第3話 花火

「もー、遅いよー」

「もう夏祭り始まっちゃってるよ、早く行こう!」


「楽しみだなー、何食べよっかなー」


「そうだ!今日ね、浴衣、着てみたんだ」

「どう?似合うかな?」


「ふふ、嬉しい」


「あっ、見て見て!屋台がたくさん並んでるよ!」


「やっぱり混んでるねー。さあて、まずどこ行こっかなー」


「りんご飴だ!おいしそー」


「買ってくれるの?ほんとに?ありがとー!」


「ふふ、おいし〜!」


「次どこ行こっか?」

「あっ!射的だ!」


「あの一等の景品、欲しいなー」


「ん?行かないの?」


「そっか、あれはとれないようになってるもんねー」

「そう言えば、何年か前に行った夏祭りでさ、二人でムキになって射的やったけど」

「結果とれなくてお金を全部使い果たしちゃったこと、あったよねー」

「いけないいけない、失敗から学ばなくちゃ」


「輪投げやってる!あれ、やってみようよ!」


「へー、あの景品、欲しいんだー」


「どうかな?とれるかな?」


「あー、惜しかったねー」


「もう一回?ふふ、どうぞどうぞ」


「あー、これも惜しかったかー。なかなか難しいねー」


「え?五回もやるの?お金、使いすぎじゃない?大丈夫?」


「そっかー、ほんとに欲しいんだね」


「全部外しちゃったか。残念だったね」

「私もやってみようかな」


「とれるかな?よし!」

「えいっ!」


「あっ、とれた!まさかの一発!」


「はい、これあげる。欲しかったんでしょ」


「ふふ、いいよいいよ。礼なんて」

「まだ花火まで少し時間があるみたいだね」

「次はどこ行こっか?」


「金魚すくいやりたいの?」

「いいよ、やってごらん」


「あはは、全然ダメだったねー。これは難しいよ」

「私もやってみようかな?」


「よいしょ、あっ、惜しい!」

「これでどうかな?あっ、とれた!」


「二匹同時にとるなんて、私の腕前はなかなかですなぁ」

「はい、一匹あげる」


「いいのいいの、遠慮しないで」


「だいぶ遊んだねー」

「もうすぐ花火が始まるみたいだね」


「いい場所、とりに行こっか」

「ついてきて!ほらほら、早く!」


「ハア、ハア。よかった。いい場所、空いてた」


「もう始まるね」


ヒュー、パァン!(花火の音)

「わあー、きれーい!」

パン、パン、パァン!(花火の音)

「ほんとにきれいだねー!」


「ふふ、見入っちゃってるねー」

「久しぶりなんじゃない?花火、見るのなんて」


「人間って、いつも社会の中で生きてるからさ。それに夢中になっちゃって、自然とかきれいなものを見れない時が多いじゃない」

「だから、きれいなものを見た時の感動が強いんだよ」

「人間は、社会でだけ生きてるわけじゃない」

「君も受験勉強とか、新しい学校生活が忙しくて大変でしょ」

「だから、たまには自然に触れたり、きれいなものを見て息抜きしてほしいな」


夏祭りの帰り道。


「今日はほんとに楽しかった!」

「何より、君と一緒に来れたことが嬉しい」


「また一緒に来ようね!」













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