第8話何ですって!

ある日、総務課に書類を持って行くと、ババアの連中がクスクス笑っている。

何だ!失礼な!

対応は田中美樹がしてくれた。

すると、田中がちいさな声で、

「中原さん、水原の彼氏になったんですね。私たち応援しますから」

「は?」

「しらばっくれても、無駄ですよ!」

「ま、まだ、彼氏じゃないよ」

「はいはい」

水原はこの前の酒の席での、秘密の約束を破ったのだ。


頭をクラクラさせながらも、仕事をした。

午後3時。

アイスコーヒーを休憩室で飲み、タバコを吸っていると、LINE通知音が鳴る。

水原からだった。

【今夜はがぶりチキンいきませんか?】

だと。

中原、直接言いたい事があったので、

【りょ】

と、返事した。


がぶりチキンはチェーン店であり、安くで唐揚げなど食べながらハイボールを飲む店だ。

2人は店に吸い込まれた。

「水原さん、まだ、お付き合いしてる訳じゃないのに、会社のババア連中に話しただろ?」

水原はハイボールをゴクリと飲み、

「えぇ~、何のことかのぅ」

「誤魔化すな、田中ちゃんからも言われたんだ。お付き合いしているって」

「中原さん、じゃ、私の事が嫌いになった?」

「い、いや。そういう問題じゃなくて。まだ、早すぎるだけ。正式に交際してる訳じゃないんだから。……うるせぇなこの店。千代

に行こう」


2人は唐揚げとハイボール1杯だけ飲んで、居酒屋千代に向かって歩いた。まだ、残暑がキツく、熱帯夜である。

歩きながら水原はこう言った。

「私、今まで男性にちょっと好意を持つと直ぐに交際してくれって、言われてきたんです。男は皆、私の体目当てだったんです。一回エッチすると捨てられるんです。でも、中原さんは違う。私を大事にしてくれて、直ぐに交際をしてくれない所が好きなんです」

中原は歩きタバコしながら、

「僕は水原さんを大切にしたいんだ。だから、お互いの事を認めあってから付き合おうと考えてるんだ」

水原は、涙ぐんでいた。千代に近くなると聞き覚えのある声が中原の名前を呼ぶ。

「中原拓也君、発見!2人と止まりなさい」

振り向くと経理の弓削なつきのババアとその横には丸山いずみが立っていた。

2人もアルコールが入っているのか、ほほが紅くなっていた。

よりよって、いずみに水原との秘密の飲み会がバレるとは……。

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