青 私は王叶だ 3

1.はじまりの出逢い 2



 放課後。結局王叶は教室には入らず扉の前に立っていた。

「嫌だなぁ....。正直めんどくさいんだよなぁ」

「だがあの言い方は引っかかるのだろう?」

「それは...。そうなんだけどさあ....」

 王叶は、やはり、いや、かなり躊躇していた。なにしろ相手が相手である。交流が全くない教師なのだ。なぜ呼ばれたか全くわからない、見当もつかない。

 そもそもその呼び出し人である極盛逢世ごくもりあわせとは、若くしてアームヘッドを開発する研究所を独自で持っていたカリスマ、であったにも関わらず今は何故かこの学校『転王輪学園』で教師をしているという変わり者。

 まあ要するに、何となく同じ世界にいる人間とは思えない、そういった感じの、どこか少し遠い存在なのである。

 それに元々謎が多い人で様々な噂が飛び交うホットな人という見方もあるにはあるが、そもそもそのような話を彼女自身誰から聞いたのかもなぜか身に覚えがなかった。

「あれ?センパイ、はいんないんですか?そこに立ちんぼさんは私の邪魔ですよ?」

 そうこう悩むうちに後ろから響く声。

 あの後輩、天願司である。彼女は王叶に退くよう片手でしっしとジェスチャー。

 からのドアに手をかけて「バァァァァァァンッ!」と音がするかのように思いっきり戸を引いた!

「ほら、ちゃっちゃと開けちゃって入っちゃいましょ。話が進まないではありませんか」

 そしてさっさと入っていく。全く躊躇や遠慮というものが見当たらない。

「極盛センセー!来ちゃいましたー!どーこでーすかー?」

 だがその教室。正確には理科室なのだが、人の気配は全くと言っていいほどなかった。

「うーむ、呼びつけておいて当人が居ないなんて、それはもうひどい仕打ちです。これはもう怒りシントー結成です!」

「ねえ?一応相手は教師だよ?少し言い過ぎじゃないか?あとお願い私を巻き込まないでそれ返しにくい」

 だが相手の立場とこの状況は別問題。呼びつけておいて居ないのは問題であるし、何故この場に居ないのかも気になる。

 それにこのままではなんのためにテストを早抜けしたのか全くわからない。

 だが、ルグルフェンは何かに気がついたようだ。

「主、この部屋の地下から仲間のような反応がするのだが…」

「はあ?ここは学校だよ?しかも2階だし地下なんて意味がわからないでしょ!?」

 だが天願司は何か見つけたようだ。

「あれ?この教室にあんな扉ってありましたっけ?」

 その視線の先に注目する。

 そこにあったもの。それは扉だった。どこからどう見ても扉だった。普段は隠しているのかもしれない。それが今はまるで入ってくださいと言わんばかりに開いていた。

「「ええ、なにそれ...」」

 これはもう入るしかないのだろう。

 というよりも、天願司の方はすでに入りかけていた。

「待て!天願!」

 慌てて王叶はついて行く。

 中は階段で暗い道が続いていた。それはまるで王叶の不安を表すかのように真っ暗だった。


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