第15話 水鉄砲合戦 その①
8月20日。ガーネット達にとってログイン出来る最後の日である。水鉄砲大会のイベントに参加する。1チーム3人で組み、分校と呼ばれる古い時代の小さな学校の建物を戦場として、戦っていく形である。恰好は白いシャツと短パンという体育をするときの格好だ。分かりやすいように紅白帽子も配られている。ゲームの中で指す昼の時間帯に行われる大規模大会に多い時は100人以上の参加者が校庭に集まる。運動会のように綺麗に並ぶ。
「DGOでもやらねえよな。1チーム1列に並んでくださいとか」
基本どのようなゲームでも整列しろなんて言わない。雰囲気を重視するが故なのかもしれない。時代背景等をあまり知らないガーネットは普通に傾げている。
「昔あった運動会の雰囲気を真似たって話らしいぞ」
「へー」
タワーの軽い解説を聞いた2人はキョロキョロと運営スタッフが働く様子を見る。慣れていない参加者を整列させるのに苦労している。
「真田さーん! 完了しました! みなさんは話を聞いてください!」
誰かが叫ぶ。参加者の前にある錆びている青色で塗られた金属の指令台に誰かが登壇する。ジャージ姿の中年の男。偉い達筆で真田上司と大きい名札に書かれている。マイクを通して、
「えー。堅苦しい話はなしで。思い切り暴れてください。以上」
という短い挨拶で大会が始まる。生き残ったものが勝つというシンプルなルールで一発勝負。
「サバイバル戦か。ここで隠れるぞ」
「了解」
ガチ勢は息を潜めて、見えづらい場所に待機する。支給された狙撃銃型のスコープを通して、ロイヤーンが体育で使う道具の倉庫の影から窺う。
「どうだ」
「向こうの畑。ゴーヤのとこにひとチームがいる。これならやれると思うけど……やっていいか? ちょっと微妙なラインでさ」
ロイヤーンの質問にガーネットはどうするかを考える。手でそれを寄越せとジェスチャーを行う。ロイヤーンは狙撃銃を渡す。何かを警戒している。そう感じたガーネットは持ち主に返す。
「いや。まだ撃たなくていい。他のチームとぶつかった時に撃て」
「了解」
ゴーヤがある畑に2チームがぶつかる。水の撃ち合いが始まる。
「お。やってるやってる。うーん。いつものと違って狙いづらい」
ロイヤーンはうつ伏せ状態で狙い撃つ体勢になっているものの、やりづらいみたいだ。ガーネットは何故狙いづらいのかを推測した。
「あー弾丸を使ってるわけじゃないし、レーザーの類でもないからな。俺達で誘導させておくか? それならやりやすいだろ」
「助かる」
ガーネットはタワーと共に倉庫の影から出る。ゴーヤ畑まで走る。
「げ!? DGOの!?」
2チームが彼らの姿を見て、驚きのリアクションを取る。ほんの一瞬だけ動きが止まる。これがロイヤーンにとって、大きい隙である。
「あで!?」
相手チームの額にヒットし、黒髪が濡れる。HPの数値がゼロに達する。
「スナイパーが潜んで……あ」
ロイヤーンは何発も撃つ。正確性の高い射撃。急所となるポイントを一発で当てる。合計6発で2チームを鎮圧。
「お疲れさん。水の補給スポットに向かうぞ」
ガーネットが労う。水鉄砲はその名のとおり、水を入れないと撃つことが出来ない。マップに何ヶ所か補給スポットが点在している。
「俺が後ろに回ろう」
「ああ。頼んだ」
ガーネットとロイヤーンは補給スポットである井戸に移動する。タワーは共に行動を取らず、茂みの中を穏やかな顔で様子を探る。視線を感じていたものの、攻撃してくる気配がない。ならばとタワーは引き金を引く。誰かが茂みから飛び出る。水鉄砲で乱発している。タワーは見切って、体の向きを変えるという最低限の動きで避ける。その後、足で相手を引っ掛け、水で容赦なく相手の頭を濡らしていく。似たような行動で2人を仕留める。
意外にタワーは個人戦で1位を取るぐらい、接近戦に長けている。リーダーは柄ではないという理由でチーム戦では支える立場になっているのだ。
「ふー。これであとは5チームか。思ったよりも減りが早い。急いで彼奴らと合流しておこう」
参加チームは15チーム。タワーが確認した時点で半分どころか、それ以下の数になっている。猛スピードの展開。タワーは急いで仲間がいるところに駆けつけるのであった。
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