第13話 カーチェイス

「有咲!!。あいつは追って来てるか!?」

「えっと…うん!!。しっかりと!!」


馬を買い求めにやって来た3人と1匹は、機械仕掛けの町グーデルにやって来た。

そして購入したのは、馬では無く、車だった。

車を購入後、突如現れた暴走した巨大アンドロイド。

そのアンドロイドが町を破壊しないために町へ誘導する楓たちであった。


「それで楓殿。どうやって倒すのじゃ?」

「どうしたもんかなぁ」

「ね、ねぇ楓」

「何だ?」


有咲は、暴走しているアンドロイドの方を見たまま、楓の名前を呼ぶ。


「何かあれ力溜めてない!?」

「は?」


ピュンッ!!

巨大アンドロイドから放たれる光線。

その光線は、楓たちの乗る車に目掛けて放たれた。


「危っ!!」

「きゃっ!!」

「攻撃されてるぞい」

「分かってるわ!!」


巨大アンドロイドから放たれる光線を避けるため、楓はハンドルを切る。


「ねぇ楓。あれってビームだよね!!。本物のビームだよ!!」

「ビームって何じゃ?」

「ちょっとソフィア!?。今はそこに引っかかってる場合じゃないから!!。そして有咲は落ち着け!!」

「次が来るよ!!」


ピュンッ!!

再び、アンドロイドから放たれる光線。


キィィィィィィ!!

楓は、間一髪でハンドルを切り回避する。


「楓!安全運転しなさい!!」

「有咲!!。シートベルトしなさい!!」

「久々のスリルじゃ~」

「「ソフィア(さん)は、黙って!!」」

「それにしても、そろそろ反撃したいのじゃが…。町の外まではまだなのか?」

「もう少しだ!!」

「このボタンなんだろ…」


ポチッ…。ウィーン…。


「あ、開いた!!」

「有咲!?。何をやってるんですか!?」

「風が気持ちいのぅ」


有咲がおもむろに押したボタンは、車の天井を操作するものだった。

そして今は車の天井は、全開。

オープンカーの状態だ。


「まあ良い!!。有咲のグレネードランチャーはあのロボットを捉えられるか!?」

「当たりはするんだろうけど、足止め出来るかは分からないよ!」

「ソフィア!!。頭だけドラゴンになってブレスとか吐けない!?」

「妾に何をさせるつもりじゃ!!」

「だめかぁ」

「首元に動力源があるんだよね?」

「有咲?」

「あいつの首元を攻撃出来れば良いんだよね?」

「まあ当たるなら…」

「どうするつもりじゃ?」


全長およそ20メートル。

その首元にある動力源を無力化するなど、難しい問題だ。


「有咲。運転、代われる?」

「何するの?」

「狙撃する」

「出来るの?」

「分からん」

「分からんって…」

「まあやってみる」

「分かった」


運転を有咲に代わり、楓は、開いた天井からスナイパーライフルを巨大アンドロイドに向ける。


「楓!!。町を出るよ!!」

「おう」

「楓殿。妾は、何をすれば良いのじゃ?」

「ソフィアは…。どうしよ…」

「決めておらぬのか!?」

「当たり前だ!!。俺にそんな頭脳はない!!」


ギュンッ!!


「ふぬっ!!」


車が大きく揺れる。


「有咲!?」

「ご、ごめん。私ペーパードライバーだから…」

「そうだったっけ!?だとしてももう少し落ち着いて走らせて!!」

「分かった!!」


有咲は、車を大きく減速させる。


「…有咲?」

「大丈夫よ!!時速60kmで走らせてるから!!」

「法定速度とか気にしなくて良いから!!。迫って来てるから!!」


気が付くと、巨大アンドロイドの足が楓たちの乗る車の頭上へと迫っていた。


「「ぎゃぁぁぁ!!」」

「さすがに妾の出番かのぅ」


ドンッ!!


楓たちの頭上には、白き膜のようなものが覆っていた。

巨大アンドロイドの攻撃は、ソフィアの魔法障壁により防がれていた。


「な、何が起きてるの!?」

「有咲は、そのまま真っすぐ見てろ」

「う、うん!!」


楓は、ライフルを構え、引き金を引く。

バンッ!!

放たれた弾丸は、当たりはするものの、ダメージは無いように見えた。


「ちっ!」

「楓?」

「この角度じゃ当たんない!!」

「じゃあどうするの!?」


動力源の在りかは、首元であり、背後から出ないと当たらない位置に存在していた。




「楓殿。アレの背後を取れれば良いんじゃな?」

「出来るのか?」

「もちろんじゃ。やるのは妾ではないがのぅ」

「どういう事だ?」

「まぁ見ておれ。レイナ出番じゃ」


ポヨンッ。


グーデルに着いてからは、ずっとソフィアの服の中に隠れていたのだが、ソフィアの呼び声により出て来たのだ。


「お主の力を見せてくれ」


ポヨンッ。


レイナの身体から光が発せられる。


「ね、ねぇ!!楓!!何か後ろで光ってない!!」

「俺も何が何だか分からん!!」

「2人とも落ち着くのじゃ。レイナの魔法じゃ。こやつの得意な魔法は…。ほれ見ておれ」

「ん?あれは…」

「何々!?何が起きてるの!?」


楓たちの乗る車の周囲には、同じ車が大量に現れていた。


「レイナの得意な魔法は、幻術じゃ。このように五感に作用させることが出来る」

「すげぇな」

「そんな事ができるなんて」

「良い子じゃレイナ。じゃあ陽動も頼めるか」

ポヨン…。


レイナの身体が再び発光する。

魔法で生み出した車が、巨大アンドロイドの足元を駆け回る。


「楓殿!!」

「ああ!!」


幻術により、振り向いたアンドロイドに向け、もう一度楓はライフルを構え引き金を引く。


バンッ!!

