第3話 冒険者登録

「ここが冒険者ギルドかぁ」

「雰囲気あるね」


楓と有咲は、酒場の店員の情報の下、冒険者ギルドに来ていた。


「じゃあ行くぞ」

「うん」


冒険者ギルドの中へ入る。


ドゴンッ!!


「「ふぇ?」」


ガシャン!!


2人が目にしたのは、鎧を着た人たちが乱闘をしていた。


「「えぇ!?」」


あまりの状況に驚きを隠せない2人。

ここに来て、驚くことばかりだったが、今起きていることが一番の驚きだった。


『やれやれっ!!』

『やり返せ!!』


「ち、治安悪ぅ」

「楓…帰ろ?」

「ここまで来て!?」

「だって怖いんだもん!!」

「わがまま言わずにさっさと済ませるぞ」

「わっ、待って」


楓は、有咲の手を握り、受付へと向かう。


「ようこそ!!冒険者ギルドへ!!」


受付嬢が声高らかに挨拶をする。


「(エルフだ…)」

「(エルフね…)」


受付嬢は、ファンタジーものではお馴染みの種族でもあるエルフだった。


「それで冒険者登録ですね!!こちらの水晶に手をかざしてください!!」


エルフの受付嬢は、カウンターに置いてある水晶に手をかざすよう促す。


「こ、こうか?」

楓が水晶に手をかざす。

すると…。


キィィィィィィン!!


「なっ!?」

「えぇ!?」

「これは…」


楓が手をかざすと水晶が光を放つ。


「何が起こったんだ…?」

「ね、ねぇ楓!。水晶が…」


有咲は、水晶の異変に気付く。


「水晶…って何だ?この水晶の中に虹みたいなもやみたいなのが…」

「この水晶の内側に現れるのは、その人の魔力の形です。例えば、風が現れたり、水が現れたり。中には、武器の使いに長けている人は、得意の武器の姿が現れたりもします」

「そうなのか…」

「じゃあ楓のは…」

「この虹色のもやみたいなのは、炎ですかね?私も長らくこの受付やってますけど、初めて見ました」

「そ、そうなのか」


魔力の形。

それは、人それぞれ違うものとなっている。

もちろん、似たようなものは存在するが、全く同じというのは存在していない。

出力が違ったり、そもそもの用途が違ったりもする。


「じゃあ次はそこのお嬢さんだね!」

「あっ、はい!」


有咲は、受付嬢に呼ばれ、楓と同じように水晶に手をかざす。


キィィィィィィン!!


「これは…楓と同じ…」

「そうですね。そちらの方と同じ虹色の炎みたいですね。ですが、先ほどの方とは、色の濃さの順番が違いますね。そちらの方は、赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の順番に濃かったのですが、あなたはその逆ですね」

「言われてみればそうかも…」


先ほど、楓の虹の炎は、赤が一番濃く、紫が一番薄かった。

しかし、有咲は、紫が一番濃く、赤が一番薄かった。


「この色の濃さには意味があるのか?」

「すみません。私にもわかりかねます…」

「そうか」

「はい…すみません」

「いや、こちらこそすまなかった」

「ほら、楓。怖がらせてどうするの」

「わっ、そんなつもりはなかったんだ」

「いえ。大丈夫です。それで冒険者登録の続きですが、こちらの書類に目を通して頂いて、サインをお願いします」

「「はーい」」


2人は書類にサインをする。


「はい!ありがとうございます!!。これで2人は冒険者登録がされました!!。そして冒険者の証として、このブレスレットを付けてもらいます。これがあれば、他の街に行っても、冒険者としての活動ができます」

「なるほど」

「これが無かったらどうなるの?」

「冒険者しかできない、仕事だったりもありますので。例えば、ダンジョンに行くのは基本的には冒険者として認められたものしか立ち入りは出来ません。ですので、そのブレスレットが無ければダンジョンに入る事も許されないのです。そしてそれは、身分証明にも使われますので、紛失した場合は、こちらで再発行という事になりますので、ご了承のほどお願いいたします」

「分かった」

「なんとなく理解したわ」

「これにて手続きは終わりです。依頼の方は、そちらの掲示板の方に依頼書が貼ってありますので、その紙を持って、受付にお願いします」

「ああ」

「うん」

「それでは、良き冒険者ライフを!!」


2人は、手続きを終え、晴れて冒険者となった。


「有咲」

「ん?」

「一回、家に戻るか」

「そうね。あっ!」

「ん?どうかしたか?」

「食料を買って行こ」

「そうだったな。というかそれが目的だったな」


楓と有咲は、冒険者ギルドを後にし、食料を買い求めに向かった。





ドサッ!!


