ベッド

「一緒に、寝よう」


私は、十夢をベッドに連れてきた。


「いいの?」


「十夢なら、いい」


「わかった」


十夢は、背中を向けて寝転がった。


私は、十夢に抱きついていた。


「愛ちゃん、おやすみ」


「おやすみ、十夢」


こんな風に、誰かに抱きついて眠るのは久しぶりだった。


いつもなら、なかなか寝付けないのに、私はすぐに眠っていた。


律儀にルールを守って化粧を落とすのを忘れていた。


朝方、目が覚めて私は顔を洗いに行った。


じゃあ、もっかい寝よう。


十夢は、全く動かなかった。


私は、もう一度布団にそっと入った。


壁側を向いてるから、十夢の顔は見えなかった。


後ろから、抱き締める。


アパレルブランドを立ち上げてるだけあって、ウエストは細い。


でも、きちんと筋肉があるのを感じる。


私は、またすぐに眠ってしまった。


「ごめん、起こした?」


目覚めると、十夢の顔があった。


「えっ!」


「危ないよ。ごめん、嬉しくて見てた」


「ううん」


私は、起き上がった。


「素っぴん、可愛いね」


「そうかな?」


「可愛いよ」


「ありがとう、朝御飯食べる?」


「うん、食べる」


私は、朝御飯の準備をする。


「次はさ」


朝御飯のお皿をゴトリとテーブルに置いた。


「何?」


次なんか、期待して誘っていいのかな?


「どうしたの?」


「次は、お泊まりセット持ってきて」


「いいの!また、泊まって」


十夢は、キラキラした顔を向けた。


「こんな感じでいいなら」


「ソフレってのに、昇格したね!俺」


そう言って、十夢は笑っていた。


十夢は、ストロベリーで、純はチョコレートだと思った。


私は、どちらを食べるのが正解?


「いただきます」


「どうぞ」


「美味しい、愛ちゃん天才」


「焼いただけだから」


「それでも、天才」


私は、この10年。純とは朝を一緒に迎えた事などなかった。


涙がポタポタと頬を濡らす。


「また、泣く」


十夢は、ティシュを渡してくれた。


「ごめんね」


「謝らなくていいよ」


十夢は、嬉しそうに、朝御飯を食べてる。


十夢の手を掴んで、歩き出せば幸せだって私だってわかってる。


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