クライマックス

第32話

 ザァ、と雨の音。静かになったり、騒がしくなったり。

 梅雨はなんだか気分が沈む。太陽が出てこないからか、暗い日々が続く。少し歩いたところにコンビニがあっても、出かけようと思えなくなってしまう。


 気分が下がる、下がる。

 雨のせいなのか、どうなのかはわからないが――。


 ここ数日、纏愛が理科室に顔を出さなくなっていた。


 一応、学校には出席しているため、何か大事が起きたということでは無いのは、確認できた。


 しかし、話しかけようとしても、彼女の方から避けられてしまう。


 念のため、カンタにも連絡したが、「放っておいてあげて」の一言しか言われない。家族間で何かあったのか、と聞いても、返事は変わらず。


 ではなぜ俺を避けるのだろうか。


 纏愛が理科室に足を運ばなくなったのは、辞書を買ったという報告を受けた次の日からだ。俺が何かをしたというわけではないと思いたいが、本人に聞くことができない。


 いや、デリカシーの無さについて触れたは触れたが……あれで俺を嫌ったというのも、少し考え難い。


 当初の目的――愛される人になりたい。

 そのために、人を知ることを始めた。そして、言葉を学ぶことも始めた。だが、今はこれらが進んでいない。何故なら最初に知ろうとした相手が俺であり、その俺を避けているのだから。


 おそらく、意図的に、彼女は俺を避けている。そんな気がする。

 だが、その意図がわからない。


 時間が解決してくれるのであればいいが、そんなモタモタしていていいのかと自分に問えば、答えはノーだった。


 では、どうするか……。

 そんなことを考えていた、ある日。


 纏愛から、メッセージが来た。


『ミッチー。話があるんだけど』

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