青 私は王叶だ 9

エピローグ


 たった1日のうちにあまりにもたくさんのことが起こりすぎたせいなのか、正直整理が追いついていない。

 そして、人間とは本当に分からないものなのだとルグルフェンは実感した。


 それになによりも、彼には主が、等織理王叶ひとしきりおうかが分からなかった。


 彼女との付き合いもそこまで長いわけではない。

 一年ほど前に命を助けられた。そこから呪いのようなアイテムで離れられなくなっただけ。

 でも、彼女は正体もわからぬ自分を、怖がりもしなかった。

 どうすれば助けられるのかもわからないくせに、必死になって走りまわってくれた。

 死にかけで本当にもうダメだった時、涙してくれた。 

 決して自分を、一人にしてくれなかった。

 

 だから、一緒にいる。


 いや一緒にいたいと思った。力になりたいと。護りたいと。

 そんなこんなで今日まで一緒にいたのだ。


 でも知っていたつもりだった。ただただ近くにいただけだった。

 

 あの時、一瞬だけ疑ってしまった。

 自分の目の前で戦いに夢中になっている少女はあの時の少女と本当に同じ人間なのだろうかと。

 それともあの時の姿こそが、元々持っていた気質なのだろうか。


 だがルグルフェンはそんな考えを振り払う。

 「どちらだっていい」と、そう思っている。

 この目で見たものを受け止める。また同じことが起きても、必ず自分が止める。

 それが従者なのだろう。おそらく。


「嫌われようがどう思われようが、側でずっとついててやるよ。ワイの主は王叶、お前だけだ」


 あの時飲み込んだ言葉。出さなかった言葉。でも、確かな決意だ。


 意志を強く持て、ルグルフェン。明日はきっと今日以上に忙しい。




彼女のエピローグ



 私、天願司は今日の出来事を思い返していました。

 ずっと見つめ合い、戦いあってわかりました。

 

 彼女は、等織理王叶はまさしく「王」なのです。


 やはり私の王なのです。さすが王叶センパイ。

 ああ、すんごく素晴らしい。素晴らしいです!

 最初から彼女を手にするなんて不可能だということくらいわかっていましたし。

 今回は道を教えるだけ。それだけで十分すぎると言ってもいいのです。でも。


「ヴェへへ〜、狼狽えてた王叶センパイ、めっちゃかわいかったなぁ~」



_____は!いかんいかん。つい本心とヨダレが。真面目!真面目モードにチェンジ!チェーンジ!

 帰る時も本当はあそこまで言いたくはなかったですけれど、焚き付けるにはどうしても必要不可欠でしたし。あれは心を鬼ころしってやつですね!ほんと頑張りました!

 いやー、でも正直ちょっと危ないところでしたけど、あのおまけのおかげで助かりましたねー。でも、ほーんと_____


 「あのおまけ邪魔だな」


 ああ!本ッ当になんっで!!!あんなのが私の愛しいセンパイの従者なのですかねぇ!?

 あああああああああああああ!!!!思い返せば思い返すほど!気に入らない!気に入らないっ!!気に入らないッ!!!

 邪魔ッ!邪魔ッ!!邪魔ァ!!!

 本来センパイの横に立つのは!立つべきなのは私のはずなんです!さっさとその場所私に変われ!

 あと!狼狽えるって言葉、自分で言っててなんですけど、あのおまけと同じで狼って字が入ってるのがムカツキますねぇ。ああ、気分悪くなってきた。

 でも?私の方があんたなんかよりセンパイのこと知ってるんですよザマァみろ自称従者。

 割とクールにあの場も去れましたし、なんか良い感じにライバルポイントが稼げた感ないですか?ありますよねぇ!

「うーん。良い感じ!わたしってば天才っ!」

 ああそうだ。帰ったから極盛さんに報告しとかないと。

 まあ独断出撃と備品破壊でコッテリ絞られそうですけど、収穫はありますし。

 何よりこれからのことにも関わりますからねー。さあさ早くいかねばいかなきゃ。それに...。


「また会う時までにどうすればあの邪魔者を殺せるか、考えとかなきゃ」


 機会はまた貰えますよね。まあ、貰えなくてももぎ取るんですけど。

 だって私は紫の機神、サークルラプターの『』なのだから。

 

 それに、変な虫は早めに取り除くに限ります。

 

____さあ、ここからが本当のお楽しみなのです。






『否が応でも王であれ』

「青 私は王叶だ」

おわり


 


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否が応でも王であれ じほにうむ @Zi_honium

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