晩御飯

十夢は、ハンバーグに目玉焼きをのっけて、サラダをちょこんと乗せたお皿を差し出してくれた。


「ありがとう」


ご飯を入れて、渡してくれた。


「食べようか?」


「うん」


『いただきます』


向かい合って、二人で食べる。


私は、だんだんとこの場所に居たいと思ってきていた。


「美味しい」


「よかった」


7年間、私の誕生日を祝ってくれたのは十夢だった。


毎年、私は十夢に覚えてくれていたの?と聞いた。


だって、好きでもない人の誕生日なんて興味ないはずだから…。


十夢が、私を愛してくれてる事が凄く嬉しかった。


「十夢は、料理が上手だね」


「そうかな?嬉しい」


「本当に美味しいよ」


「ありがとう」


ずっと、こうしていたい。


「愛ちゃんは、料理作る?」


「少しは、作るよ」


「今度、食べさせてくれる?」


「勿論だよ」


「純さんには、食べさせた?」


「一度もないよ」


「そっか!それは、嬉しい」


十夢は、ニコニコ笑ってる。


「お酒、後で飲もうか?」


「うん」


「冷蔵庫に昨日のビール入ってる」


「うん」


「あっ!その前に、お風呂だよね!ちょっとゆっくりしたら、沸かすよ」


「うん」


「十夢、楽しい?」


「楽しいよ!凄く」


その笑顔に安心した。


私ばかり、話してたから不安だった。


『ご馳走さま』


ご飯を食べ終わった。


十夢は、食器を下げていく。


「お茶いれるね」


「うん」


冷蔵庫に冷やしてある緑茶を注いだ。


あの日、純がいれてくれた緑茶が美味しくて、あの日からこれだった。


「愛ちゃん?」


「あっ!ごめん」


私は、十夢にお茶を渡した。


「この緑茶美味しいね」


十夢は、ニコニコ笑って緑茶を飲んでいた。


小皿を差し出して、窓を開けた。


十夢は、煙草に火をつけた。


「純さんと別れられる?」


「やってみる」


「明日、産婦人科行こうか」


「ピル?」


「うん!聞いた方がいいと思う」


「わかった!ついてきて」


「明日、休み取ったから行くよ」


十夢は、そう言って笑ってくれた。


このまま、流されて純の子供を妊娠したくなかった。


どうしても、それだけはしたくなかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る