純との出会い③

見るからに、高級なマンションに連れて来られた。


鍵を開けて、家に入れてくれた。彼は、マスクとサングラスを外した。


「三日後には、引っ越すから散らかってるけど」


「お邪魔します」


沢山、段ボールが積まれた廊下を抜ける。


「座って、ご飯作るから」


そう言って、手際よく焼き飯を作ってくれた。


「焼き飯しか作れなくて悪いけど、ごめんね!外で食べれなくて」


「あっ!いえ。社長さんですか?」


私の言葉に、彼は笑った。


グラスに緑茶が注がれた。


「俺を知らないの?」


その言葉に、私は俯いてしまった。


もしかすると、自分が使ってる洗剤の会社の社長なのか?それとも、家電の会社の社長なのか?グルグル回っていたら、タブレットを差し出された。


「誰?」


「これが、俺」


モデルと俳優の純と書かれている。


「げ、げ、芸能人ですか?」


ビックリした声を出すと、純はアハハと笑い出した。


「本当に知らないんだね」


「あっ、テレビとか映画見ないんです」


「そっかー!何か、新鮮で面白い。俺は、咲元純さきもとじゅん。君は?」


「香川愛です」


「愛ちゃんか、よろしくね」


「はい、よろしくお願いします」


純の作る焼き飯は、美味しかった。


「何時だっけ?」


「16時から何で、liveが」


「じゃあ、まだまだ時間あるね」


純は、お皿を下げてくれた。


「ソファーに座って、コーヒーいれるよ」


「はい」


「お待たせ」


この日、出されたのはチョコレートの香りがするコーヒーだった。


今、思えば奥さんの好みだったのだと思う。


「いるなら、砂糖どうぞ」


一口飲んで、大人の味が広がった。


私は、純が遊び人だって知らなかった。


お砂糖をいれると、甘くて飲みやすくなった。


「美味しい」


「よかった」


隣にいるだけで、くらくら目眩がする。


純は、煙草に火をつけた。


バニラの香りが、フワッとした。


「彼氏は?」


「いません」


「付き合った人は?」


「二人です」


「そのうち、セックスしたのは?」


「ひ、一人です」


純は、驚いた顔をした。


「何歳?」


「20歳です」


「そっかー」


煙草を灰皿に押し付けた。

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