誕生日

7年前の誕生日の前日ー


『まだ、そこならイルミネーション残ってるから!7時半にはつけるから』


「わかった」


『ホッカイロは、持って暖かい格好はしておいでよ!少し、遅れるかも知れないから』


「わかった」


『じゃあ、後でね』


「うん」


七時半に待ち合わせ場所についた。


一泊の荷物をボストンバックに詰めた。


暖かい格好と言われたのに、ロングコートの下は、膝丈のミニスカートを履いていた。

ロングブーツに、発熱素材の上服を着て、タイツを履いてるから大丈夫!


首には、ちゃんとマフラーをしてる。


暫く待っても現れなくて、イルミネーションが見えるベンチに座った。

冷たくて、寒い。


誕生日プレゼントに送られてきた高級な腕時計を見ると一時間は過ぎていた。


まだかなー。


ポケットのホッカイロを取り出して握りしめる。


また、ポケットにしまった。


指先がいたくなったら、また取り出すを繰り返した。


何の連絡もない。


事故に合ってない?


ニュースを調べても大丈夫だった。


渋滞かな?


大丈夫だよね!


時間は、どんどん過ぎていく。


体が芯まで冷えた。


指先が、ジンジンして痛い。


心まで、凍えそうだった。


誕生日の10分前を時計が示しているから…。


立ち上がった!


「3分前だ!」


私は、高級時計を眺めていた。


もう、帰ろう。


馬鹿みたい。


「はぁ、はぁ、はぁ。ごめんね」


一分前に現れたのは、十夢だった。


「ちょっと、仕事遅くなっちゃった。日付変わるまでにこれてよかった」


息を切らしながら、喋る姿に涙が流れてきた。


「何で?十夢さん」


「お誕生日おめでとう」


そう言って、十夢は私の両手を握りしめてくれた。


「愛さん、手冷たいね。ごめんね」


抱き締められた。


「体、こんなに冷えちゃったね。ごめんね。本当にごめん。女の子をこんな寒空の下、待たせてごめんね」


そう言って、背中を擦ってくれる。


十夢が走って来たのがわかる。


だって、十夢はホッカイロみたいに暖かかったから…。


あの日、身体中に十夢の温もりが、広がっていった。

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