第3話 二人のJK
二人のJK
渡嘉敷 雄大 は33歳。筋肉質の身体ではあるが、如何せん背が低い
宮津 香奈 柔道の重量級選手。自らなった訳では無く、ならされた重量級。
渡辺 唯奈 は低身長で、プクプクした女の子体型。但しストレスによる過食肥満。
地下鉄が地上に出て走り始めた。川を越えて綾瀬に着く。
深夜1時まで空いている東口のスーパーで食料品を仕入れる。
約5分歩いて雄大のマンションに着く。東京武道館が近くにある。
二人を招き入れ、使っていなかった部屋で寝る様に伝えた。
「布団は二組ある。俺は自分の部屋で寝る。」
「後でシャワーでも使え。タオルは洗面所の棚にある。好きなの使え。」
などなど、手短に伝えた。二人とも立ったまま、部屋を観察している。壁と天井のシミ探しか?
「……何~にも無いね~。」唯奈がポツリ。
「あ~、この間まで女が一緒だったが、色々置くの嫌がった、、、。」雄大、寂しそうに言う。
「えっ、同棲してたの~?。すっげえ~、、、」と香奈。雄大、何が凄いのか不明。
「まあ、座れ。なんか食おう」
スーパーで買った、おむすび、サンドイッチ、エクレア、チョリソーのパック、焼きそばがテーブルの上。
そして、カクテルとジンジャーエール、コーラ。訳の判らない組み合わせではある。
簡単な宴席。二人は明日行くところの話題で盛り上がっている。なんとなくそれを聞く。
二人を案内した部屋へ移動させ、「好きなだけ、喋ってろ」と伝えた。
雄大、ベッドに寝転がりながら、
【アイドルみたいな女の子じゃないが、10年すれば良い女にはなる。保証する。
いろんな事務所で、いろんなイモ姉ちゃんを見てきた俺だ。必ず変わる。
5年もすれば、身体のラインは大人になる。自信が着けば顔つきが変わる。周りが見える様になれば性格も変わる。
あの太り方は、骨太からの肥満に見えないな、、、元は細い様な気がする、、、二人とも。】
翌日、二人は出かけて行った。今夜も泊めろと言うので好きにしろと言って見送った。
雄大は、掃除、洗濯に勤しんだ。直ぐに終わる。
こんな休日は、酒でも飲んで昼寝をするに限る。ソファーで即実行。
夜、玄関のチャイムが鳴る。二人が戻って来た。手にはスーパーのレジ袋。
「聞いてくださいよ~。渋谷ですっごい人、見ちゃいましたぁ~。」
今日の見たもの、聞いたものを時系列無視で報告してくれる。
時折、感想を求められるが、話を理解していない上、テンポに着いて行けてない故、”あ~”とか”う~”しか言えない
気の利いたコメントは求めていないらしく、二人はマイペースで盛り上がっている。
傍で、薄笑いを浮かべながら酒を飲む、冴えない中年男。まあまあ至福の時間だ。
香織が出て行ってから、こんなに楽しい時間は無かった。
「明日、牛久まで車で送って行ってやるよ。電車賃、浮くだろ。」
「という事で、続きは隣の部屋でやれ。俺は寝る。シャワーは勝手に使え。」
二人をリビングから追い出し、自部屋に戻り、寝た。ニヤ着いた顔で寝た。
日曜日、ブランチとして近くのファミレスで軽く食事をした後、牛久まで走った。
ワゴンの軽自動車。香織と同棲中に、リースで入手した。
後の席に座る二人は、まあ~よく喋る。沈黙が怖いのか、ペナルティでも課せられているかの様に喋る。
一昨日の夜も、昨日の夜も遅くまで喋っていた様だ。
ただ、走行中に時折会話が途切れる事があり、ルームミラーで見ると会話の余韻に浸っている訳でも無さそうだ。
眉間に皺を寄せて考え事をしていたり、遠くを見る様にしながら唇を噛み締めていたり。
違和感があった。余計な事を考えない為に喋っていたのか?
恐怖か悲観に押しつぶされるのを必死に耐えている様な気がした。
牛久駅前。
「また泊めてねぇ~。連絡するからねぇ~。」笑顔で見送ってくれている。
楽しかった。ずっと一緒に居たわけではないが、気が紛れた。思わぬ事で、心が救われたと思った。
その時、改札から数人のJK(女子高生)。紺色ブレザーと茶色チェック柄のスカート。青い柄のリボンネクタイ。
「香奈っ!、唯奈っ!。どこ行ってたのっ、!」一人のJKが大きな声を出しながら駆け寄って来た。
「……良かったぁ~。無事だったわ、、、。生きてて良かったぁ~。」
「……紗季。」唯奈、目を合わさない様に地面を向いている。
「心配したんだよ。ず~と学校来ないから、、、」
「うん。ちょっと、、、」香奈、笑顔では無い。
「そう、取り合えず無事でよかった~。そうそう、学校へ来てもさ、出歩かない方が良いよ。あんた達のせいで文化祭、中止になっちゃったから、恨んでる子、多いよ。、、、じゃ、また。」
なかなかの美形JKは去って行った。その後ろ姿を怖い顔で睨む二人。
「お嬢さんたち?、どういう事かなぁ~。JKだと泊めたりすると捕まるかな?、、、犯罪者になりかけたおじさんに説明出来るのかなぁ~。」と雄大
「……ごめんなさい。嘘ついてました、、、」二人で首を垂れる。
「生きてて良かったぁ~って言ってたのが気になるが、俺は無事に届けたからな!
訳は聞かない事にする。何処に行ってたか聞かれたら正直に言え。
ヤラシイ、もとい、やましい事はしていない。
今後、会う事は無い。長居は無用だ。
俺は帰る。警察から連絡があればまた来てやる!」
そう言い残して、雄大の軽四は走り出した。
【……う~ん。生きてて良かったぁ~ってのはどういう事だ、、、。今にも死にそうな雰囲気じゃ無かったが、、、
何があったか知らないが、揉め事に巻き込まれるのは勘弁してくれ、、、
ただ、力になれるのなら、、、
警察からなら、会社は首になるのか?……180度大振(おおぶれ)の予感がする。
弱り目に祟り目かぁ~。心が救われたなんて思わなきゃ良かった、、、】
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