手は緩めないものですわ!
真ん中低めのストレート。振り下ろしたバットのタイミングがジャスト。最後は左腕1本で振り切ったフォロースルーから察することが出来る通りに、本人も相当な手応えがあったみたい。
バットを地面に滑らせるようにしながら打球を見上げつつ1塁に走り出す並木君。
打球がギュイーンとレフト後方に伸びていき、ビクトリーズ応援団のちょうど真ん中辺り。
いかにも団長的な男性が素手でボールをキャッチして、トランペットを持った仲間と一緒に飛びはねながら大喜び。
ビクトリーズファン達による、ドワアアァァッッーー!!という歓声よりも、スカイスターズファン達のどっと出たため息の方がよく聞こえた。
8番ナミッキーの今シーズン第4号の3ランホームランで6ー0。
Aクラス返り咲きへ走り出したスカイスターズの出鼻と心をボキッと折るにはあまりにも十分すぎる1回表の攻撃となった。
1回裏。スカイスターズの攻撃。最近打撃はようやく好調。打率3割復帰も目の前のところまできている平柳君と度重なる故障からようやく万全の状態まで回復してきた佐藤さんの1、2番。
平柳君にフォアボールを与え、佐藤さんにライト前ヒットを食らって1、3塁。犠牲フライで1点失った連城君であったが、その後は思い切りのいいピッチングが光り、2回3回は0で抑えた。
4回表。早くも3巡目となるビクトリーズの攻撃。
カキッ!!
柴ちゃまがいい当たり。インコースの変化球を上手く捌いてライト前ヒット。
そして俺に対してもインコース攻めを選択したスカイスターズバッテリーだったが、俺も右方向。詰まりながらも、広く空いた1、2塁間に打ち返した。
かなり体を開き気味にしながら、右の手の平でボールを掴みにいくような勢いで無理ぐり押っつけたわりにはわりといい打球が飛び、緩いバウンドのボールが1、2塁に転がる。
ライト前まで達することのないよわよわな打球。ゲッツーシフトを取っていたセカンドが打球に回り込み、スライディングをしながら素手でボールを掴むようなそんな打球でも、ヒットはヒットである。
先頭打者だったの連城君のピッチャーゴロからの1、2番連打で迎えたチャンス。スカイスターズバッテリーに焦りが出たのが厳しめに投げた阿久津さんへの初球。
その変化球がワンバウンドし、後逸。ビクトリーズは労せずして2、3塁にランナーを進めた。
阿久津さんはその後ストレートに若干詰まらされての浅いレフトフライに倒れた。俊足の柴ちゃんでもタッチアップを試みることは出来ずに2アウト2、3塁。
そんな場面で4番というところだが、今日の赤ちゃんは落ち着いている。きわどいコースをきっちりと見極めてフォアボールを選んだ。
初回と似たシチュエーション。1、2番がチャンスを作り、4番がフォアボールで繋いで満塁にして5番川田ちゃん。
第1打席はレフトへ先制ナイスヒットでしたから、本人はかなりいい気分で自信を持って打席に入っていることでしょう。
反対にスカイスターズ側は絶対に打たせてはいけない場面。同じ形でまた同じように打たれてしまっては、もうこの試合は終わってしまう。
ピッチャーは代わっているが、アウトコースを上手く流し打ちされていますから、満塁故の怖さがあるとはいえ、インコースを突いていく必要がある場面。
キャッチャーはピッチャーを信頼してインコースギリギリに要求し、ピッチャーもそれに応えて速いボールをしっかり投げ込んだ。
果敢にスイングしていった川田ちゃん。打球は少し差し込まれた格好になりながらファーストの正面へ。
これをファーストの助っ人マンが横に大きく弾いた。
打った川田ちゃん。打ち取ったピッチャー、打球を弾いたファースト。3人がそれぞれ頭の上にビックリマークを出しながら懸命のダッシュを開始した。
ファウルグラウンドに転がる打球はファーストが拾う。ピッチャーがベースカバーに入りながらボールを呼ぶ。
川田ちゃんがベースに向かって走り込む。
膝を着きながらの助っ人マンのスナップスローがベース上で重なった川田ちゃんとピッチャーの間に入る形になり、またボールがこぼれた。
俺はそれを見ながらそのままホームに突入した。
「あっと!またボールがこぼれた! 2塁ランナーの新井が3塁を回っている!セカンドがカバーに入って、バックホーム! ヘッドスライディングでタッチは間に合いません!
ビクトリーズ2点追加! 8ー1! 記録はファースト、ヘンダーソンのエラーとなりました! いやー、ファーストゴロでチェンジかと思いましたが、スカイスターズにはあまりにも痛い失策になってしまいました」
「ファースト正面の普通のゴロですから、何も難しいことはないんですけどね。バッターランナーも足の速い選手ではありませんから、後ろに1歩下がってしっかり捕球してベースを踏んでアウトになるところでしたけど。ちょうどハーフバウンドになる難しいところでクラブを出す形になりしたから。
ちょっとね。守備があまり得意ではないとはいえ、準備不足と言われてしまっても仕方ないプレーになってしまいましたよね。
それでも、2塁にいたのは新井選手ですか。もしかしたら何か起こるかもしれない可能性を見て緩めることなく全力で走っていたのは立派ですよね」
「スカイスターズとしては、中盤に反撃を目論むところでの痛い失点になってしまいました。6番桃白が打ちましてセンターに上がりましたが、伸びはありません。佐藤が落下点掴みまして、3アウトチェンジです」
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