第9話 巨大モンスターを倒せ その①

 8月13日土曜日、午後13時。昼ごはんを食べ終えた3人はログインしてきた。拠点地扱いの日本家屋に向かわず、とある場所に行く。土日限定イベントのバトルの会場だ。


「調べてみたけど、普段のバトルのシステムは変わらないってよ。HP3本ゲージ。ブレイクごとに行動パターンが変わる奴」


 歩きながら、得てきた情報を振り返っていく。ロイヤーンが2人に報告している最中だ。


「武器は配られた奴だけ。水鉄砲と鎌と包丁とか」


 ガーネットが突っ込みを入れる。


「何でそういうチョイスになったんだろうな」


「運営に聞くしかねえよ。ほれ。着いたぞ」


 木の柵で囲まれた場所に到着。牧場として使われており、近くでは牛がのんびりと草を食べ、犬があくびをして見張っている。広い空間にモンスターらしきものと10人のプレイヤーがいる。既に戦っている。ガーネットは木の柵に触れる。


「この柵を超えたらバトル開始か。別のシステムを併用してると聞いてたけど、マジだったのか」


 このゲームは現実と大差のない感覚だ。痛覚すら残している。変に現実世界で怪我をしないための策だろう。この辺りはかなり独特である。なにせ大多数のゲームは痛覚など不都合な感覚をカットし、バトルアクションが可能になっているのだ。土日限定のバトルに関しては、通常のVRMMOと同じものを採用している。


「モンスターはスイカの化け物って感じだな。種っつーか爆弾だなありゃ」


 モンスターの見た目はスイカで組み立てた熊で目視で5mはある。1本目の体力ゲージを削り、2本目突入したと同時に、口から種を飛ばしていた。地表に触れたと同時に爆発。ガーネットの言った通り、爆弾に近いだろう。


「切ったら切ったで汁が出るのも厄介だな」


 タワーはバトルフィールドを見て言った。ガーネットも同じ考えだ。


「ああ。でかい分、水分量も多い。ぬかるみが出るのも当たり前か。ある程度経験がないと厳しいだろうな」


「だからこそ、仲間を集結させただろ。そろそろ来るんじゃないか」


「ああ」


 普段ガーネット達が主戦場として遊んでいるDGO(デザートガンナーオンライン)のライバルとも呼べる3人チームを呼んだ。3人で突破は不可能と判断したためだ。


「よー」


 ちょうど彼らが来た。ガーネットは彼らの上から下までひと通り見てしまった。普段と違う姿で来ているからだろう。ライバルとも呼べる彼らは全員日に焼けていた。ワックスで逆立てた金髪の男、白髪の先が黒い男、モヒカンスタイルの男。全員顔立ちがごつい。


「何だよ。そんなに俺達カッコいいか?」


 金髪の男が嬉しそうに言う。ガーネットが答える。


「いやそうじゃねえ。あっちと姿が全然違うから驚いただけだ」


「んなこと言ったらお前らだってそうじゃねえか」


「そりゃあっちだとロボット類(正確に言うとオートマタと呼ばれる自動人形)の容姿だからな全員! それにお前らの場合、他のとこで遭遇しねえじゃねえか!」


 ガーネットがやや荒い言葉遣いで叫ぶ。見学をしていたプレイヤーは確かになと思った台詞だったりする。金髪の男が豪快に笑う。


「それもそうだ!」


 金髪の男はバトルフィールドを片目で見る。戦っている人達の体力が限界まで来ている。数値がゼロになるのは時間の問題だ。


「そろそろ選手交代ってとこだろうな。よろしく頼むぜ」


「それはこっちの台詞だ」


 ガーネット達は真剣な顔で戦いの場を見つめる。少しでも行動パターンをこの目で確かめるためだ。そしてこの数分後、彼らは戦いに挑むのである。

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