第51話「ボクといっしょ」
第五十一話『ボクといっしょ』
秋、イズアルナーギの創世が始まって三ヵ月、幼神の周囲は天地
神域では十年ほど経過していたが、イズアルナーギはその
いや、九割は砂遊びと昆虫採集だったかもしれない、残りの一割のうち八分でオマーンとのオママゴトもしっかりと
残る二分の半分は神々の虐殺や巨大戦艦造りに没頭していた。実質一ヵ月と少しだけ本気を出したイズアルナーギの創世に対する熱意は相当なモノだったと言っても過言ではない。
熱意が凄すぎて途中で『何かめんどくさい……』と思ったようだが、肉塊と母サテンの叱咤激励や甘い誘惑(楽しい事が待ってるよっ的な)によって創世は成った。
現在は『新世界』に自分の神気や生体燃料を垂れ流す日々を送っており、ムズムズから解放された快適な生活を楽しんでいる。
しかし、最近イラッとする出来事が起きた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
エイフルニア大陸の統一に向けて邁進中の息子と『バ・アオア・クー』の城にて親子水入らずで食事を採っていたところ、またいつもの『覗き見』を察知した。
しかし今回は相手の権能だろうか、その居場所を掴み損ねる。だが幸いな事に覗き見犯の名は把握出来た。
父のイライラを心配するシャズナブルが『何か手伝える事は御座いませんか』と心配そうに問う。
イズアルナーギはプンプン丸なので冷静な思考が出来なかったが、肉塊がシャズナブルに告げた。
『狩猟神ナキリメメイの加護を持つ者を集めよ』
シャズナブルは肉塊パパの言葉通りに眷属達へ
支配領域内に居た狩猟神の加護持ちはその日のうちに『バ・アオア・クー』の地下ダンジョンへ集められた。すべて人畜だ。
集められた人間や獣人達を肉塊が素早く調査。その脳内も調べ上げて記憶も読み取る。
そして目当ての人物を見付ける。
肉塊はその人物をイズアルナーギの前に転移させた。
転移させられたのは男、かつてシャズナブルに敗北した勇者の成れの果て、魔皇帝によって物言わぬゾンビにされた人間だった。
しかし、その勇者ゾンビ自体に用は無い。
肉塊が欲したのは狩猟神が信徒に与えた収納系スキル所持者と、狩猟神が信徒に与えた収納魔道具の所持者だ。
そして、このゾンビ勇者はスキルと魔道具の両方を所持していた。ゾンビとなった勇者にスキルは扱えないが、勇者の所持品である神製魔道具は使用可能。
肉塊はシャズナブルに命じてゾンビ勇者の所持品を回収させた。
薄汚い腰袋を回収して来た眷属からそれを受け取ったシャズナブルは、魔力で腰袋を洗浄してイズアルナーギに手渡す。
その間、イズアルナーギはゾンビの瞳を見つめていた。瞳孔が開ききった不可触神は目を逸らさない。
ミエテイルゾ……
遥か彼方の知らない神域で悲鳴が上がる。
イズアルナーギはゾンビの濁った瞳を見つめつつ、受け取った腰袋の口を広げて右手を腰袋に突っ込んだ。
豊穣神パイエを捕まえた方法と同じである。
怒りで存在感を増していく魔皇帝の父に絶望を覚える人畜の群れ。その怒れる神君イズアルナーギが腰袋に突っ込んだ右手を勢いよく引き抜く。
神君の小さな右手には驚愕の表情を浮かべるワイルドなイケメンの金髪がモッサリ掴まれている。
頭髪を鷲掴みされたイケメンの姿格好から『あれは狩猟神様では……』と、狩猟神の加護持ちである人畜達は気付く。
当然、その狩猟神を小さな右手一つで吊り上げているイズアルナーギにド肝を抜かれた。小さな体でどうやって偉丈夫を吊っているのか、意味も分からず何度も目を擦る人畜達。
人畜の困惑を
神気が極端に薄い下界、その下界の中でも更に神気が薄いダンジョン内に何の対策も無く強制的に
だが、イズアルナーギにそんな事は関係無い、気を遣う必要も無ければ延命措置を施す必要も無い。
そもそも、空間を支配する権能により自分の神域から
神気不足でもがき苦しむ狩猟神ナキリメメイをテキトーにシバキ上げ、イズアルナーギはボロ雑巾になった狩猟神をシャズナブルに放った。
瀕死の狩猟神を受け取ったシャズナブルが真祖吸血鬼の牙を剥き、涙で
見る見るうちに
親子二代にわたる神殺しの達成にシャズナブルも御満悦。
狩猟神の神格を引き継ぎ、その神気を吸収したシャズナブルが神へ至る。
息子の昇華を確認する事無く、イズアルナーギは怒りに任せて狩猟神の神域へ乗り込んでいた。
視界に入った狩猟神の眷属を手当たり次第に滅ぼし、滅ぼし切ったら隣の神域へ転移して再度暴れ回る。
エイフルニア大陸が在る惑星を統べる神界『浅部第98宇宙域』でイズアルナーギが暴れるのは初めて。
その残虐性と非常識で理不尽な権能、手も足も出ない圧倒的な強さを神々に見せつけ、イズアルナーギの浅部第98宇宙域デビューは幕を閉じる。
そして、不可触神イズアルナーギの名が『全宇宙域』に轟いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
秋も深まり、エイフルニア大陸での昆虫採集も難しくなってきた頃。
ナマイキな神々を滅ぼしまくって平穏な日々を送っていたある日。
相変わらず新世界に神気を送り続けながら、イズアルナーギはエイフルニア大陸北部へ昆虫採集に来ていた。
テクテク、トコトコ、乾いた大地を歩く幼神。
支配領域を広げながら珍しい蟲を探す。
「んゅ?」
領域に高魔力の蟲が数匹入った。
こんな蟲さんは初めて見るぞ?
その蟲達はどうやら自分を見ている。
イズアルナーギは一番近くに居た蟲の前へ転移。
地面に居る大きな
掴まれた蟻は大人しく触覚を動かしながらイズアルナーギを見ていた。
イズアルナーギはコテンと小首を傾げる。
初めて出会った、初めて知った、初めて……初めて……
イズアルナーギは蟻に向かって声を掛ける。
「いっしょ?」
蟻の『向こう側』に居る
『『うむ、一緒』』
『『同族よ、参れ』』
『ちょ、ちょっと待ちなさいアートマンっ!! あぁぁぁ~』
イズアルナーギ、数え二歳。
【究極たる根源にして
不可触種 つんくん @akatsu
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