青 私は王叶だ 4
1.はじまりの出逢い 3
階段を降りた先は、いかにも研究所といったような趣で、これまたいかにもそれっぽい機械が設置されていることで広いのか狭いのかわかりにくい印象を抱かせた。
「校舎の下にこんな施設があったなんて...」
「この学校広いですからね~。こんな場所があっても不思議じゃないですよ」
「どう見たってそんな言葉で片付けていい問題じゃないよね、これ....」
それにしてもこの後輩、どうして躊躇なくわけのわからないところに入り込めるのか、本当に謎である。
「よく来てくれたね、等織理王叶さん。それに天願さんも案内ご苦労様」
声と共に現れる人影。この人が極盛逢世か。綺麗な一つ結びの髪型が険しめな顔と相まって凛とした印象を抱かせる。
そして「なるほど」と理解する。どうやらそういうことのようだ。
「____ふぅ。来てしまったのは私だから仕方がない、か。で?お二人さんはどういうご関係?____目的は、何?」
そうだ。この二人は最初からグルだったのだ。思い返せば天願司もどこか演技っぽい不自然さが見え隠れしていた。
しかし相手は大人。この程度の睨みつけに全く動じたりはしない。
「順に答えようか。まず彼女は私の協力者だ。もしかしたらこれからの行動次第で君もそうなるかもしれないね。でも、その前に君に対する要求は二つ。これが目的かな。一つはある機械に触ってもらうこと。そしてもう一つは預けたものを返してもらうことだね」
「いくら同じ校舎にいたとして、私はあなたとちゃんと話すのは今日が初めてですよ?預かったものなんてありませんし、ましてや返すものなんて、私は持ってないと思うのですけど」
王叶の記憶が正しければそのはずだ。この人とは会話した覚えなど全くない。
いや、もしあればとても失礼なことなのだが、でも、ないものはない....、はずである。
最近記憶力に自信がないのもまた事実であるのだが。
「はあ、ヴァークスパークだよ。あれを返してほしいんだ。今どうしても必要でね」
「あぁ!ヴァークスパーク!じゃあこれをくれたのはあなた!?」
確認するかのように王叶はそれをカバンから取り出し、改めてじっくりと眺める。
「別にあげたわけではないのだけど、まあ今はそれでいい。なにしろ話が拗れそうだからね。さてと、とりあえず渡してくれるかい?」
さっさと渡せと言うかのように差し出される掌。だが。
「ダメだ王叶!こいつの言うことを聞くな!」
突如としてルグルフェンが吠えた!その声は王叶にしか聞こえないはず.....、だというのに逢世は。
「黙りなさいこの野良犬が!一体全体誰のおかげで命拾いしたと思っているのか!」
聞こえているのだろうか?だがそうだとしてもおかしくはない。これを元々持っていたのは極盛逢世なのだから。
今にもひと悶着起きそうな雰囲気が出来かけているにも関わらず、等織理王叶の態度は違った。
「一応命の恩人ってことになるはずだからさ。ルグル、私、そういう態度は良くないと思うなぁ」
「いーや、ダメだ。主、言わせて貰うがな、大体なんで今なんだ?持っていることがわかっていたならもっと前に動いているはずなんだよ。ていうか、お前の態度はもっとなんなんだ!?」
「いや、そういうのは大事にしておくべきことだし」
「主、今ワイらの方が不利なことわかってる?」
「それでも、ね?」
声しか出してないから顔は見えないけれど、確実に呆れていることは確かである。
「あのぉ、お二人は誰となんの話をしてるので?」
天願にとってはなにが起こっているのかわからないことだろう。さらにややこしくなってしまう前にどうにかしたいところだが。
「とりあえず極盛先生?まず機神の方を先にしませんか。上手いこと行けばセンパイは仲間ってことになりますよね?そしたらヴァークスパークもセンパイも一石二鳥ですよ?」
意外にも彼女は冷静だったようだ。わからないままにこの状況を進めようとしてくれていた。
どうやら逢世もその提案には賛成ならしい。
「うん、そうだな。それもそうか。では、お見せしよう。さあ、後ろを向きたまえ。そして驚くがいいさ!」
言われた通りにする。そこには青いサメのような騎士のような、何かその二つが組み合わさった者がいた。
「青の機神、シャスティーク。それが名前だ」
「____かっこいい....」
王叶は見惚れてしまった。だからなのだろうか。機械なのに、まるで人を見るかのように思ったことは。
それになんだかまるで目と目があったかのような気もしていたのだった。
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