第17話 ダンジョンの魔物

「ここかぁ」

「なんか洞窟…?」

「妾のとは、全く違うのぅ」

ポヨン…。


楓と有咲、ソフィア、そしてレイナは、魔物があふれ出しているという話だったダンジョンに来ていた。


「じゃあ入るぞ」

「うん」

「じゃな」


彼らは、ダンジョンに足を踏み入れる。






「うす暗いな」

「そうだね」

「確かに、この暗さじゃとお主らは、不便かもしれんのぅ」


ソフィアとレイナは、魔物であるため多少の暗さは問題では無かった。


「まあ慣れるか」

「うん」

「じゃな」


ダンジョンの中は、うす暗く、壁は岩肌がむき出しになっており、さながら洞窟といった感じだった。

しかし、洞窟とは言っても、道幅はかなり広く、下り坂になっていたので高さもかなりあった。

さらに、歩みを進めていくこと、数分。


「どうやら魔物のようだな」

「みたいだね」

「じゃな」

ポヨン…。


楓たちは、戦闘態勢に入る。

『ゴブリンLv.20』


「有咲とソフィアが前衛で俺とレイナが後衛だな」

「うん!!」

「任せておれ」

ポヨン…。


有咲とソフィアは、主に接近戦の武器を装備しているため前衛に、楓とレイナは、遠距離の装備や魔法を扱うので後衛に回る。


「敵は、ゴブリンか」

「見えているだけで、6体だね」

「さっさと倒して先を進むぞい」


楓は、スナイパーライフルを構え、有咲とソフィアはゴブリンとの距離を一瞬で詰め、ショットガンと刀がゴブリンに向かう。

その間に、レイナがゴブリンの足を魔法で凍らせ、動きを封じていた。


バンッ!!

うす暗い洞窟の中に一筋の赤き光が1体のゴブリンを貫く。


ズドンッ!!

動きを封じられているゴブリンの頭が吹き飛ぶ。


スパッ!!

ゴブリンの首が宙を舞う。


「あと3体」

「だね」

「じゃな」


残りのゴブリンも3人と1匹により、瞬殺されていった。







「あっという間だな」

「そうね」

「お主らが強すぎるのじゃ」


ゴブリンとの戦闘は、1分もかからなかった。


「というか、これじゃソフィアの部下を殺した勇者とかいう奴と同じなんじゃ?」

「確かに…。このダンジョンの主に恨まれても仕方ないよね」

「その事じゃが、こやつらは知性は特にないからな。あの町を襲ったように、他種族を殺したりするのが趣味みたいなものじゃ。妾は、このような魔物は嫌いじゃ」

「あっ、そうなの」

「ゴブリンってそういう魔物なんだね」

「うむ」


ゴブリンは、基本的に群れで行動することが多く、姑息な手を使い、町や里を襲う魔物だ。

昨晩、ロックスを襲った際もゴブリンは、群れを成して、やって来た。


「まあここの主がどんな奴か次第だな」

「そうだね」

「じゃな」

ポヨン…。


3人と1匹は、さらにダンジョンの奥へと進む。










「なんか開けた場所に出たな」

「なんだろうね。広場?」

「ふむ。いかにも戦闘が起きそうな場所じゃな」


楓たちは、ダンジョンを進んでいると、広い空間にたどり着いた。

しかし、行き止まりというわけではなく、この空間の奥には大きな扉があった。


ペタペタ…。


「ん?」

「何の音?」

「足音かのぅ」


ペタペタ…。ペタペタ…。ペタペタ…。


「何か多くね?」

「確かに」

「ここはダンジョンなのじゃ。多くて当然じゃよ」


ペタペタ…。ペタペタ…。ペタペタ…。

ペタペタ…。ペタペタ…。ペタペタ…。

ペタペタ…。ペタペタ…。ペタペタ…。


「うおっ!」

「いつの間に!!」

「これは確かに多いのぅ」


楓たちがいる広い空間に、無数の魔物がいた。

先ほど戦ったゴブリンの他にも、ロックスで戦ったオークやゴーレムもそこにはいた。


「じゃあ、さっさと倒すとするか」

「そうだね」

「殲滅じゃな」

ポヨンッ…。


ズドドドドドッ!!

ズドンッ!!

スパッ!!

ドンッ!!


