第3話 障害者雇用

「よろしくおねがいします!」

この一声とともに、僕の社会人生活は、始まった。

ちょうど、10年位前、だった。

少し記憶が朧気だ。

僕は、10年位前、地元の大きな会社に、障害者雇用として入った。

配属先は、サポート業務課。

先輩が2人、同期が2人の小さな部署だった。

業務内容は、資料作成やデータ入力、パンフレットの封入作業などで、先輩に教わりつつ、仕事に取り組んだ。

僕には一つの目標があった。

それは、正社員になることだ。

若さゆえか、仕事に並々ならぬ、情熱を注ぎ込み、有給も取らず、仕事に打ち込んだ。

同期や先輩からは、正直、少し呆れられていたかもしれない。

結果として、3年目に休職。

それまでは、滅多なことがない限り、休まなかったので、無理が祟ったのだろう。

なんとか復帰できたは良いものの、まだ正社員になる夢は諦めきれていなかった。

名誉挽回しようと、今度は資格試験に挑戦しだした。

休日返上で、頑張り続けた結果、そこそこの数の資格は手に出来たものの、体調を崩しがちになり、休みがちになってしまった。

障害者雇用は、障害者を企業が雇うことで、国から、補助金が出たり、罰金を払わなくて良くなる制度だ。

ただし、それには条件がある。

週、30時間以上の労働時間の確保だ。(20時間以上とも。)

僕は、度重なる無理をしたせいで、その条件を満たすことができなくなってしまう位、不調になり、ついに、休職の後に、退職となった。

正社員になるどころか、職を失うなんて、正直笑えない。

そんなとき、手を差し伸べてくれたのが、鈴谷社長だった。

後で聞いた話だけど、会社が、就労移行支援事業所に繫いでくれ、サポートをお願いしてくれたらしい。

「君は確かに、大事なことを、見誤ったかもしれない。でも君の努力は、誰も笑わない。もう一度、僕らと、できることを探してみよう。」


そして、現在に至るという訳だ。

あまり楽しい話ではないかな〜。

けど、話せて少し気が楽になった。

また、明日から、頑張ろう。




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