった。
地面で横たわる、3人と魔物の死体で溢れかえっている光景は異常なものだった。
ポヨン…。
「なっスライム!?」
レイナも疲れた様子で転がっていた。
その様子を見て、ダークエルフの店主は思わず距離を取る。
「その子は、私たちの仲間だから大丈夫だよ」
「そ、そうなのか?」
「うん!!」
有咲は、店主にレイナの事を説明する。
「マジで疲れたから寝るわ」
「起きて体痛めても知らないからね」
「それは嫌じゃなぁ」
ポヨン…。
「そ、それなら私の馬車で宿まで送ろう」
「良いの!?」
「あ、ああ。私の…私たちの宿を守ってくれたのだ。そのくらいさせてくれ」
「わーい!!ほらっ楓、ソフィアさん、レイナ。宿に戻るよ!!」
「うぃー」
「分かったのじゃぁ」
ポヨン…。
店主は、ポケットから鍵を出しボタンを押す。
すると、地面に魔法陣が現れ、そこから馬車が出てくる。
「馬車もそんな感じに出てくるんだな…」
「そしてメタルな馬なんだね」
「そうじゃのぅ」
ポヨン…。
「ほら、乗ってくれ」
3人と1匹は、店主さんの馬車に乗り込み宿に戻る。
バタンッ!!
「ベッドだぁ」
「ベッドだねぇ」
「ベッドじゃぁ」
ポヨンッ…。
3人と1匹は、部屋に着くとすぐにベッドに倒れる。
この部屋は、ベッドがダブルのベッドが二つのため、楓・有咲とソフィア・レイナが一緒に寝ている。
「「「すぅ…」」」
ベッドに倒れてすぐ、皆死んだかのように眠りについた。
「んんぅ~」
「ふぁぁぁ。良く寝たなぁ」
「そうじゃのぅ」
ポヨン。
3人と1匹は、目を覚まし、ロビーに来ていた。
もう外は、かなり明るく陽は高く昇っていた。
「ん?目を覚ましたのか?」
「うん!!おかげさまでゆっくり眠れたよ!!」
「助かりました」
「妾からも感謝なのじゃ」
ロビーには、店主が待っていた。
「それでお前らはどうするんだ?」
「うーんとね。実は、まだ依頼は完遂してないんだよね」
「だな。俺たちの本来の目的はダンジョンの攻略だからな」
「そうじゃったな。忘れておったわい」
「そうなのか…」
有咲たちの本来の目的は、魔物があふれ出しているダンジョンの調査及び攻略なのだ。
町を襲った魔物の退治はあくまで、そのついでに過ぎないのだ。
「まだ疲労は残ってるけど、また夜に魔物の群れが襲いに来ても仕方ないからな」
「そうだね。さっさとダンジョンを片付けようか」
「じゃな」
「な、なあ!!」
装備を整え、ダンジョンに向かおうとする楓たちを宿の店主が呼び止める。
「お前らには、感謝の言葉しかない。本当にありがとう」
店主は、頭を下げ感謝を告げる。
「良いよ。私たちはこれが仕事だから」
「本当にまともな礼ができなくて申し訳ない」
有咲は、頭を下げる店主に近づく。
「じゃあさ、あなたの名前の教えてもらえる?」
「わ、私の名前か?」
「うん!!」
「私は、ローズだ」
「じゃあローズさん!!ダンジョン攻略し終えたら、またローズさんの話を聞かせてくれる?}
「ああ」
「うん、じゃあさっさと終わらせてくるね!!」
有咲とダークエルフの店主ローズは、約束をする。
有咲は、転生前の自分と目の前にいるローズを重ねている。
愛する人を無くす苦しみを知っている。
だからこそ、もうローズを悲しい目に合わせてはいけないと感じていた。
「じゃあ楓、ソフィアさん、レイナも行こう!!」
「そうじゃな」
ポヨン…。
「ああ。行くか」
「…それで運転は俺だと」
「ごめんなさい…」
「有咲殿は、運転しないのか?」
「まだ慣れなくて…」
ダンジョンまで少し距離があるので、車での移動となるのだが、運転は楓がしていた。
「なぁ有咲」
「どうしたの?」
「あの店主のローズと何かあったのか?」
「うん。ちょっとあの人の昔の話を聞いたの」
「そっか」
「うん。…ってそれ以上に聞かないの?」
「まぁ…。あんまり俺が踏み込む話でもないのかなぁって」
「なるほどね。じゃあこれは女の子だけの話って事で」
「女の子…?」
「あらあら楓?。何か言いたい事でもあるの?」
「心の底からごめんなさい」
「本当に女の子が見えないというなら眼科をお勧めするよ」
「悪かったよ…」
こうして有咲たちは、ダンジョンへと向かって行った。
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