第6話 海へGO!

 夏限定のVRMMOが開かれてから9日目。ガーネット達は2度目のログインを行う。この日はタワーの提案により、海が見えるところへ向かっていた。


「流石に移動は転移システム使うよな」


 時間がない人も遊ぶことを考慮しているのか、どこのゲームでもある瞬間移動のシステムを採用されていた。場所にもよるが、徒歩で数時間以上かかるのはマズイと運営も思っていたのだろう。集落ごとに1カ所、転移が出来るスポットが設置されている。木で作られた古い電車の駅が瞬間移動出来る装置のようなところだ。


「そりゃまあ。無かったらクレーム付けられたら面倒だし。それでどこに行きますか」


 車掌らしき服装の20代男性が朗らかに笑う。中に入ってすぐに発したガーネットの言葉に反応しながら、対応をしてくれている。だからこそNPCではなく、生の人間がログインして、実際にやっているのではと感じ取る。


「白亜の砂浜でお願いします。えーっと」


 リーダーの戸惑いに車掌の男は察する。何度も見かけているのか、慣れたような印象だ。


「ああ。ゲーム運営の会社の者だよ。フルダイブのゲーム初めてという人もいるから、柔軟に動ける人間がこうしてやってるってわけ。不動屋さんの人は営業部の人でね。うちの先輩なんだよ」


 車掌は演じるのを辞めた。丁寧な言葉を使わず、砕けた口調となり、親しみやすい印象が強い。これが素の彼なのだろうとガーネットは感じる。


「そうなんですか。貴重な話、ありがとうございます」


「こちらこそ。忙しいのに遊びに来てくれてありがとう。こちらとしても嬉しい限りだよ。ごほん」


 男は咳払いをする。それが合図だったのか、車掌としてのロールプレイが再び始まった。


「全員合わせて3人、行先は白亜の砂浜でよろしいでしょうか」


「はい」


 昭和という設定のゲーム内ではまずあり得ない薄い水色の板。車掌はその操作をし始めた。チェックを行い、彼は3人に笑って見送る。


「真夏の海、楽しんできてください。いってらっしゃいませ」


 そんなわけで転移した。建物の中にいるのは変わらないため、薄暗いままであるが。


「ようこそ。白亜の砂浜へ」


 それでも転移先にいた車掌の言葉で着いたのだと理解した。明るくてチャラい印象が強い金髪黒目の男だ。


「マジか。デザートガンナーオンラインの。サイン欲しいなぁ」


 本音ダダ洩れの人だった。仕事だと認識しているのか、拳をぎゅっと握って堪えている。震えた指で光が出ている方を示す。


「あそこから出たらレンタルとか色々とありますので」


「どうも」


 ガーネット達は軽くお礼を言って、外に出てみる。反射された太陽の光に思わず目を瞑る。


「まっぶし!」


「おーすげーすげー! エメラルドグリーンって奴だよな!?」


 少し慣れてきた彼らは見る。真っ白の砂浜。青というより、エメラルドグリーン色の海。映像でしか見たことのないものだった。ロイヤーンが興奮するのも無理はない。ガーネットは隣にいる彼に話しかける。


「タワーは見たことあるのか」


「いやーここまで綺麗なのはないよ。海に行くって言っても、時間がないからなぁ」


 タワーが困ったように答えた。プロゲーマーはほとんどがゲームに費やしている。大会やイベントの出席は絶対。スケジュールを組み立てたら、海外に遊びに行く暇なんてないのだ。


「確かにそうだよな。お前ん家、時間そこまでかからないとこに住んでるから、サーフィン出来るんだよな」


 この間にロイヤーンは水着姿になり、ばしゃばしゃと海面を蹴って、水飛沫を起こして遊び始めている。タワーは苦笑しながら、ロイヤーンに大声をかける。


「そうだな。おーい。ロイヤーン、レンタルのとこに行くぞ!」


 すぐに反応する。


「はーい!」


 3人は遊びの道具がレンタル出来る店に行く。ロイヤーンとガーネットはVR空間とはいえ、初めてやることだ。ワクワクしかない。子供のように笑い、遊びに期待をする。そういう表情をしていた。

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