この気遣いがわたくしよ。

スカイスターズとの初戦は、相手のミスも絡んだりして7点リードで終盤へ。こういうワンサイドゲームになると、投げっぷりだけは1流である連城君の得意な展開。


ガンガンストライク先行で攻めてガンガン3球勝負を仕掛けていく。無駄なランナーは出さない。




最終回に、平柳君、佐藤さんに連続ホームランを浴びる場面はあったものの、9回108球の完投で去年を上回る今シーズン8勝目(13敗)を挙げた。






2戦目。最下位に連敗はまずいとスカイスターズはさらに必死になったこの試合は初回から3番バッターにスクイズを指示する場面もあるなど、なりふり構ってはいられない戦い方をしてきた。




うちの先発碧山君も、連城君に続けと8回まで3失点で頑張っていたが、ビクトリーズは僅か3安打。俺のタイムリー内野安打だけでは勝てるはずもなく、1ー3でこの試合は落としてしまった。






3戦目。スカイスターズは15年目37歳。ビクトリーズは16年目35歳というベテラン右腕の投げ合いで始まった試合だったが、うちの広元さんが2回までに5失点を喫してノックアウトとなる予期せぬ事態となってしまった。





初回、4番に起用されたヘンダーソンの3ランホームランがあまりにも痛かった。






せっかく変化球で2ストライクを奪ったところだったのに、様子見で投げたアウトコースのストレート。


それがはっきりとしたボール球にならず、ヘンダーソンに合わせられた。軽く流し打ちしただけのバッティングに見えたが、ヘンダーソンはメジャーでもクリンアップを務めたこともあるバッターですから、パワーはやっぱりある。




追いかける俺の頭上を舞ったボールは、レフトポールを直撃するホームランになってしまったのだ。




そんな1打もあり、早い回で広元さんはマウンドを降りたが、昨日一昨日の2試合は、連城君と碧山君が長いイニングを投げてくれましたから、シーズン終盤を迎える中、リリーフ陣はわりと元気だった。




3回、4回を高久という右ピッチャー。5回、二浦という左。6回を竹倉。7回奥田さんと繋ぐビクトリーズ。



攻撃陣はその間に、3回から6回まで1点ずつをコツコツ返し、1点を追う8回表。1アウトランナーなしとなって俺に打順が回ってきた。





スカイスターズのセットアッパーからバチコン。真ん中低めの変化球を引き付けて右方向へ。ファースト、ヘンダーソンがジャンプするその上を越えて、打球はライト線上で跳ねた。




俺は打球がライトフェンスまで転がるのを見ながら1塁を回り、ゆっくりと2塁にベースにご到着した。








自分でも満足がいくバッティングに胸の前に握った拳を噛み締めるようにして細かく前後に動かすガッツポーズ。



アームガードやフットガードを外すこともなく、ベンチから代走の杉井君が物凄いスピードで飛び出してきた。



「さすがやりまんなあ。お手本になりますわ」



「なあに。昨日の君のホームランに比べたらまだまださ」




平柳君にそんなセリフを吐きながら、すれ違う杉井君とタッチし、俺はベンチに向かう。




「新井さーん、ナイスバッティングー!」




「新井、いいぞー!」




「明日も頼むわよー!」




水道橋ドームに駆けつけた少ないビクトリーズファンが俺に歓声と拍手を送る。





俺はバッティンググローブを外しながら、ふーっと大きく息をつく。



リーグも終盤戦。格上と言われている強豪クラブに対し、攻守に渡って後半40分過ぎまで精力的にハードワークしながら、1つフォワードのゴールをアシストした司令塔のサッカー選手のような立ち振舞い。


最後の交代カードで守備的ミッドフィルダーと代わってピッチを後にする。



労をねぎらうように、名前をコールしてくれるサポーターに、顔より高く挙げた両手で小さく叩いた拍手を返しながら、たっぷりと時間をかけてファウルグラウンドからベンチに下がっていく。




そうやってモタモタやるのも、気持ちも動作も焦り気味でバッティングの調子を落としているキャプテンへのメッセージですから。




そこまでやってこその4割打者ですわね。

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