純との出会い⑤

「愛、また会おう」


玄関で、抱き締められた。


「はい」


無理やりでも、笑って見せた。


「送ろうか?」


「大丈夫です」


私は、純の家を出た。


エレベーターに乗り込んで、気づいた。


安物の服と高い靴、私と純のいる場所は違う。


そんな人と付き合えたなんて凄い事じゃない。


そう思って、JELLYのliveに向かった。


「よかったー」


「よかったね、結愛ちゃん」 


「うん!感動した。あっ、その靴買ったの?」


「あっ!うん。いつもの壊れちゃって」


「へー。そうなんだ」


「うん」


結愛ちゃんが、ブランド品に興味がない子で本当によかったと思った。


私は、帰宅して靴の名前を検索した。


「7万円!!」


ビックリして、スマホを落としそうになった。


高いっ!!


これで、やめればよかったんだ。


なのに、私は10年間もここにいる。


純は、結婚して10年だった。


私は、眠ってたようだった。


目を開けて、テレビをつける。


【妻に感謝です】


「いやー、五人目おめでたいですね」


たまたま、純のニュースがやっていた。


「スキャンダルが多かった純がね!まさか、こんなに子煩悩な父親になるとは」


「Keikoがよかったんだよね」


私は、リモコンを持ってテレビを消した。


「馬鹿馬鹿しい。浮気、ずっとしてますよ!Keikoじゃなくて、浮気相手がよかったんでしょ?」


そう言って、ペットボトルの水を飲んだ。


十夢と私じゃなかったら、すぐにバレてるよ。


「馬鹿にするなーー」


ブワッーって、涙が流れてきた。


「私が、嫌いになれないって知ってて」


赤ちゃんとか、婚約指輪とか、結婚式とか…。


「馬鹿にするなーー」


私は、泣きながら床に崩れ落ちた。


愛してるが、ただ漏れだから…。


純は、私を離さないんだよ。


私は、十夢の疑問に答えられなかった。


あの、出会った日と同じだった。


冷蔵庫のビールと、カニカマを取り出した。


十夢に初めて会ったのは、7年前だった。


私と純が、付き合った記念日だった。


私は、泣きながらカニカマを食べて、あの日を思い出していた。

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