作ってあげようか

蓮杖「はあーーーーー、やっと終わったーーーーーーー」


三条「お疲れ様。手伝ってもらったおかげで予定よりかなり早く終わったわ。本当にありがとう」


蓮杖「いいよ、気にするな」


三条「その……ごめんなさい」


蓮杖「ん、なにがだ?」


三条「いや、昨日あなたを監視するって言ったこと。あれ、もうやらないわ。今回のあなたの行動を見て疑うことが馬鹿馬鹿しくなったもの」


蓮杖「そうかい、それはよかった。正直あれに関しては本当にやめて欲しかったからそうしてもらえると助かるよ」


三条「ええ、あなたを今後監視するような真似はしないわ。それで……まだ夕食は食べてないのよね」


蓮杖「ん? まあ、そうだな」


三条「今日も昨日みたいにコンビニで買って食べる気だったの?」


蓮杖「ああ、いつもそうしているしな。どうしてそんなことを聞くんだ? 三条には関係ない話だろう」


三条「よかったら作ってあげようか」


蓮杖「は?」


三条「だから私が蓮杖くんの家に行って夕食作ってあげようかって言っているのよ」


蓮杖「いやなんでそうなるんだよ!」


三条「だって作業を手伝ってもらってなにもお礼しないって気分悪いし。さっきのあなたの食事事情を聞いたらねえ……」


蓮杖「憐れみを含んだ目で俺を見るなよ!」


三条「なのでお礼の意味も含めて私が作ります」


蓮杖「ええ……」


三条「普通そこは嫌がるんじゃなくて喜ぶところじゃない? クラスに人気者の美少女から家に来て料理をしてあげるなんて言われたら大抵の男子は歓喜するわよ」


蓮杖「誰もがそういう人間じゃないってことだ。正直今のご時世異性と二人きりの状況なんて遠慮したいぞ。誰も見ていないからセクハラされたって嘘つかれても抵抗できないし」


三条「蓮杖くんは私がそんなことをするような人に見えたの?」


蓮杖「……いいや、三条はそれ以前に利益がない他人とは社交辞令で済ませて深く立ち入らない人間に見える。性別問わずな」


三条「あら、この短時間でよく人を見ているじゃない。正解よ。私だってあなたが信頼出来そうにない人間ならこんな申し出しないでさっさと帰ってたわよ。あなただってそこは分かってるでしょう。だから遠慮なく好意に甘えてもらっていいわ」


蓮杖「……三条って以外と強情だよな」


三条「そりゃ、いい子なだけじゃ世の中生きていけないもの。ある程度の押しの強さは必要なものだわ」


蓮杖「……はあ、分かった。断っても恩を返さないと気が済まないとか言って押しかけてきそうだからおとなしく申し出を受けることにしますよ」


三条「決まりね。そうと決まれば早く蓮杖くんの家に向かいましょう」

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