第7話 引き受けようじゃないか。


  引き受けようじゃないか。


翌朝、二人に提案した。

「こっちへ、東京へ出てこい。但し、学校は卒業しろ。保健室か図書室で卒業まで通え。日数が足りていれば、無理に通わなくても良いかも知れん。

 香奈のお父さん、お母さんと一緒に学校へ行って相談してみろ。多分、ダメだと言わないはずだ。」

「……でも、こっちへ来ても住む所や、仕事とか、、、」香奈が少し嬉しそうに聞いてきた。唯奈も隣で頷いている、嬉しそうにハニかんで。

「ここに住めば良い。二人で一部屋だが良いか?。仕事はアルバイトを探そう。俺も少し心当たりがある。聞いておく。

 その内、やりたい事とか成りたいものが見つかったら学校とか、就職とかすれば良い。どうだ?」

「……お願いします。」香奈と唯奈が涙目で頭を下げた。「……でも迷惑じゃないですか?」

「いや、大丈夫だ。女には逃げられたから、、、もちろん、手は出さない。足も出さない。約束する。ところで二人はどうなりたい?、希望とかあるか?」

漠然とした質問をしてみた。

「……痩せて綺麗になりたい、、、見返してやりたい、、、」と香奈。

「女として独り立ちしたい、、、。あの家と別れたい、、、」と唯奈。


二人を香奈の家まで送って行った。

朝伝えた提案を、香奈のお父さん、お母さんへ伝える。「よろしくお願いいたします。」と頭を下げられた。

唯奈の方が気掛かりだったが、香奈のお父さんが言い含めてくれると言ってくれた。虐待という弱みを握っているからか?。


辛い事とか、死ぬ事まで考えてしまう事へは、立ち向かってはダメだ。

逃げろ。逃げてやり直せ。悪い事は、全部置いてこい。自分に自信がついたら帰れば良い。それまでは逃げ通せ。

「逃げるは恥だが、役に立つ」って諺もあるじゃないか。

香奈と唯奈、香奈のお父さん、お母さんへ雄大はそう話した。

最後に、「俺にはもの凄い味方がついています。大丈夫です。安心してください。」と言って帰った


雄大は、良太の店に来た。

池袋駅から南へ歩いて数分。飲食店ばかり入っているビルの3階、ワンフロワー全てが良太の店。

店の入り口、ドアの横に注意書きが書いてある。”一見さんお断り”ではない


〔入店されるお客様へ。

 ドアの内側に箱をご用意させて頂いております。

 そちらに、肩書、経歴、社会的地位をお入れください。

 お帰りの際にはお忘れなき様、お持ち帰りくださいませ。

 それでは、お時間の許される限りお寛ぎください。

 ようこそ。Non Status(ノン ステータス)へ。

杏樹  〕


「いらっしゃいませっ!、、、あら、雄大。久しぶりねぇ~。あたしが恋しくなったぁ~?」

「ハハハ、相変わらず美しいねぇ~、良太、じゃない杏樹は。……ああ、恋しくなった。顔が見たくなった。」

「嬉しい事、ゆうわねぇ~。今夜は帰さないから、そのつもりでねっ!」

「いや、帰る。許してくれ。……今日は、ちょっと相談に乗って欲しくて来たんだ。」

「改まっちゃって、、、。どうしたの?」

「……まあ、まずはカクテル貰えるか?。ティーソーダの。」

「はい。……悠ちゃんっ!。レモンティーソーダ。雄大に、、、」「かしこまりました。」


「相談って、な~に?。逃げられた女の代わりを紹介するとか?、、、。無理よ、あたしにしなさい!」

「違う、違う。香織の代わりは考えてないって。杏樹は特別だから、手は出さないって、、、」

「もう、出しても良いのに~!。了解は得てるっつ~のに~、、、」

「ダメだろぉ~、不倫は普通にィ~。どんなパートナーだよ?」

「雄大もよ~く知ってるじゃん!、雄大なら良いよって。」

「いや、、、俺がダメだ、、、柳東りゅうとう さんに悪いよ。尊敬してっから、、、」

「毎回、毎回、おんなじパターンねっ。フフフ、、、今日はこれ位にしといたげるわぁっ!」

「池野めだか師匠かっ!ハハハハハ、、、」


「……で、相談って?」

「……うん、、、女の娘、二人、一人前にしたいんだ。アッチ方面じゃ無くて、、、人間として、、、」

「女の娘、二人かぁ~、、、、どんな関係?」

「3月ぐらいから、俺の部屋に同居する予定。訳ありで、、、預かる事にした、、、」

「訳ありかぁ~。、、、どんな娘?、幾つの娘?」

「もうすぐ高校卒業。」

先日二人から聞いた話を掻い摘んで、杏樹に話す。


「そっか~。……一人前っていっても、お化粧?、身体?、こころ?」

「……全部かなあ~。何からすれば良いか全然、判んなくて~。とりあえず住むとこは俺んちで、、、。自分たちの小遣いとかはバイトでもして貰おうかと、、、」

「……う~ん、、、先ずは身体からかな、、、ウオーキングとジム通いか自宅でエクササイズ。……で、化粧は教えてあげるよ。

 バイトもさぁ~、落ち着いたら此処で雇っても良いよ。ホール係がもう少し欲しいし、、、。一人、もうすぐ辞めちゃうし、、、」

「お~っ。此処でバイトかぁ~。ここなら安心だ。でも、直ぐって訳にはいかねぇだろ~なぁ~」

「立ち仕事だし、立ち居振舞いが出来ないとね、、、。半年くらい身体を造ってからならバイト、良いよ。」

「……うん。やっぱり杏樹様だ。……お前は凄いなぁ。もう、一生、ついて行きますから、、、。」

「ハイ。直ぐに来なさい。全部捨てて、あたしのところへ来なさい。面倒見てあげるから、、、」

「いや、ダメだ。許してくれ。また来ますから、、、ハハハハ」

「ハイハイ。ウフフフフ。」

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