第39話

 俺とカンタは、二手に分かれて纏愛を探すことにした。彼女が家で喧嘩した後によく行く場所などを、カンタが見に行ってくれている。


 俺は、纏愛が行きそうな、別の場所を探すことにした。


 しかし、俺は彼女とほとんど一緒に外へ出たことがない。外で居合わせたとしたら、偶然に校長とのパパ活騒動があったカラオケ屋さん。だが、カラオケ屋さんで話した後に飛び出し、同じ店に戻ってくるとは到底思えなかった。


 纏愛なら、纏愛なら。


 必死に彼女の思考を読んで、大雨の中を駆け出していく。


 辛いとき、悲しいとき、彼女ならどこへ向かうか。


 ケータイは繋がったと言っていた。そこまで遠くには行っていないはず。となると、俺が思いつく彼女の行先は、一つしか思いつかなかった。


 そこにいてくれればいいが……。

 不安と焦燥に駆られつつ、俺はその行く先へと目指していく。



 ガラガラ、と音がする。


 普段、ここを出るときは、戸締りをしているはずだ。それが開いている、ということはつまり、そういうことなのだろう。


 荒くなる呼吸を整えつつ、俺は中へと進んでいく。


 ホワイトボードを通り抜け、蛇口が幾つも並んでいる水道の右側――準備室の入口の前で、俺は立ち止まった。


 彼女の居場所は、ここしかない。


 そう踏んで、この学校まで戻ってきたのだ。


 そして、理科室のカギが開いていた。


 これは、誰かが理科室を使っている証拠になる。


 しかし、今日の部活動は休みにしてある。梅雨の時期に実験をしても、良い結果は得られない。


 では、誰がこの理科室を使っているのか。


 ドアノブを捻り、中へと入る。


 ――答えは、明白だった。


「……纏愛」


 そこには、奥の方で座り込む、纏愛の姿があった。

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