第49話「創世のイズアルナーギ」





 第四十九話『創世のイズアルナーギ』





 ムズムズ、ムズムズ、今回のムズムズは手強い。


 ただ『オモチャ』を見せてあげただけなのに、イズアルナーギの体に軽く二十億を超える地球人の信仰心が流れ込んでくる。


 神々が絶望する程度には無駄に神格も上がってしまった。


 肉塊的には計算通りだが、イズアルナーギ的には勘弁して欲しい状況だ。


 イズアルナーギは超巨大航宙要塞『です☆すた』を神域に戻し、既に色々と手遅れだが人々の己に対する信仰心を下げようと試みる。


 空に浮かぶ巨大な物体を世界中が注視する中、それを一瞬で消してしまうアホなイズアルナーギ。当然のように世界は大騒ぎになり、人々に『神』の存在を強く認識させる結果になってしまう。


 強まる信仰心、激しくなるムズムズ、イズアルナーギの癇癪かんしゃく発動まで五秒前っ!!


 イズアルナーギの体内で暴れる神気、それを落ち着かせる為に肉塊は半身へ想いを伝えた。



『もっと大きいヤツを造ろう』


「ッッ!!」


『アレは所詮マネゴトの産物』


「ッッ!!」


『パクリ、カッコ良くない』


「ッッッ!!!!!!」



 愕然とするイズアルナーギ。

 何と言う事だ、アレはパクリ作品でしかなかった!!


 よく考えれば肉塊の言う通りでショックを受けるイズアルナーギ。自分はマネしっ子だったのかっ!!


 何だか恥ずかしいので母サテンの許へ走りその胸に顔をうずめた。


 急に甘えて来た愛息を抱きしめ、その背中を優しく撫でるサテン。肉塊が母に事情を説明する。


 ふむふむ、真剣な面持おももちで頷くサテン。肉塊から話を聞き終えたサテンは『ムズムズ』って何だろう? と思った。


 取り敢えず、今の息子は頑張って作ったオモチャがパクリだと知り心に深い傷を負ったようなので、母としてそれを癒してあげねばならないっ!!


 サテンは考える、息子が世間に自慢出来る作品とは何だろうか?


 しかし、オリジナル作品などそう簡単に考え付かない。

 だからと言ってテキトーな事を言うわけにもいかない。

 ついでにムズムズも解消出来ればなお良しっ!!


 サテンは考えた、色々考えた、考えて考えて……



「全部初めから創っちゃおう」


「……んゅ?……なぁーっ!!」

『……ッッ!!』



 母の一言に小首を傾げたイズアルナーギだったが、その真意を知ると可愛らしい奇声を上げた。肉塊も母の考えに驚愕する。


 母は言った、創世せよと。

 天地開闢かいびゃくから始めよと。

 イズアルナーギがパイオニアになるべしと。


 つまりっ、最初に創ればパクリじゃないじゃん、と。


 まさに目から鱗っ!!

 子を想う母の金言っ!!


 一つの世界を創るのにどれほどの神気や生体燃料を消費するのだろうか、ムズムズしているヒマなど無いっ!!


 イズアルナーギは興奮して母のほっぺをペチペチ叩いた。



「う、うなーっ!!」


「あいたっ、いたたたっ、アハハ、痛い痛い」



 イズアルナーギは椅子に座る母の膝から飛び降りた。

 ママのほっぺを叩いてる場合じゃねぇっ!!


 サテンの向かいに座って紅茶を飲む嫁オマーンを無視してイズアルナーギは転移。行き先など告げないクズ亭主ムーブっ!!


 オマーンは澄まし顔だが心はズタボロだっ!!




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 イズアルナーギは神域に造った『秘密基地(バレバレ)』に転移し、大きなカブトムシ的なクッションに座って黙考した。


 黙考に入って数秒で眠くなったが肉塊に起こされた。


 肉塊はオリジナルについての認識をイズアルナーギとすり合わせた。どこからがパクリでどれがオリジナルと言えるのか、両者の認識にはズレが有る。


 すり合わせた結果……


 コネたやつはオリジナル、と言う共通認識を確認出来た。

 即ち、『混ぜれば大体オッケー』だと言う事になった。


 取り敢えず天地開闢の基礎となる惑星創造から始める、大きさは地球と同じくらいで良いだろう。


 惑星の素材もコネて造ればイケそうだ、ガワだけ有れば良くね? 地核って必要ですか?


 イズアルナーギと肉塊は激論を交わした的な感じの雰囲気を出しつつ、壮大な計画を練り上げたような気がしないでもない風なニュアンスを含ませながら秘密基地を後にした。



 大人の階段をまた一歩昇ってしまった感じのイズアルナーギは、秘密基地の出口で待ち構えていたオマーンに抱っこされると、新居である『イザーク宮殿』にお持ち帰りされた。


 お持ち帰りされる途中でオマーンとお話しするイズアルナーギ、大人の男なのでカッコ良く天地開闢計画を教えてあげた。


 驚愕するオマーンの表情を見た大人の男イズアルナーギは、自分と肉塊の正しさを確信してご満悦。宮殿到着後は素直にベッドイン。


 大人の階段を昇ったと言うのにお昼寝の時間がきてしまったイズアルナーギ、ムズムズで眠れないのでい寝するオマーンに神気を流し込みながら寝た。



「ま、待てイザーク、入らない、これ以上はイッぐぅぅっ……」



 容赦の無い夫のDVに涙を流すオマーン。


 全身を神気でバキバキに甚振いたぶられ、吸血鬼とは名ばかりの『何かスゴイ生物』にされてしまう闇の女王。


 何度赦しを乞うても止まらない神気DV、義母サテンも味わったと言う無慈悲なドメスティック・バイオレンス……


 そろそろアヘ顔ダブルピース状態になりそうなオマーンは薄れゆく意識の中で思う――



――創世第一号は、このオマーン、だっ……



 不可触神の神気を注入されて変質したオマーンは、果たしてコネられたと言えるのか疑問が残るが、いずれ十中八九コネられるので『混ぜ物』としてのオリジナリティーはクリア出来るだろう。


 オマーンの『変な生物』としてのオリジナリティーは既にクリア済みだ。新種の上に同種族が居ない点はオリジナル性に溢れている。


 最初の創世関連作品が正妻と言うイキ男気おとこぎを発揮するイズアルナーギ。



 イズアルナーギの創世記は間違いなく順調な第一歩を踏み出した。








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