第2話 友達

「もうすぐ夏休みかー」

「最近暑くなってきてるねー、セミも鳴き出したし」


「そういえば、高校生活はどうなの?順調?」


「そう、あんまり楽しくないんだ」

「友達はいるの?」


「そっか、まだなんだ」


「なんか最近、君の顔が暗く感じる時が多くてさ。辛いことがあるなら、聞くよ」


「うん、話してごらん」



「なるほど。君を仲間はずれにするんだね」


「私は長く生きてるから分かるんだけどさ、今って、《友達》って概念がないよねー」

「昔って、友情があったんだけどさ。今は何でもグループ」

「仲が良い人が一緒にいるんじゃなくて、仲が良い悪い関係なしにグループを作るんだよね」

「だから人がみんな盲目になって、互いに傷つけあう。友情なんて存在しなくなっちゃう」


「まあ、世の中の全ての人がそういうわけじゃなけどさ。そういう場合って多いと思うんだ」

「君のクラスの場合もそうだよね」


「私は君のことが好きだよ」


「君のちょっとおっちょこちょいなところも、優しいところも」

「私は全部好き」


「君が変わる必要なんてないんだよ」

「まわりに認めてもらうためにキャラを作ったり、気を使わなくていい」

「君のままでいいんだよ」


「今はまだ、君のことをちゃんと見てくれる人がいないだけ」

「必ず、君を見てくれる人と出会えるから」


ポタ、ポタ……(涙が落ちる音)


「わっ、大丈夫?えっと、はいこれ、ハンカチ」


「よしよし、辛かったね」


「そうだ!そう言えば、また今年も夏祭りやるんだって」

「去年は君の受験勉強が忙しくて一緒に行けなかったけどさ」

「今年は、一緒に行かない?」


「よかった、嬉しい!」


「えっ、もう塾の時間?」


「じゃあ、また夏祭りの日にね。バイバイ」
















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