ダンジョン内には、銃声や首を切り伏せる音、魔法の爆発音が響いていた。








「はぁ…。血生臭い」

「その言葉を理解できる日が来るなんてね」

「うぅ~。せっかくの浴衣がぁ」

「そんなん今更だろ」

「まだ楓は、距離を取ってるから良いけど、私とソフィアさんはあの敵に近いの!!。キモい顔がすぐそこまで来てるの!!」

「そうじゃぞ!!楓殿!!。あの魔物の血で妾たちが汚されてるのじゃ!!」

「じゃあどうしろと…」

「それは楓が考えて!!」

「そうじゃ!!」

「えぇ…」


楓は、有咲とソフィアに不満をぶつけられていた。


「なぁレイナ。流石にレイナは俺の味方だよな?」

ポヨン…。


楓は、レイナに救いを求めるも、有咲とソフィアのもとに飛び跳ねていった。


「そっかぁ。レイナも女の子だもんな。何か思う所があったんだろうなぁ」


楓は、一人つぶやく。


「ほら楓!!先に進むよ!!」

「楓殿~早く来るのじゃ~」

ポヨン…。

「…はぁ」


先に進む女性陣を追いかけるように、後ろから歩く楓がいた。









「もうゴブリンとかオークとか見飽きた!!」

「品性の欠片も無い魔物ばかりじゃのぅ」

「そういや、ソフィアのダンジョンってどんな魔物が居たんだ?」


叫ぶ有咲を横目に、楓はソフィアに尋ねる。

楓と有咲がソフィアのダンジョンを訪れた時には、ソフィアとレイナしか居なかった。

そのため、2人はあのダンジョンにどんな魔物が居るのか知らなかった。


「そうじゃなぁ。あのダンジョンには、ラミアやリザードマン、ハーピィ、そしてスライムじゃ。あやつらは、妾にとってかけがえのない部下でもあり、家族じゃった」


ソフィアは、過去に思いを馳せる。


「あやつらは、決して町を襲ったりなどはしなかったわい。食料は、ダンジョンに迷い込んだ魔物や冒険者を食料にしててのぅ」

「あっ冒険者も食料なんだな」

「まぁ逃がす理由もないよね」

「有咲殿の言う通りじゃ。向こうも妾たちのダンジョンを荒らしてくるからのぅ。文句は言えないじゃろ」

「まあそうか」

「なるほどね」


ダンジョンには、冒険者が訪れるような場所である。

それを迎撃するのが、ダンジョンに棲む魔物の役割なのだ。

冒険者は、魔物を殺しに来ているのだ。

殺されても文句は言えない。


「ラミアやハーピィ、そしてレイナとはよく、女子会とかしててのぅ。リザードマンは、妾を姉御って呼んで慕ってくれたわい」

「想像するとなかなかな光景だな」

「すごいね」

「スライムのみんなは、皆きれい好きでのぅ。掃除が得意じゃった」

「確かに、レイナも家の掃除とか手伝ってくれるよな」

「可愛いよね」

「うむ。それで妾は、そんな奴と暮らすのが幸せじゃった。あやつらは、知性もあってなかなか賢いやつじゃった。それなのに妾とレイナ以外は皆…」

「そっか…」

「猶更、ソフィアさんとレイナはさん生きないとね」

「そうじゃな」


楓と有咲は、ソフィアとレイナの過去を聞いた。


「だからこそ、妾は、この様な知性のない魔物は嫌いじゃ。ただ本能のままに力をふるいダンジョンの外に住む人たちを殺すのは許せない」

「ソフィア、それにレイナ」

「何じゃ?」


楓は、ソフィアとレイナの方を見る。


「すまなかった」

「何じゃ?」

「もし、あのダンジョンの魔物が生きていて、俺たちがあそこに足を踏み入れてたらきっとこのダンジョンの魔物と同じように殺してたかもしれない」

「そうだね…。私からもごめん」


楓と有咲は、ソフィアとレイナに向け、頭を下げる。


「お主らが気にするでない。それにさっきも言ったが、お互いに敵同士として認識しておるのだから殺そうが殺されようが仕方のない事なのじゃ。それでも、お主らはレイナに傷一つつけなかった上に、妾の命を救ったのじゃ。むしろ、妾は感謝しているのじゃ」

「そうか…」

「でも…」

「だからお主たちが気にする事では無い。それに、妾は今の楓殿や有咲殿と共に暮らす日々も好きなのじゃ。だから、お主らが頭を下げることではない。のうレイナ」

ポヨンポヨンッ…。


ソフィアとレイナは、楓と有咲を恨む様子も無く、むしろ感謝をしていた。


「ほれ、先に進むぞい。もうじきこのダンジョンの最奥に着くようじゃ」


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