第39話「余は二刀流である」





 第三十九話『余は二刀流である』





 王国歴646年、春、ポアティエ王国では王太孫イズアルナーギの誕生祭でにぎわっていた。


 王太孫誕生祭は春の始まりから三ヵ月続けるようだ。セゾン三世のイズアルナーギに対する溺愛ぶりがうかがえる。


 イザーク教徒でごった返す王都の大教会、その大教会の向かいに出来たイズアルナーギ神道の『イザーク大社』も大賑わい。


 王都中央道りに並ぶ日本式の露店には長蛇の列。

 露店の簡単な『賭け事』に子供達から笑いが絶えない。


 イズアルナーギが贈ってくれた『288インチ神気ディスプレイ』に映る祭りの光景を眺めつつ、セゾン三世は愛妻オズゥの右乳にイタズラしながら話し掛けた。



「イザークン・ナンブM60を使った射的か……」


「陸海軍憲兵と警察官の標準装備ですねぇ、いやン、陛下のえっち……」


「あれは実弾を使っているのか……的が貫通したんだが」


「的以外は貫通出来ない安全設計だそうです、いやン、陛下のえっち……」


「然様か、ならば問題あるま――ッッ、ふむ……」




「ん、じぃじ」



 セゾン三世が話を切り上げ、愛妻に過激なセクハラをかまそうとしていた矢先、彼は王太孫イズアルナーギによってお庭に招かれた。


 急な招待は毎度の事、少し驚くが怒りは無い。

 指を咥えて自分を見つめる可愛い孫に笑みを見せる。



「さて、今日はじぃじに何用かイザーク?」


「ん~……んっ」


「ふむふむ……なっ、コレはっ!!」



 説明が面倒臭いイズアルナーギは、セゾン三世に自分の考えを映像で脳に送った。


 その衝撃映像を見せられたセゾン三世は絶句。

 しばし黙考し、愛孫に一つお願いしてみた。



「イザーク、それはアーライにもヤれるか?」


「よゆう」


「余の前にアーライで実験してくれんかな?」


「ん」



 外道、外道の祖父も外道っ!!


 とんでもないお願いをする祖父に『余裕』だと返答したイズアルナーギは、早速アーライをお庭に招いた。



「……陛下、殿下、うそでしょ……」



 全裸の宰相アーライが両膝を突いた姿勢で腰を振っていた。


 周囲の侍女達から軽蔑の視線を浴びるアーライ。

 衆人環視の中でそびえ立つアーライのアーライ。


 何故か大きくなるアーライのアーライに侍女達は声も出ない。


 どうやら、アーライは自室で女官とイケナイ事をしていたようだ。


 腹筋が崩壊しそうなほど腹に力を入れ笑いに耐えつつ、セゾン三世はこの春一番の鋭い視線をアーライに向けた。



「アーライ、昼前から何をしておる」


「え、いや、休日ですので……」


「黙れ勃起宰相っ!! イザークに粗末な物を見せるなっ!!」


「クッ、陛下より大きいですが、申し訳御座いませんっ!!」


「余は悲しいぞ粗チン宰相アーライ、この慶事中にセクロス三昧とは」


「クッ、陛下よりビッグで詫びの申し上げようも御座いませんっ!!」


「……イザーク、このミニチン宰相を頼む」


「ん」



 自分の大きさを自慢する宰相にいきどおりを感じたセゾン三世が、その傲慢なペニスに鉄槌を降すべく愛孫に頭を下げた。


 イズアルナーギが左手にサソリ型の蟲を召喚。

 その巨大な甲蟲を見たアーライが失禁。侍女がキレる。



「イ、イザーク殿下、嘘ですよね、この忠臣アーライをコネコネしませんよね?」


「んゅ? おちんちん、つよくなる」


「なんっ、です、と……」



 驚愕するアーライが不可触神の温かい光に包まれた。

 イズアルナーギの左手から甲蟲が消える。



「ちょ、殿下、殿下っ、何ですコレ、待って、ちょ、アーーッ!!」



 強烈な光に包まれた鉄血宰相アーライ。

 幼馴染アーライを見守る腹筋崩壊直前のセゾン三世。


 イザーク殿下見守り隊の侍女軍団が即座にイズアルナーギの周囲を固め、視力を奪う強い光から主君を護った。


 何だ何だと神域住民達が遠目から異様な光景を見守る。


 騒ぎに気付いたオマーンが可愛い夫をすくい上げ抱きしめた。闇の女王の冷たい眼光がアーライを射抜く。



「俗物めが……」



 オマーンの呟きから一拍、アーライを包む光が収まり、その体から湯気を立ち昇らせ片膝を突いたアーライが『デデンデンデデン』と口ずさむセゾン三世のバックミュージック入りで姿を現した。


 ゆっくりと立ち上がるポアティエ王国宰相アーライ。


 その威容に周囲が息を呑む、


 鍛え上げられた両腕、分厚い胸板、綺麗に割れた腹筋、パツンパツンのケツ、盛り上がった大腿四頭筋が鋼の太ももの魅力を引き立てる。


 そして何より、その天を貫く男のシンボル……

 もはや人間のソレではない、馬、そう、馬である。


 しかも、不可触神イチ押しの連射性能搭載っ、ピュピュピュ!!


 サソリ型甲蟲の毒液攻撃を見たイズアルナーギと肉塊は、ほんの少し夜の営みに不満をつのらせるオズゥの為だけに、この『チン強化』をひらめいたと言っても過言ではない。



 今年で五十一歳、栗毛碧眼の王国宰相、冷徹な優男として知られたアーライは、チョイ悪な細マッチョ巨根宰相に変貌した。



「ば、か、な……」



 セゾン三世は愕然とした。

 デカい、デカすぎる、アレには勝てないっ!!

 チョイ悪な細マッチョ姿にも嫉妬で狂いそうだっ!!


 新妻に抱かれて眠そうな愛孫に急いで駆け寄るセゾン三世。


 血走った目で走り寄るオッサンに機嫌が悪くなるオマーン。

 舌打ちし、体の向きを変えて可愛い夫を王の視線から外す。


 セゾン三世は王太孫妃の機嫌に構っている場合ではなかった。



「イザークの美しいきさきよ、スマンがイザークと話をさせてくれ」


「うむ、良かろうっ!!」



 オマーンは神妙に頷いて体の向きを戻す。


 イザークの美しい妃……素晴らしい言葉だ、オマーンは王を見直した。俗物ではなかった事にしてあげた。



「イザークよ、次が本番だな? そうだろう? アレより凄いヤツで頼むぞ?」


「んゅ? ん~……二ひき」


「え」



 セゾン三世は光に包まれた。


 サソリ型甲蟲と、もう一匹、日本が誇るオオスズメバチと共に、セゾン三世は光に包まれた。




 その夜、第六使徒オズゥは人生初の連続絶頂を体験した。


 ポアティエ王夫妻は可愛い孫に深く感謝したと言う。









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