第7話 海で遊ぶ

 サーフボードをレンタルし、いざ海へ……なのだが、深い部分は危険だからという理由で、浅い部分にいる。3人とも水着姿になっている。


「とりあえず俺が教える。やり方とかは載ってないみたいだからな」


「よろしくお願いします。タワー先生」


 ガーネットとロイヤーンが同じタイミングでお辞儀をする。タワーはこくりと頷き、2人を見る。


「本来なら用語を覚えたりする必要があるのだが、都合上カットさせてもらうよ。実際にやって習得という形でやっておく。時間がないからな。ボードに紐のようなものがあるだろ」


「おう。なにかと繋げるっぽいよな。これ」


「リッシュコードと言ってな。サーフボードと足を繋ぐためのものだ。ゲームとは言え、安全性を高めるためにやっておく必要がある。まあそれを考えるとウェットスーツもいるけど、それはたくさんやる時で十分だし、カットで」


「とりあえず繋げておけばいいのは分かった。てか。紐こんなに太くなくてもよくね?」


 ガーネットの台詞を聞き、タワーは横に振る。


「いや。細くしたら切れる可能性もある。初心者だろうと安全を確保するのは大事だぞ」


「そういうもんか。自然は怖いからな。この時代だと禁止区域あるから」


 ロイヤーンの言う禁止区域は自然豊かな場所を指す。有名どころだと富士山だろう。自然保護を目的にしていることもあるが、大多数は余計なものを持ち帰らないようにするためだ。なるべく自然環境に触れないことが正しい。それがこの時代の人の大多数の考えである。とは言え、タワーのように何でも禁止はどうだろうかという考えを持つ人間もいる。


「楽しいとこもあるけどな。そんじゃ。少しずつやってくぞ。サーフボードを海水の中に入れて、こうしてこうで、うつぶせで乗る。あとは犬かきと似た感じでやっとけば、進められるぞ」


 タワーは手慣れた感じでサーフボードの上に乗った。うつぶせの状態になっているが、海上での移動はこれが普通なのだと2人は理解する。


「さらっとやるかふつーは」


 ガーネットの言葉に、既に降りたタワーは簡単に答える。


「こういうのは回数を重ねるしかないからな」


 確かになと2人は思い、口を揃えて言う。


「ごもっとも」


 2人は実際にやってみる。タワーの真似を何度かやり、無事に出来た。すいすいと進んでいる。途端に動きが止まり、ボードから降りて、浅いところに両足で立つ。


「そーだ。タワー、お前がやってるとこ見てみたいわ」


 ガーネットの突然の発言にタワーは苦笑してしまう。


「いきなりだな」


「俺らがいない時に行ってるの知ってるからな。しばらくは無理だし、ここで見とこうかと思って」


 ロイヤーンがガーネットに続ける。


「それに。他のも借りてるの、知ってるからな」


「バレてたか」


 困ったように頭をかきながら、タワーは海の波を見る。2人は実際にやってくれるのだと理解し、喜びの感情を顔で表す。


「このタイミングならいけるな。ちょっとやるから見ておけよ」


 タワーはサーフボードに乗り、泳いでいく。男らしさは普段のゲームプレイでも見ていたロイヤーンがひとこと。


「そりゃ奥さん惚れるよな」


「分かる」


 タワーは1mぐらいの波の上に乗っていく。うつぶせから立つ姿勢になり、波と共に砂浜の方に向かっていく。斜めに滑るように下り、再び波のトップに向かい、水飛沫が上がるところまで下り、そこで終了。見ていたロイヤーンとガーネットはタワーに拍手を送る。


「大体こんな感じだな。場所によるが、もっと大きいのもあるよ。それだけ拍手されると照れるな」


 照れ隠しに頬をかきながら、タワーは砂浜の方に向かう。2人は興奮しながら、付いて行く。


「だってすげえじゃん! カッコいい! それで次は何をするつもりだ?」


 ロイヤーンの質問にタワーは答える。


「砂浜で遊ぼうかと思ってな」


 サーフィンの次は砂浜での遊び。色々と借りてきたことを知っている2人だが、何をするつもりか予想出来ていない。いや。していなかった。遊びに夢中でし忘れていたのだ。そういう時もあるだろう。

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