第4話 武器調達

楓と有咲は、今ソファにて休んでいる。


「まさか、お風呂まで付いているとはな…」

「いい湯だったね」


夕食を済ませた後、2人はこの家にお風呂がある事を知り、お風呂を堪能していた。


「本当に何不自由ないね」

「転生前に住んでいた家よりも暮らしやすいかもな」

「そうだね」

「…」

「…」

「ねぇ楓」

「んー?」

「私たちって死んだんだよね」

「かもな」

「そうだよね…」

「ああ…」


2人は、異世界転生をしている。

その原因は、おそらく死んだからであろう。

その事実を未だに受け入れられていないのだ。


「なぁ有咲」

「なあに」

「改めて言いたい事があるんだけどさ」

「どうしたの?」

「俺は、有咲が好きだ」

「…ふぇ!?」

「あんまりこういった事は、恥ずかして言わなかったけどさ、あの火事で有咲を失いそうになって思ったんだ。有咲をもっと幸せにしてあげたかったって」

「そっか…」

「もっと有咲を笑顔にしてあげたかった」

「うん」

「もっと有咲と過ごしたかった」

「うんっ…」

「もっと有咲を愛したかった」

「ぐすっ…。うん…」

「ごめんな」

「良いよ…。私だってもっと楓を幸せにしたかった。もっと時間を過ごしたかった。もっと笑顔にしたかった。もっと愛したかった」

「有咲…」

「楓…」


2人は、死を経験し、お互いがかけがえのないものだとしった。

もうあんな終わり方はさせない。

もう愛する人を死なせない。

もう不幸な目に合わせない。

2人が決意した瞬間だった。


「有咲、愛してる」

「楓、愛してるよ」


2人はそっと優しくて甘い口づけをした。












翌日…。


「んんっ…。あれ?楓…?」


有咲は、目を覚まし、ベッドに楓が居ない事に気づく。


「楓?」

「呼んだか?」

「ふぇ!?」


突然の返事に驚いた楓は、思わず声を上げる。


「どうしたんだ有咲?」

「びっくりしちゃって」

「ん?そうか。とりあえず、ご飯出来たぞ」

「あっ、ありがとうね」

「気にするな。あと、服はそこのサイドテーブルに置いてるから」

「うん。ありがとう」


昨晩は、遅くまで愛し合っていたため、有咲は、服を着ていない状態だった。

楓の方は、先の起きていたので着替えも済ませていた。

ちなみに、今の替えでの格好は、Tシャツにジーンズといった格好だった。


「あれ?今日は割とまともかも」


有咲の方も、パーカーにジーンズといった服装だった。


「いや、現代的過ぎでしょ!?」

「有咲?どうした?」

「だって昨日はメイド服だったじゃない!!」

「バリエーションが豊富みたいでな」

「確かに!!」


有咲もクローゼットの中を確認し、種類の多さに驚いていた。


「というかウエディングドレスもクローゼットにあるって何!?」

「思い出の為とか?」

「私が着たのじゃないのに!?」

「それを言ったら俺のタキシードだって見覚えのないものだぞ」

「まあね!!」


この家に置いてある服は、あくまで2人にとってサイズはぴったりであるだけであって、見覚えの無いものばかりだ。


「ほれ、朝食を済ませたら、調べものの続きだ。冒険者なら武器の調達もしなきゃだからな」

「むぅ。それもそうだね」







「ふぅ…。美味しかったよ楓」

「それは良かった」


2人は朝食を済ませ、有咲が淹れた紅茶を飲んでいる。


「この世界にも紅茶があるなんてな」

「魔物とか魔法とかダンジョンとかあるけどね」

「武器を調達したら、魔物を見てみないとな」

「そうだね…。ちょっと怖いかも」

「まあ危険だろうなぁ」

「そうだよね…」

「ああ。だからこそ武器が必要なんだよ」

「そうだね。でもこの世界ってどんな武器があるのかな」

「んー。ファンタジーもので王道と言ったら剣とか杖とかじゃね?」

「この家には銃があるけど…」

「あれは、この家と同様、転生の特典だろ」

「この世界には銃みたいなの無いのかな」

「分からん」

「じゃあ今日は武器屋にでも行ってみようよ」

「だな」


今日の目的を決め、外出の準備をする。


「流石にこの格好で街を歩くのは浮かないかな?」

「昨日はメイド服と燕尾服だったんだ。大丈夫だろ」

「と言いながら、スリーピーススーツに着替えてるじゃない」

「だって色んな服があるんだ。着ないと損だろ」