緑の弾道が巨大アンドロイドの首元に突き進み、着弾する。

ドンッ!!

着弾した後、緑色の弾丸は爆発する。


「当たったみたいだな」

「当たったの!?」

「みたいじゃ」


楓が放った弾丸は、巨大アンドロイドに着弾後、動きが止まる。


「終わったのね」

「だな」

「そうじゃのぅ」


有咲は車を停止させ、巨大アンドロイドの方を見る。

ギギギ…。


「ん?」

「何の音?」

「何かあのアンドロイドこちらに倒れて来ておらぬか?」

「「えぇぇ!!」」


巨大アンドロイドの動力源は、破壊され機能が停止する。

それは、立つという機能さえも失ったという事だ。


「有咲!!。車を出せ!!」

「うん!!」

「ここは、妾がどうにかするとしよう」

「ソフィアさん?」

「何を…?」


ソフィアは、立ち上がり、刀を抜く。


「はぁぁぁ!!」


ソフィアが刀を振るうと、倒れて来ている巨大アンドロイドがバラバラとなった。


「「えぇぇぇ!!」」

「ふむ。なかなかな切れ味じゃ。それに、剣とは違って振るいやすい。のぅ楓殿!!。武器の事じゃが、こちらを貰う事は出来ぬだろうか…?」

「い、いや。それが良いなら俺は構わないけど…」

「そうか!!。じゃあこれを頼む!!」

「う、うん」


ガシャン!!


「きゃっ!」

「うおっ!」

「おお~。降ってのぅ」


ソフィアが切ったアンドロイドの残骸が降ってくる。


「なんか疲れたね」

「だなぁ」

「妾は楽しかったぞ」

ポヨン…。

「おお~。レイナも楽しかったようじゃ」

「レイナも楽しかったんだ…」

「なら良かったのかな?」

「うむ」

「今回の目的は達成できたから良いか」

「だね」

「にしても、この車というやつは便利じゃのう」

「久々に乗ると便利だと感じるよな」

「そうだね。久々に運転して怖かったけど」

「それは慣れしかないな」


運転を代わり、再び楓がハンドルを握る。


「じゃあ帰るか」

「だね」

「そうじゃな」


アクセルを踏み、車を発進させる。

道中は、行きとは違い、かなり快適な移動だった。








「それでじゃが…」

「うん」

「これどうしよっか」


楓たちは、アルヴァンの近くまで帰って来ていたのだが、一つ問題があった。


「この車をどうするのじゃ?」

「さ、さあ」

「アルヴァンにいる商人たちは、馬を持っているんだろうけど、普段はどこに置いているんだろうね」


問題というのは、この車をどうするかであった。

このまま街に入れて、魔法のドアに向かって突き進むのはあまりよろしくないであろう。

仮に、上手くいったところで楓や有咲の家が大変なことになるのは目に見えていた。


「近くに止めて、レイナの魔法でどうにかするとかか?」

「できるの?」

「まあ仕方がなかろう。レイナ頼めるか?」

ポヨンッ。


3人は、車から降り、防犯のため、レイナの魔法で幻術を施すことにした。


「ん?なんだこのボタン」


楓が持っていた鍵には、謎のボタンがあった。


「ドアのロックじゃないの?」

「かもな」


ポチッ。


楓は、ドアのロックだと思いボタンを押す。

すると、車の足元に魔法陣が現れる。


「へ?」

「え?」

「何じゃ?」


車は、現れた魔法陣に吸い込まれていった。


「どういうこと!?」

「私が聞きたいよ!!」

「外の魔法は不思議じゃ~」

「魔法なのか!?」

「魔法でしょ!!」

「魔法じゃないのか?」


楓と有咲は、目の前で起きた事が未だに受け入れられない様子だった。


「もう一回このボタンを押すと、どうなるんだ?」

「そ、そうだね」


ポチッ。


楓は、再び謎のボタンを押す。


「さっきの魔法陣!?」

「楓!!。車が現れたよ!!」

「ふむ。みたいじゃな」


楓がボタンを押すと、先ほどと同じ魔法陣が現れた。

その魔法陣からは、車が出てくる。


「すごっ!!」

「ふむ。そのボタンを押すと、魔法陣により収納が出来るのか。確かに便利じゃのう」

「これが本当のスマートキーね!!」

「有咲、それはなんか違うと思う」


これで車をどうするかの問題は解決し、なぜ交易都市なのに馬が1匹も見なかったのかの謎が解けた瞬間だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る