「重かった…」

「買いすぎちゃったね」


買い物を済ませ、家に帰り着いた。

買ったのは、基本的に食料や生活に必要になってくるようなものを買いだめした。


「そういえば私たちって武器持ってないよね?」

「言われてみればそうだな」


この世界には、危険な魔物が存在する。

そんな中、素手で挑むのは自殺行為であろう。


「さっき見つけた銃使えないのかな?」

「まぁ使えるんだろうけど…」

「けど…?」

「俺たち、射撃訓練とかしていないのに、あんな銃扱えるのか?」

「それは、ほら。魔法の力で」

「魔法ってそんな万能なのか」

「分かんないけど、そのくらいの事あっても良くない?。転生の特典みたいな?」

「確かに、異世界転生にはチート能力の特典ついてても良いと思うけどなぁ」

「まさか私たちの異世界転生の特典ってこの家じゃないよね…?」

「…あり得るかもな」


この家は、2人が目覚めた時には存在していた。

それも他の誰かの所有物というわけでもない。


「サイズぴったりの服に、二人分の食器。これって私たちの特典でしょ」

「能力じゃねぇ…」

「でも、寝泊まりする場所があるって良い方じゃない?」

「まあ、それもそっか」


異世界転生して早々に、寝泊まり出来る場所が確保できるのはとてもありがたい事だろう。


「お金もかなりある方だし」

「金貨ってこの世界でもかなり高価なものなんだな。食料を大量に買い込んでも銀貨

2枚程度だったしな」


さらには、お金にも余裕があるため、異世界転生してすぐの割には、楽な生活を送れているのだ。


「それこそ、あの街で見かけた呪いの指輪とかは、金貨くらいの価値があるんじゃない?」

「ああ、あのメンヘラグッズか」

「いや、それは私たちが勝手に想像してるだけだけどね」

「まあそうだけど。あれ?そういえば…」

「どうかしたの?」


楓は、何かを思い出したように部屋を見渡す。


「食料を保管できるものってあるのか?」

「…そういえばそうだね」


2人は、異世界転生して間もないため、転生前の普通の生活に慣れてしまっていた。


「冷蔵庫なんてないよね」

「ファンタジー感台無しだな」


食料を保存するためのものを探すため、おもむろにキッチンらしき場所に向かう。


「これってフライパンよね…?」

「こっちは、圧力鍋か…?」

「「いや何で!?」」


この家のキッチンには、ファンタジー感溢れる異世界に来たのに、家庭的なものが沢山置いてあるのだ。


「ま、まさかこの俺の身長くらいある箱を開けると…」

「ま、まさかね」


2人は、楓の身長と同じくらいの高さの箱を目にし、戸を開けてみる。


「「す、涼しい…」」


そう。

その箱の正体は…。


「「冷蔵庫!?」」


家電までも置いてあった。


「どういう事だよ!!」

「異世界って家電あるの!?じゃああの黒い箱状のものって電子レンジなの!?」


キッチンには、転生前の世界で見た事あるようなものばかりだった。


「ま、まあ暮らすのに不便はないか…」

「そうだね…」


2人にとってこの世界は、まだまだ驚くことばかりだ。


「とりあえず、陽も沈んで来たし、夕食にしよっか」

「それもそうだな。えっと食材は何買ったっけな…」


2人は、夕食の準備に取り掛かる。


「えっと、牛肉に豚肉、あとは、魚か…。食べ物は元の世界と同じっぽいな」

「グリフォンの卵ってタンパク質豊富なのかな?」

「前言撤回だ。なんだグリフォンの卵って!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る