「じゃあ私は、このドレスでも着ようかな」







「よしっ行くか」

「私は大丈夫だよ」


2人は着替えを済ませ、再び昨日の街に向かう。


「やっぱ人多いね」

「交易都市だからな。それに冒険者登録する人もいるんだろ」

「そうだったね。それで武器屋はどこだろうね」

「今日はこの街をぶらぶら歩いてみるか」

「うん!!」


武器屋を探しながら、この街を探索する。


「あれって防具屋じゃない?」

「行ってみるか」


2人は、見つけた防具屋に入る。


カランッ…。


「いらっしゃいませ~」


店に入ると、店主らしき女性が元気な挨拶をする。


「「(うさ耳だっ!?)」」


店主の耳には、ウサギの耳が生えていた。


「ここは防具屋で間違いないか?」


気を取り直して、楓はうさ耳店主に問いかける。


「うん!そうだよ!!」

「合ってたみたいだね」

「だな」

「それでお探しのものは?」

「そうだなぁ…」

「ここには防具ってどんなものがあるの?」

「そうだね~。ここには、駆け出し冒険者の為の装備がほとんどかな。リーズナブルだけど、質は良いよ」

「そうか」

「おすすめとかはどれとかあるの?」

「そうだねぇ…。性能的にはどれも似たり寄ったりだけど、というかあなた達の装備の方が断然良いよ」

「え?」

「そうなの?」

「うん。私、鑑定士の能力があるから見れば質の良し悪しが分かるの。だから、あなた達が来ているその服はかなり防御力あるのも分かるよ」

「この服、そんなに凄いものだったのか…」

「知らなかった…」

「だから、この店で買う必要は無いと思うよ」

「そうだったのか。それはすまなかった」

「良いよ良いよ!」

「じゃあ武器が売っている店ってどこにあるか教えてもらえる?」

「うん!武器はこの店の向かい側の店だよ!!」

「あの店か。ありがとう」

「また何かあったら来てねー!!」

「うん。ありがとうね」


2人は、防具屋を後にして、向かいの店の武器屋に行く。



カランッ…。


「おう!いらっしゃい!!」


今度は、屈強な男が店に居た。


「「(ドワーフだっ!!)」」


武器屋の店主はドワーフだった。


「それで何をお求めだ?」

「そ、そうだな。なにかおすすめとかはあるか?」

「そうだな。やはり剣が人気だな!!」

「なるほどな」

「この剣は、私でも取り扱えるの?」

「そうだなぁ。威力は減るが軽いのもあるぞ」

「やっぱり重さとかもあるのね」


2人は、店内の武器を見渡す。


「「(うーん。分からん!!)」」


転生したばかりの夫婦は、どれが武器として扱いやすいか分からないのだった。



「店主さんのイチ押しとかはあるの?」


有咲が店主に聞くと…。


「そうだな。どういう訳か人気がないのだが、俺自身の一番はアレだな」


2人は、店主のドワーフが指を指した先を見る。


「「刀じゃん!!」」


2人の視線の先には、2対の日本刀が置いてあった。


「おお!!2人はあれを知っているのか!!。昔な、俺のダチにニホンってところから来た奴が居てな。そいつに教えてもらったんだ!!」

「待て!日本から来た奴が居るのか!?」

「その人に会いたいんですけど!!」


2人は、同郷の地からやって来た者が他に居ると知り、店主に所在を聞く。


「あぁ…。紹介してやりたいんだが、もうそいつは居なくてな」

「そ、そうなのか。すまないな…」

「すみません…」

「なあに気にするな。それよりもあんた達もそのニホンから来たのか?」

「ああ。実はそうなんだ」

「うん」

「そうかそうか。それならあんた達にあの刀を授けても良いかもな」

「良いのか?」

「構わんよ」

「でも、お金とかは…」

「あの男と同郷の奴から金なんて取れるかよ」

「そ、そうなのね」

「ああ。だから受け取ってくれ」

「分かった。ありがとうな」

「ありがとう」

「うむ」


2人は、2対の刀を受け取った。


「また何かあればウチに来な!!」

「ああ。助かる」

「ありがとうございます」


2人は、店を後にする。


「すげぇな…」

「そうだね…」

「まさか、俺たち以外にも異世界転生してる奴居たなんてな」

「うん…」

「本当に異世界転生って何番煎じだよ…」

「全くだよね…」

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