第47話「月が綺麗ですね……っ!?」
第四十七話『月が綺麗ですね……っ!?』
少ない。
肉塊はそう思った。
イズアルナーギが欲する『超巨大航宙要塞』を完成させるにはまだ金属が足りない。生産量が少ない。
肉塊は考える、ダンジョンの金属類生産量を上げる為の生体燃料も足りない。人々から得られる生体燃料が少ない。
ダンジョンに飼っている『人畜』は繁殖が済んでおらず搾取体制が貧弱。
侵略先の被征服民は信者にする方向で占領政策を敷いている、
三惑星のどの支配地域にも人畜化出来る存在が足りない。
肉塊は考える、
この問題を早急に解決しなければ、イズアルナーギが
『足りないなら奪う』を簡単に選択するのがイズアルナーギだ。ダンジョンからの生産に頼れないと知れば、次の瞬間には惑星に存在する鉱石を根こそぎ神域へ転送するだろう。
大地が陥没しようが山脈が崩壊しようが気にせず実行するだろう。
奪った鉱石を神域へ転送となれば惑星の質量もガクンと減る。
やろうと思えば地上の金属全てを神域へ転送出来る。
イズアルナーギは加減を知らない、気にしない。
歴史的価値の有る美しい貴金属、思い出の品、形見、何でも良い、金属なら全て奪う。
自分が関心有る者以外の所有物は
飛行中の航空機、走行中の自動車、航海中のフェリー、乗員の事など気にせず金属を奪う。
癇癪を起したイズアルナーギは必ず奪う。
しかしそれはイズアルナーギの為にはならない。
現在所有している人畜で直径3,500kmの金属製球体を造る、その為には……
肉塊は自分とイズアルナーギが得た領域内の生物を確認した。
イケる。
イズアルナーギは肉塊の考えを把握し実行に移した。
半身の癇癪を回避した肉塊はコスモの乳を吸いながら眠りに就く。
「うふふふ~、殿下はオネムでちゅか~、可愛いでちゅねぇ~」
三惑星の崩壊を阻止した赤ん坊の身を抱き、授乳させつつ優しく揺らしながら、コスモは故郷の子守唄を口ずさんだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
多産、頑強、その二つの条件だけを意識してコネる。
イズアルナーギはコネまくっていた。
肉塊が考えた生体燃料搾取量増加の為にコネまくった。
ただの人間や野生動物からの搾取量は知れている、しかし、コネられた存在からの搾取量はそれらを大幅に上回る。
基本的に、イズアルナーギがコネた人外は戦争の前線へ送られる。だが、戦略上不利益が生じる為、戦争用に送られた人外からは生体燃料の搾取は止めていた。
イズアルナーギも肉塊も、わざわざ搾取の為だけに人畜を強化させる必要を感じなかった。しかし、ダンジョンでの生産量を増やす為にそれが必要となれば話は別だ。
乳牛のように品種改良で目的の物がより多く手に入るのなら、イズアルナーギは躊躇無く実行する。
所有する人畜は勿論のこと、戦争捕虜や犯罪者は全てコネる事にした。
多産・頑強、これらを満たすのは昆虫しかないっ!!
寿命などどうとでもなる、多くの卵を産み丈夫な体を持つ昆虫こそが至高、人間とのコネ甲斐もある、コネリストの腕の見せ所だっ!!
コネマスターを自負するイズアルナーギは神域に『コネ工房』を創ってコネ明かした。
肉塊が転送して来る人間を瞬時にコネて出荷。
まさに雨の日も風の日も休まず……的な感じで頑張った。
神域に雨の日は無いし風の日も無いし病気にもならないし休憩は八時間取るしオマーンと遊ぶが、頑張って飽きずにコネた。
肉塊から『マンボウは三億個の卵を産む』と言われた時は心が揺れた。昆虫を裏切れない自分が居る、ごめんねマンボウ、君は要らない子なんだっ!!
イズアルナーギは断腸の思いで誘惑を
でも一回だけマンボウとコネた。誘惑に勝てなかった。
偶然にもそのコネられた人間はシャズナブルの母親『マジク・ソヴィッチ』だった。その事実を知る者は査定した肉塊だけ、イズアルナーギは『素体』に興味など無い。ちなみに産婆のババチョップはオマーンのエサになって死んでいる。
マンボウ女となったマジクは優秀な『苗床』として活躍する事になった。
イズアルナーギがコネた人外は種族の壁を越えて繁殖出来る、ゴキブリ男の子種でもマンボウ女に卵を産ませる事は可能だ。
だがしかしっ、イズアルナーギはマンボウを切り捨てたっ!!
三億個の卵は魅力的だがカッコ良くないからだっ!!
出来れば甲蟲で統一したいが我慢だっ!!
我慢出来ませんでした。
クワガタとカブトムシの魅力には勝てませんでした。
コネコネの中盤からは日本産の甲虫とエイフルニア産の甲蟲がメインになってしまった。故郷惑星の甲虫は小さいので却下だ。
イズアルナーギの頑張りで金属類生産量は大幅に増加した。
そして……
「これはまた……」
神域に浮かぶ『月』を見上げるオマーンは感嘆する。
その豊満な胸に抱く可愛い夫はドヤ顔だ。
「です☆すた」
「アレの名か?」
「ん」
超巨大航宙要塞『です☆すた』が完成した。
イズアルナーギはそのオモチャを地球の人々に見せてやりたくてウズウズしている。地球の衛星『月』の隣に並べたくてしょうがない。
あの映画に出たヤツよりボクが創ったヤツの方が大きいんだぞと教えてあげたいっ!!
主君の思惑を察した黒騎士アルトゥイは思った、『やめて差し上げて』と、『お年寄りがビックリするから』と。
だが残念、アルトゥイの切なる願いは届かないっ!!
八月の暑い満月の夜、二つの丸い月が綺麗に並んだ。
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