考えてくれた?
十夢は、後部座席にゴミ袋を置いて車の助手席を開けた。
「ありがとう」
「うん」
運転席に乗り込んで、エンジンをかける。
マスコミの人が、私達を見た!
「なんだ!純じゃないじゃないかー」
「あの女の子も違ったか」
と残念そうな声を出していた。
十夢は、車を走らせた。
「今日は、何発やったの?」
バックミラーで、ゴミ袋を見つめながら言った。
「数えてない」
「そう!」
十夢は、そう言うと赤信号で停まって煙草に火をつけた。
さすがに、従兄弟だ!
横顔は、純にソックリなのだ!
「で、考えてくれた?」
「無理だよ」
「何で、純さん。結婚してるんだよ」
十夢は、そう言って煙草の煙を吐き出した。
「わかってる、でも…」
「俺は、愛の悲しみを支えたいだけなんだ!純さんを愛してたって構わない」
十夢は、そう言うと煙草の火を消した。
「わかってる」
私は、窓から流れる景色を見つめていた。
何故、こんな話になったかと言うと…。
遡ること、8か月前ー
純に呼び出されていた。わざわざ、こっちまで来てくれなくてもいいのに…。
いつものように終わった後で、純は煙草に火をつけた。
「keikoが妊娠した」
その言葉に、心臓がドキンとした。
明日、私は30歳を迎える。29歳最後の日に衝撃的な告白をされたのだ。
純の妻が妊娠するのは、私と付き合ってから五回目だった。
慣れたものだと思っていた。
なのに、心は死ぬほど速く音を刻み込んだ。
「おめでとう」
口から捻り出した言葉に笑えた。
まるで、感情の伴わないロボットのように呟いた。
「無理して言わなくていいよ」
純は、そう言ったけれど…。
無理してでも言わなければ、押し潰されてしまいそうだった。
愛してると言われ、私が一番だと言われ、束縛までされている。
なのに、妻が妊娠を繰り返すのは何故なのだろうか?
その日、十夢が迎えにきて…。
私は、車で泣いていた。
後、二時間で30歳を迎えるのに純は22時15分に妻に電話をする為に毎回私を放り出した。
十夢は、私を強く抱き締めてくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます