十夢との出会い①

「えっ?今、何て?」


「ごめん、Keikoの調子が悪いんだ」


「スイートルームだよ!ここ」


「わかってる!ごめんね」


「今日は、付き合って三年目だよ」


「わかってるよ!本当に、ごめんね、愛」


「わかった」


「愛してるよ、愛」


「私もだよ、純」


舌を絡ませるキスをされた。


純は、いなくなった。


聞き分けのいい子のフリをしなくちゃいけないと思った。


一年目も二年目も、妻、妻って…。


結婚する前に、付き合ったんだよ。


私と純は、3年前の9月28日に交際したのだ。


今日は、記念日だった。


ホテルで、ご飯を食べて、いつもの行為をした。


じゃあ、ゆっくりフカフカのベッドで寝ましょう。


初めて、9月28日を跨げると思ったのに、九時半。


妻が、体調が悪いと連絡がきた。


ふざけんな!


ビーーー


一時間して、ホテルのインターホンが鳴った。


純、帰ってきたのね!


「おか、誰?」


「どうも、入っていい?」


「はい」


現れた人に、固まった。


私は、部屋にあげてしまった。


「柏木十夢です」


「誰?」


「咲元純の従兄弟です」


「従兄弟?」


確かに、横顔が似ていた。


でも、この子は純と違ってなんか可愛らしいって言葉がピッタリ当てはまる。


「それ、何?」


ゴミ袋を指差された。


「あっ、これは!」


「捨てとくの頼まれたのそれか!いつもは、愛さんが頼まれてるの?」


「私の名前」


「純さんに聞いたから」


「あっ!そうだよね。うん、家で捨ててる」


「何の為に捨てるの?洗えば使えるんじゃないの?」


「えっ!!あっ、それは」


言えない、こんなキラキラの目を向けられてる人に言えない。


「別に言いたくないなら聞かないけど!俺、二十歳。愛さんは?」


「二十三歳」


「へー、そっか」


十夢は、ソファーに座る。


「お酒飲まない?」


「うん」


テーブルに置かれたシャンパンを指差した。


二人で、飲むはずだったシャンパン。


涙が、流れてくる。


「不倫だって分かってやってるんでしょ?」


十夢は、シャンパンの栓をポンと開けた。


「うん、わかってる」


トクトクとグラスにシャンパンが注がれていく。


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