第6話 クリスマスイブ

「あれ!?今日も来たの?」


「ふふ、まさかクリスマスイブにここに来るとは思わなかったよー」


「それにしても、今年はたくさん積もったねー、雪」

「クリスマスイブに雪が降ってるなんて、最近では珍しいことだよね」

「そう思わない?」


「せっかく雪が積もってるんだしさ、雪だるまでも作らない?」

「私、けっこう芸術的なの作れるんだー」


「うん、じゃあやってみよっか!」


「毎年、雪が積もった時は雪だるま作るんだー」


「ううん、別に大した理由はないよ。暇だからかな」

「ふふ、まあいつも暇なんだけどねー」


「そう言えば、君はいつもクリスマスイブとクリスマスの日は、家で過ごしてなかった?」


「そうだよね。今日はどうして?」


「なんか隠してない?」


「ふふ、変なの」


「え?私のクリスマスの過ごし方?」

「私はいつもと変わらないかなー」


「でも、一つすることがあるよ」

「この神社の近くにね、大きい橋があるのは知ってるでしょ」

「そこに行くの」


「この時期は街がイルミネーションだらけで、とっても綺麗だから」

「その橋で街を見るんだ」

「あの橋からだと街が一望できるから、とっても眺めがいいんだよ」

「夜空も綺麗に見えるし」

「後で一緒に行かない?」


「やったー!嬉しい!」


「さてと、雪だるま、できたよ」

「君は?」


「じゃあ、見せ合おうか」

「せーの、ジャーン!」


「あはは、君の雪だるま、すごく面白い!」

「なんか、すごくキャラがわかるような雪だるまだねー、あはは」


「え?私の、上手い?」


「ふふ、なかなか芸術的でしょ」


「じゃ、橋に行こっか!」


「もう今年もあと少しだねー」

「私からしてみるとあっという間だったけど、君はどうだった?」


「ふふ、そうだよね」

「色々と物事に追われてるとさ、その時はすごく時間が長く感じられるんだけど、後から振り返ってみるとあっという間のような気がするよね」

「君はこの一年、どうだった?」


「そっか、成長した気がするかー」


「ううん、明確な根拠なんかなくていいと思うよ」

「言葉に言い表せなくても、自分では明確に分からなくても」

「成長したと思ったなら、根拠は必ず君の心の中にあるはず」


「私も、君は成長したと思うな」

「この一年で、大きく」


「あっ!橋が見えてきたよ!」


「ほら、早く早く!」


「やっと着いたねー。えっと、こっち来てごらん」


「きれーい!街が輝いて見えるよー」

「ね?きれいでしょ?」


「夜空も見てごらん」


「きれいでしょ?」

「ふふ、私が毎年来てる理由、わかった?」


「ん?どうしたの?」


「え?街に?いいよー!」

「ふふ、嬉しい!行こっか!」


「わあー、イルミネーションがきれーい!」

「橋から見るのと直接街中で見るのとでは違うねー」


「見て見て、ケーキ屋さん!やっぱり賑わってるねー」


「見て見て、きれいなネックレスとか指輪とか、売ってるよ!」


「あれ?どうしたの?」


「え?しまってた手袋、落としちゃったの?」

「どこで落としたか、覚えてない?」


「そっか、じゃあ」


ぎゅっ(手を握る音)


「手、寒いでしょ?ガタガタ震えてるもんね」

「こうしてれば、寒くないよ。あったかい?」


「私は暑さとか寒さとか感じないから、いっつも手はあったかいんだよ」

「ふふ、知ってた?」


「じゃあ、街を一回りして帰ろっか」



「ふう、今日は楽しかったー」

「結果、手袋見つからなかったね。大丈夫?」


「そっか。ん?何?」


「これ、私にプレゼント?わあ、すてきなマフラー!」

「ほんとにいいの?」


「ふふ、大切にする」


「実はね、私も君にプレゼントがあるんだ」

「はい、これあげる!」


「セーター編むの初めてだったから何度も失敗しちゃったけど」

「どう?」


「ふふ、喜んでもらえてよかった!嬉しい」


「そう言えば、クリスマスイブとクリスマスの日はいっつも会えなかったけど」

「毎年プレゼントは渡しあってたよね」

「今年は、一つ多くもらっちゃったなあ」


「ふふ、君も?」


「今年のクリスマスイブは君と一緒に過ごせてよかった」

「とてもすてきなイブだったよ」


「また来年も、君と一緒に過ごしたいな」


「ふふ、ありがと」


「えっ!?もうこんな時間?」


「気をつけて帰ってね、バイバイ」
























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る