電話

【愛してる、愛してる、愛してよ♪】


「あの人?」


「うん」


「出たら?」


「うん」


私は、十夢にそう言われて洗面所で電話に出た。


「もしもし」


『何してる?』


「お酒飲んでる」


『愛、早く家決めてくれよ』


「わかってる」


『後、纏まった休みは旅行に行こうか?』


「旅行は、無理でしょ?」


『十夢と行けばいいから』


「十夢を利用するの?」


『十夢と行くって言って、三人で行くんだよ!十夢には、別の旅館に泊まってもらうから』


「そんなの悪いよ」


『十夢にやってるとこ見せるのか?』


「それは…」


『だろう?だから、別の場所をとるから!行こうか?旅行』


「わかった、行く」


『じゃあ、予約とっておく!後で、メッセージを見てくれ!後、指輪のデザインをいくつか送っておくから確認してくれ』


「あのね、純」


『はい、その件でしたら、また後日改めてご連絡さしあげます』


まただった。


プー、プー


「奥さんが来たんだね」


スマホをゴトッと床に落とした。


「愛ちゃん」


十夢が、洗面台にやってきた。


私は、さっきのを録音していた。


『はい、その件でしたら…』


私は、十夢に泣きながらそれを聞かせていた。


「何?これ」


「業者の打ち合わせ」


「違うよね?愛ちゃんとの電話だよね」


「違う、見積り」


不倫って、心がこんなに壊れていくって純は知ってた?


「見積りじゃないよ」


十夢は、私をギュッーって抱き締めてくれた。


「普通の恋愛がしたいよ」


私は、十夢にしがみついた。


「愛ちゃん、俺としよう」


「でも、愛してるから…。どうにもならないの」


「愛ちゃん、まるごと受け止めるから」


「十夢ぅぅー。助けて」


ずっと言えなかった、SOSを口に出していた。


「私、壊れちゃう」


「愛ちゃん、別れよう。あの人と別れよう」


十夢は、そう言っていつまでも私の背中を擦ってくれていた。


グゥー


「お腹減った?」


「うん」


「食べようか?」


「うん」


十夢は、私の手を引いてダイニングに座らせた。


「目玉焼きつける?」


「うん」


十夢は、目玉焼きを焼いてくれてる。


もう、疲れちゃった。私

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