第11話 次なる町へ
ポヨン…ポヨン…。
「ほれこっちじゃ~」
「楽しそうだなぁ」
「ふふっ。そうだね」
ダンジョンにて、白竜のソフィアとその部下であるスライムのレイナを仲間にし、三日が過ぎた。
そして今は、楓と有咲の家の外にある大草原を駆け巡るスライムのレイナと人間の姿になっている白竜ソフィアがいた。
「レイナはソフィアの事が好きなんだろうなぁ」
「本当に親子みたいだよね」
「だな」
ソフィアとレイナが遊んでいるのを見守る楓と有咲は、すっかりこの世界に溶け込んでいた。
2人にとって目の前に広がっている世界は、当たり前のものだと感じていた。
「それにソフィアって美人だよね」
「まあそうだな」
「私、楓が目移りしないか心配」
「それは信じて欲しいとしか言えないなぁ」
「行動で示してほしいなー」
「というと?」
「それは楓が考えて」
「手厳しい意見だなぁ」
「有咲殿」
ソフィアは、有咲と楓の事は自分とレイナを救ってくれた恩人として敬意を示すために、殿をつけて呼んでいる。
「ソフィアさん?どうしたの?」
「レイナを綺麗にしてあげたいのじゃが…」
「あっ拭くものね!。ちょっと待ってて!!」
有咲は、遊びまわって汚れたレイナを綺麗にするために拭くものを探しに家に入る。
ポヨン…。
「おっと…。どうした?」
レイナは、楓に向かって突進する。
「おっとすまぬ。レイナは、自分の攻撃が効かなかった楓殿にリベンジしたいようじゃ」
「そうなんだ…。ごめんな~レイナ。俺は、この程度じゃやられないんだ」
ポヨン…。
「レイナは元気だなぁ」
「持って来たよ~」
「おう」
「すまぬな」
「それで楓。楽しそうね」
「俺は絶賛攻撃を受けている最中だけどな」
「ほれレイナ。こっちへ」
ポヨン…。
レイナは、ソフィアに飛びつく。
「じゃあはい。ソフィアさん」
「助かる」
ソフィアは、有咲からタオルを受け取り、レイナを綺麗にする。
「それで楓。今日はどうするの?」
「そうだなぁ。そろそろ移動手段を確保しておきたいよなぁ」
「確かに、前みたいに2時間以上歩くのはねぇ」
ソフィアやレイナが居たダンジョンは、アルヴァンから徒歩で2時間以上のところに存在していた。
運動不足の二人にとっては、長時間の移動は辛いものだった。
「なぁソフィア」
「何じゃ?」
「この世界で主な移動手段って何になるんだ?」
「そうじゃのぅ…。やはり馬かのぅ」
「やっぱそうなるか」
「でもこの世界で馬なんて見た事ないよ」
「あの街…アルヴァンには居なかったのぅ」
「馬か…」
「馬ね…」
「どうかしたのか?」
「いや、俺たち乗馬の訓練なんてやったことないし」
「そうだね」
「なるほどのぅ」
「「うーん」」
楓と有咲は思案する。
「お主らが居た世界では、どのような移動手段なのじゃ?」
2人は、すでにソフィアに異世界から来た事を話していた。
「えっと。車って言って、簡単に言えば燃料を燃やして走る箱みたいなのだ」
「説明するとなると難しいよね」
「ふむ…。それはお主らでは作れないのか?」
「「はっ!!。その手があった!!」」
2人は、この世界にあるものを移動手段として考えていたため、自分たちで作り出そうとは考えていなかった。
「とは言っても、どうやって作るの?」
「さぁ」
「うむ…。魔法では生み出せないのか?」
「魔法か…」
「そんなに便利なものなの?」
「妾には分からぬが、お主らは、不思議な能力を持っておるのじゃろ?」
「不思議な能力?」
「そんなもの私たちにあったっけ?」
「何じゃ?自覚が無いのか?」
「「ん???」」
楓と有咲は、ソフィアが何を言っているのかが理解できていなかった。
「妾の呪いは、この妾自身でも解けなかったんじゃ。それを軽々と解いたお主らはただものでは無いぞ」
「「ほぇ~」」
「本当に分かっておるのか…」
2人はソフィアが言うほどの実感は全くなかった。
「俺たちもまだ魔法に関しては、素人同然だからな」
「そうね。なにか物を生み出すなんて出来る気配なんてないもんね」
「そうなのか…。では、やはり馬を見つけるしかなかろう」
「そうなるかー」
「仕方ないね」
「じゃあ、街に行ってみて何かないか探すとするか」
「だね」
「うむ」
楓と有咲は、街へ向かう。
その間、ソフィアとレイナは家で待機する。
「それで情報を集めるには…」
「やっぱり酒場じゃない?。私たちが初めてこの街に来た時もそうだったけど」
「なるほどなぁ」
