第3話 ま、マネージャー?


「へっ?」

「あれ。」

「「なんでここに?(!?)」」

私と、彼は、思わずそう言っていた。


×××


「話を聞かせてください!」

「じゃあ、事務所で少し詳しく話しましょうか。」

「はい!」

事務所、という言葉はきちんと聞き流していた私なのであった。


――

―――


「ん? ここって…」

「行くよー。」

あの後、スーツ姿の女の人、桜木さんが、ビルまで案内してくれた。

ビルまでの道中、桜木さんの話を少し聞いていた限りでは、空木高校うつぎこうこうの生徒の方が都合がいいバイトらしい。

そしてなぜか、ZeTuberの中でもわたしが好きなZeTuberを聞かれた。

まぁ、有名なburittさんだと答えておいたが………

桜木さんに連れてこられたのは十階ほどのビル。

どことなく見覚えがあるビルに、桜木さんの姿。その二つが結びついて、やっと思い出した。ここはあの、story hopeの新人、「彗星」の二人がケンカをしていたビルで、桜木さんはケンカを止めていたスーツの人だ。んー、もしかしてバイトって、「彗星」の何かのイベントの手伝いなのかな? それなら、うち空木高校の生徒限定で探していた意味もあるか。二人と同じ高校の方が事務所の方も色々と都合は良さそうだしね。

桜木さんにとある綺麗な一室に連れて行かれる。

が、すぐに、「ちょっと待っててね〜。」と言ってどこかに出て行ってしまった。

なんだろう?


「ほら、早く入んなさい。」

「ぇえ〜。」

「いきなり連れてこられても…」

待つこと数分、扉の外からそんな会話が聞こえてきた。桜木さんと、二人の男の人の声? その声は、どこかで聞き覚えがある声だった。

「ほら!」

そう桜木さんの声がしたかと思うと、二つの人影と、桜木さんが入ってきた。


「…へっ?」

「あれ。」

「「なんでここに?」」

私と、彼――「彗星」の一人でありクラスメートの桐生君は、思わずそう言っていた。


×××


説明されること数分。

「………へ?

ま、マネージャー??

わたしが、この二人の??」

「そうよ? 見習いだけどね。」

部屋に入ってきたもう一人、片割れの文馬彗もんまけい君は、隣のクラスらしく、同じ高校、それも片方と同じクラスだったら都合が良さそうだ、という事らしい。

「それとあなた、昨日のアレケンカ、見てたでしょ?」

アレ………って、つまり。ケンカの、ことだよね。

…………まとめると。

私は、ニ〜三ヶ月先にライブがあるので、人出がとにかく足りないから、同じ高校で都合が良さそうで、また、あのケンカを見てたから(見習いらしいけど)期間限定で二人のマネージャーになる、と。

「………あの、私部活ありますし、七時には帰りたいですし、土曜日もお休みがいいんですけど、いいんですか?」

「……ん? 別にいいよ? 深夜とかは生配信しない予定だし、生配信を予定してる水曜日と、日曜日に少し撮り溜めするからちょっと来て欲しいのと、あと五〜六時にあるインタビューとかそう言う時にもろもろの時にいてくれればいいから、多分大丈夫だよ。

それに、期限付きだしね。

…………それで、受けてくれるかな?」

結構仕事多そうだけど、多分大丈夫、かな。

大きなライブまで、らしいし。

「はい。よろしくおねがいします。」

「え、即決?」

「え、ちょ待って、俺たちの意見は? ちょ、桜木さん。」

「んー、なんか嫌なことでも?」

桐生くんたちに小首を傾げる桜木さん。

やっぱ、さすが元ZeTuberだわー。あざとかわいい。

「「「え?」」」

なに? みんなしてこっち見てなんかあった?

「ねぇ、あなたどうして私が元ZeTuberだって気づいたの? 私言ってないよね?」

桜木さんがそう尋ねてくる。

ん、え? もしかして声に出してた?

恥ずかし……………

「元アウルロスの、「ろぅか」さんです…よね? 声とか癖とかが似てたし、それにstory hopeに就職したって風の噂で聞きましたし……」

アウルロス。数年前に解散したZeTuberグループで、メンバーは六人。

リーダーの「アルシア」、色気担当の「uktoウクト」、元気担当の「ルッツ」、癒し担当の「ろぅか」、天然担当の「するめ」。

「buritt」の前に、ZeTube界一位だと言われていたグループだ。


「桜木さんが? え、そだったの?」

桐生君が意外そうに聞いている。

「そうよ? 言わなかったかしら?」

きょとんとして桜木さんが返す。

「聞いてないよ…………よくそれだけでよくわかったね、キミ。

………うん、面白そう。うん。僕はいいよ、キミがマネージャー見習いでも。」

面白そう? どうゆうこと?

「俺も別にいいけどさ……何でこの子なの? 桜木さんが即決って珍しいな。」

少し首を傾げながらそう言ったのは、桐生くん。

「ああ、別に即決だったわけじゃないのよ? あの子――ウクトから聞いてたもの。ね、青海朱歌さん。」

「…………うそっ…あの子、話してたんですか!? ……だから私をバイトに…?」

「そうね。そういうことになるかしら。」

それで、と桜木さんが二人に向き直る。いや、二人というか正確には桐生君に、だけど。

「で、理由はわかったかしら?」

「……マネージャーの昔の知り合いの知り合いってこと?」

桜木さんは、桐生君の返答にニコッと笑う。

「そういうことよ。

じゃあ、決定ね。

これからよろしくね、朱歌ちゃん。」

「はい!」

「………………ま、いいか。」

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