2人は、異世界転生して情報を集めるために訪れた酒場へと向かった。
「久しぶりだね!!お2人さん!!。今日はいかがします!?」
以前、冒険者ギルドを紹介してもらった猫耳の店員が2人に話しかける。
「そうだなぁ。今日もビールをお願いできるか?」
「私も同じので」
「はいはーい!!」
猫耳の店員は、注文を聞き、店の奥に進む。
「猫耳だね」
「猫耳だな」
「可愛いね」
「可愛いな」
「モフモフね」
「モフモフだな」
「はい!!お待ちどお!!」
猫耳店員は、2人分のビールを持ってくる。
「それで今日は何が聞きたいのかな?」
「話が早くて助かる」
「それで、この街で馬を手に入る場所ってある?」
「馬かぁ~。あっ!!隣町のグーデル!!。あそこには、乗馬用の馬とか居るよ!!」
「おお!!そうなのか!!」
「…その隣町のグーデルまで歩いてどのくらいなの?」
「えっと~確か…。徒歩6時間くらいかな」
「し、死ぬ…」
「む、無理…」
「…妾もつらいのぅ」
ポヨン…。
楓、有咲、ソフィア、レイナの四人?でアルヴァンの隣町であるグーデルへと向かっていた。
そして、現在は、アルヴァンを出て4時間ほどが経過した。
途中、休憩をはさんでいるが、全員が運動不足のため、体力も底を尽きようとしている。
「というか隣町まで6時間ってどういう事だよ…」
「本当よね…」
「妾もダンジョンの外がこうなってるとは思わなかったわい」
ポヨン…。
「お主らは、普段からそんな武器を持ち歩いているのか?」
「まあ遠出する時は持っていくようにしてるな」
「何かあると良くないからね」
「ふむ。そういう事か」
楓と有咲は、ダンジョン攻略と装備は同じで、楓は、スナイパーライフルとアサルトライフル。有咲は、グレネードランチャーとショットガンを持ってきている。
ちなみに、拳銃と刀は常に装備している。
「ソフィアも何か武器があった方が良いか?」
「確かにそうね。でもこの銃は私たちにしか使えないだろうし…」
「うむ。そうじゃのぅ…。妾は、ドラゴンの姿になれば良いのじゃが、お主らの事を考えるとあんまり良くないからの」
「そうなのか?」
「そうなの?」
「妾も、こんな姿を今はしているが魔物には変わらぬ。そんな奴と一緒に居たらお主らに迷惑をかけるかもしれぬ…」
ソフィアは、申し訳なさそうに言った。
「正直、俺たちは何も気にしてないんだが…」
「うん。ソフィアさんが気にする事じゃないよ」
「じゃが…」
「まあソフィアがそこまで言うなら仕方ない。その姿でも使える武器を帰ったら買うか」
「うん!!そうだね!!」
「良いのか?」
「俺は構わん。とりあえず今は、この刀で我慢してくれ」
「すまぬ」
「じゃあ帰ったらソフィアの武器を一緒に選ぼ!!」
「ふっ、そうじゃな」
楓は、アルヴァンの武器屋で譲り受けた刀をソフィアに渡す。
「ソフィアさんって魔法は使えるの?」
「確かに」
「使えはするが、妾よりレイナの方が魔法は得意じゃな」
「そうなの?」
「あのダンジョンに魔法を施してたのはレイナだったもんな」
「うむ」
ソフィアとレイナが居たダンジョンでは、弱り切っていたソフィアを守るためにレイナが魔法を施し匿っていた。
ポヨン…。
「なんか誇らしげだな」
「ふふっ。そうだね」
「今の妾が居るのもレイナのおかげじゃ」
「つ、着いた…」
「はぁ…そうね…」
「ここがその言ってた町なのか?」
アルヴァンから休憩を挟みながらも歩き続けること7時間。
辺りはすっかり暗くなっていた。
ようやく今回の目的地のグーデルにたどり着いた。
「とりあえず、宿を探すぞ」
「そうだね」
「もうくたくたじゃ~」
疲労困憊な中、4人?は宿を探す。
「ちょっと待つのじゃ」
「どうした?」
「ソフィアさん?」
ソフィアは楓と有咲を呼び止める。
「このままレイナを町に入れると騒ぎになるじゃろ」
「確かに」
「そうかも…」
「という訳じゃ。考えがあるから二人には話を合わせて欲しい」
「と言うと?」
「どういう事?」
「まぁ見ておれ」
ソフィアは、レイナを抱え服の中に入れる。
「これで良かろう」
「おい」
「まさか…」
「楓殿の子どもって事で手を打ってくれぬか?」
今のソフィアの姿は、さながら妊婦さんといったところだった。
「それで押し通せるのか…?」
「ど、どうなの…」
「これしか無いじゃろ」
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